ここなっつぴぃす

紡いだ夢の先へ

舞台「ETERNAL GHOST FISH」観劇記録

 

舞台「ETERNAL GHOST FISH」

観劇日 10月18日(水)13:00

紀伊国屋ホール

(予定上演時間 2時間45分)

開場 12:30

1幕 13:00~14:17

休憩 15分

2幕・カテコ 14:32~16:18

 

 

~本編~

登場人物

 

 

事前の配信でキャストの方がこのように説明してくれたけれど、実はそれぞれ3役を受け持っているらしい。とりあえず主が覚えている他の役どころを記載。

 

・紋章由来(赤い衣の背に彫られている紋章から名前を選ぶ)

炎の「火」:萩谷慧悟

太陽の「陽(ひ)」:田中良子

「月」:柴田淳

「山」:傳谷英里香

「ふつ」:萩野崇

「星」

 

・他

陛下の秘書のふりをした陛下:鈴木勝吾

陛下のふり:玉城裕規

陛下の妻:柴田淳

陛下の暗殺者:萩谷慧悟

映画監督:瀬戸利樹

うぶな役者:萩野崇

・歴史上の人物

板垣退助?:萩野崇

2幕の最後の方で、玉さんが萩野さんに「最後に板垣さん、ひとつだけ言わせてください。ふんばれ」と言う場面がある。

 

 

 

物語

※一人につき役が重複していてややこしいため、登場人物名は役者さんの名前で統一させていただきます

1幕

冒頭は物語の大事なシーンのみ演じられる。その後暗転して本編スタート。招待状で集められた12人が世界にたった一匹の“オンリーシルバーフィッシュ”の名前を探しにやってくる。そこで彼らは陛下に基づいたシネマを撮ることになる。

 

シネマを撮っている最中にそうとは知らず入ってきた萩野さん「待てと言われて待ったことは一度もない!」。その後シネマだと説明を受けて各所に「すみませんでした!」と元気に頭を下げていた。

 

瀬戸くんが食べていて落としたせんべいを回収する萩谷くん。大地くんの肩についたせんべいのかすを振り払ったり雑用をこよなくこなしていた。

 

良子「必要なのよ、物語には」

 

瀬戸「どいつもこいつも台本台本言うけどな、台本なんていらないんだよ!」

どこかの誰かが言ってそうなセリフだ…と思っていると当のご本人様登場。

西田「台本なんて!台本なんていらないんだよ!昼間ですし!」

さらに、瀬戸くんか西田さんが「台本も筋書きもいらないんだよ!」と言ったら、「プロットはいるでしょ!」とツッコまれていた。

 

素人だけど映画へのやる気出る気満々な萩野さんが萩谷くん演じる勇敢な兵士を止めようとする。しかしやってみるも都度「黙れ!」と台詞に割り込んでしまい作品の世界観を台無しにしてしまっているので、西田さんが全身全力で(at下手)萩野さんのことを一生懸命止めようとするも(萩野さんも必死すぎて途中西田さんをおんぶしていた)、一回はけたと思ったら上手から登場して喋ってしまった萩野さん。西田さんが「あちゃー」としかめっ面をする。

 

こんな調子なので瀬戸くんがカットをかけた直後、一向は斜めに並んで西田さんのダメ出しを受ける。

西田「ピアノ!」

ピアノ「はい」

西田「お前はピアノだけ弾いていなさい!なんで出てきたんだ」

ピアノ「いざなわれました」 

西田「お前がいざなわれることは二度とないよ!」

この時、西田さんの方を向いて口をむぎゅっとさせて上目遣いで笑いを堪えている萩谷くん。

西田「物語が進まないんだよ!!!」

 

「語られない言葉や場面は、魚が埋めてくれるよ」

 

水槽の中にある手紙をとろうと泳いでいる人を西田さんだけが見ててあわあわするシーン。
「人によって見え方が違うから、探すんだよ」

 

エリザベス(柴田)が目を覚ますと、銃殺されて亡くなったはずのヘンリー(勝吾)が生きていた。

柴田「…なんで生きてるの!」

勝吾「きっと振り返ったんだ」

 

2幕

 

「動き出したら止まりませんが、あなたはこれを止めようとしたことがありますか」

 

魚の名前を呼んであげようと萩谷くんが提案した時

「でもなんて呼べばいいんだ」

「あなたにとって世界で一番大切なものでいいんじゃないですか」

萩谷「朝日。男の子か女の子かわからないから」

柴田「私も…朝日。男の子か女の子か…」

「もういいよ!」

 

萩谷「たとえ海に果てがあったとしても、漂流してたゆたえば新しい場所に辿り着けるんです」

 

