ここなっつぴぃす

紡いだ夢の先へ

舞台「玉蜻 ~新説・八犬伝」観劇記録


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DisGOONie Presents Vol.12 舞台「玉蜻 ~新説・八犬伝

@EXシアター

観劇日 2023年2月19日(日)13:00 東京楽

(予定上演時間 3時間45分)

開場 12:30

影ナレ 12:45〜12:50

1幕 13:00〜14:45

休憩 14:45〜15:04

2幕・カテコ(トリプル)15:04〜16:58

 

 

~本編~

登場人物・用語

(敬称略)

犬塚信乃:崎山つばさ

荘介や親兵衛の頭を撫でたり、激励をかけたりと原作よりも面倒見の良い兄貴らしさを感じた。夕をお姫様抱っこして中央から出てきたと思ったら、彼女を階段に下ろす際大きな手で彼女の頭を支えていて、「夕めちゃくちゃ大切にされてるなぁ」って感じた。いかにも『孝』の玉を持つ信乃らしい。

 

 

犬川荘介:砂川脩弥

八犬士ってみんな苦労者だけど、その中でも彼は信じる者と親の狭間で苦難を強いられていて一番辛かったのではないかと思う(道節や毛野は自分もしくは親の仇がどうこうと自分のやりたいことを迷うことなくできたけど)。恋も実らないし村雨丸も結局は蟇六たちに渡してしまう運命にあるし、なんで彼はこんな立場なのだろう…。「信乃様信乃様」と自分自身も賢いのに他者を敬える謙虚さを持っていたり、浜路を迎えに行く口実として彼女の願いを聞いてあげたり本当に荘介っていい奴なんです。なのにオープニングで浜路に通り過ぎさられてしまう荘介の傷ついた顔といったらもう苦しくて仕方ない。どうか彼が報われる日が来ますように。

 

 

犬飼現八谷口賢志

頭が切れる。夢の内容と現実が変わっている原因は信乃だといち早く気付いたり、玉が命ひとつ分あると考え、信乃のために一度死んだり。昔は無心に人を殺していた彼は信乃たちと出会って、「信」の玉に少しずつ恩義を返していくようになる。それが特にわかるのは2幕で毛野が馬加を殺そうとしたシーン。

現八「私は向こうをたてるためだけに人を斬ってきた、そこに志も義もない。だから君の父を斬った者としていつでも君にこの首を斬られよう。だけど、どうか少しだけ時間をくれないか。『信』この玉に私はまだ何も返せていない。その手にある村雨丸を借りたい。もちろん、信乃殿に返す。頭を下げた方がいいかい?」

現八と言ったらやはり弓。今回も八犬士の中で唯一弓矢を振り回してた。過去に大角を守れなかった(妻・雛衣の自害後に大角も自害)という咎を抱えている。短髪賢志さんの現八めちゃくちゃかっこよかった。

 

 

犬田小文吾:村田洋二郎

「俺とあいつ(現八)は同じ咎を背負ってる」と本人が言ってるように、彼は親兵衛に対して咎(実父に殺される)を抱えている。2幕一番最後のシーンで犬士たちが自分の玉や牡丹のあざを見せ合うシーンで、お尻にあざがあるからとズボンを脱ごうとして止められる小文吾(カテコでもやろうとしてたよ。なんならお尻