振り返ったせいで混乱した柴田に

萩谷「一緒に名前を呼びましょう」

柴田「覚えてない!」

萩谷「わかるはずです。せーの…朝日」

 

もう一度シネマを撮ろうとなった際

萩谷「私は何をすれば」

西田「お前はトトロやっとけ」

萩谷「ぶぉおおおお」←トトロが鳴く真似。口を大きく開けて目見開いてと地味に似ていたので爆笑

カメラを回している時は、口を大きく開いて気がぐんぐん大きくなるシーンを意識した演技。

 

執事「どうして振り返らなかったんですか」

ピアノ「可哀想だと思ったから。この魚を利用したくなかったんです」
人の優しさが表れている。各々の価値観。

 

 

カーテンコール(ダブル)

2回目の際に萩野さんと大地くんから挨拶あり。

 

萩野「役者たちの後悔とか振り返りたいことが舞台上にあって。明日からも演じます」

 

山口「萩さん急に真面目ぶるからびっくりした」「演劇もその時だけで振り返れないですよね。ただ、振り返る方法がひとつだけあるんです…リピーターチケットというものが!もはや皆さんのオンリーシルバーフィッシュなのではないでしょうか!これをずっと言いたくて!笑ってくださいよ!」

身内ノリでみんなニコニコな座組

山口「長谷川さんみたい」

瀬戸「ははは!」←一人だけ爆笑する利樹くん

 

 

演出

・前3作と比べて水槽今が横長。その中には赤い橋がかかっていたり上手下手に龍がいたり、魚自体の存在はないものの想像力を膨らませることができる

・暗転の時間が長い…その時間で観客は話をまとめたり推測できたりするので、あえて長くしたのかなと考えたり。

・西田作品は音響が大きめ。時々役者さんの声が消されてしまう時がある

 

 

 

その他

・12:55 BGMを流したまま1ベルが鳴る

・平日昼間でアフトもない回だったので、観客はM列以降ほぼ座っていなかった。どの列も1.2番の座席は使われておらず

・意外と男性の観客が多い。夫婦で来ている方もいらっしゃった。

 

 

感想

DisGOONie以外で西田さんのシリーズ作品を観劇するのが初めてだったのだが、今回の作品はかなり難しかった。いつが振り返っているタイミングでいつが現実なのか時空を見分けられたかは未だわからない。そもそも、振り返るの概念とは何なのか。振り返るだけなら誰でもできるが、永魚でいう「振り返る」とは頭の中で思い出すという意味ではなく、タイムスリップして過去を変えられるという意味なのかもしれない。

 

 

 

普段からクイズや謎解きなどに苦手意識がある主は上手く伏線を回収することができなかったのでもう一度見る必要がありそう…とはいえ、完全にミステリーで暗めの話なのかなと思っていたら、アドリブや身内感溢れるノリも含まれていて面白かった。1幕の中盤なんて遊びまくりだったのでお腹がちぎれそうになるくらい笑わせてもらったり(1幕も終盤になると机に置いてあった手紙がなくなったり陛下が撃たれたりして物語は進み始めが)。

 

誰が誰に言ったか忘れたという凡ミスを犯してしまったのだが、「諦めるな」という言葉が何度か出てきた。過去を振り返って変えてきたからこそ説得力がある。しかし、振り返っても振り返っても結局は誰かが死ぬ未来が待ち受けていたので、結局はハッピーエンドにならない。そこにそんな簡単にうまく物事が進むわけがないという現実性を感じた。だけど、最終的にはそれぞれの時空で撃たれたはずの勝吾くんも萩ちゃんも生き返っていてもうごちゃごちゃ。いやー難しい。考える余地が沢山ある。

 

 

事前の配信で言っていた「たゆたう」という意味。この作品を通して初めて出会った単語なので、どんな物語が繰り広げられるのかと想像することが難しかった(こういう儚い表現をするところが西田さんの戯曲が好きな理由のひとつでもある)。劇の中では何回か「たゆたう」という言葉は出てきたけど、勝吾くんが最初に口にした。しかし、それだけでは理解できない。その後2幕の「たとえ海に果てがあったとしても、漂流してたゆたえば新しい場所に辿り着けるんです」という萩ちゃんの台詞が糸口になっているのではないか。

 

「たゆたう」

 

それは“漂流するように心が揺さぶられて迷うこと、それと同時にその後には明るい未来が待っていること”だと思う。ちょうど一年前のこの頃も『まほろばかなた』を観劇した後に「まほろば」の意味とは何なのかと考えたことがあったが、その際も明るい未来が含まれていると考察した。西田さんの言葉にはどこか前向きさを感じる。

 

 

もうひとつ、心に深く刻まれた言葉がある。

 

「可哀想だと思ったから。この魚を利用したくなかったんです」

 

淡々と当たり前のことのようにノリさんはこう言った。その人の価値観によって受け取り方は異なると思うが、もし主が過去を振り返れると言われたらきっと魚を利用してしまう立場にあるだろうしその方法以外思いつかないと思うので、ノリさんのこの視点は新鮮。もちろん役の優しさもあるのだろうが、ノリさん本人の人の優しさがそこには滲んでいた。演じる人によって伝え方が変わるであろうこの台詞をノリさんがもってくれて良かった。すごく温かい気持ちになった。この物語は彼が振り返った物語なのかもしれない。

 

 

 

余談。

1幕のアドリブが渋滞していたシーンで瀬戸くんが「カメラも消毒もいらねぇよ!」とシネマを撮っていたカメラを下手に投げだしていたが、ここにはコロナ禍への皮肉があるようにも感じた。台詞か否かはわからないけども、どちらにせよマスクの装着有無が個人の判断に委ねられるようになって、少しずつ色んなものが解禁されてきたからこそのムーブメントかなと(そんな壮大なものでもないが)考えたりもした。

 

 

 

出演者の印象

鈴木勝吾くん

初見:PSY・S

萩ちゃんが「しょうにぃ」と慕う勝吾くん、実は今回が初めまして。円盤でDisGOONieとかモリミュとかは見たことあったし、評判が良いことも勿の論存じ上げていた。貫禄がすごい。

 

萩谷慧悟くん

西田組に仲間入りできて良かったねぇな萩ちゃん。日替わりのシーンとか耐えてるはいるけど滲み出ているニコニコ感が可愛かった。「朝日…男の子か女の子かわからないから」の萩ちゃん、めちゃくちゃ優しい顔してたのと、月が子供を宿して萩ちゃんとの子だーってなった時の既視感はきっとリトファン。萩谷慧悟パパ率高め。この座組では萩さんの次に大きかったので(物理的に)恋だった。

 

山口大地さん

初見:Little Fandango

リトファンを機にSNSをフォローし始めたら映像の方でもかなり活躍されていて、最近でいうと東リべの映画はなかなか好演だった。

 

瀬戸利樹くん

初見:MOTHER LAND

こちらもリトファンぶり。いうて1年半前だけど、見ない間に演技がめちゃくちゃ上手くなっていてびっくりした。しかも声にドスがきいていて聞き取りやすい。マザラン、リトファンを経て演技の幅が広がったなあと感じたし、何より本人がインタビューでこう言ってくれて嬉しかった。

 

瀬戸「僕にお芝居を楽しいと思わせてくださったのが西田さん。自分の感覚や思考を使い、自由に演じていいんだと気づかされました。僕は思ったことをやらないまま、稽古を終えてしまうことも多いので、一歩踏み出す勇気をもって稽古に臨めたら」

今を生きる俳優たちと作り上げる、この座組でしか生み出せない舞台 西田大輔にとって思い入れの深い“魚”シリーズ、7年ぶりの最新作! │ シアターウェブマガジン[カンフェティ] (confetti-web.com)

 

利樹くんもそろそろ西田組に仲間入りかな(同期は萩ちゃん)。西田さんの世界観にとてもマッチする俳優さんだと思っているのでこれからも頻繁に呼ばれてほしい。

 

玉城裕規さん

初見:サクセス荘1

サクセス荘で見かけて個性の強い俳優さんだなーと思って早2年、ついに今回初めて生の演技を拝見した。声に特徴ある方だからどんな感じで舞台上で活かされているんだろうなぁって思ってたらこちらもめちゃくちゃ聞き取りやすかった(今回は普段より低く喋っていたのかな)。役どころ的にシュールで面白くて、沢山笑わせていただいた。

 

田中良子さん

初見:PSY・S

村田中の奥さんの方。今回の良子さんは宝塚の男役みたいな逞しさを感じた。

 

萩野崇さん

初見:デカダン

いつもと比べると今回はやたらポップな役どころだった萩さん。そんな萩さんを見ていると、ふと長妻怜央くんの将来像が重なった(スタイルとか似てる部分あるしね)。ながつ、数十年後には今回の萩さんみたいないくつになっても明るくて健気でポップではじけて笑いを取るようなイケおじになってるんだろうな。

 

西田大輔さん

これまで西田さんが脚本や演出を手掛けた作品は幾度となく観てきたけど、演技をしている姿は初めて見た。最初浮いちゃうのかなーと考えたりもしたけど、いざ見てみるとしっかり他の俳優さんと融合しつつ西田さんの良さが溢れていてさすがと感じた(そりゃ西田さんが描いた世界線だから馴染むのは当然といえば当然なのか)。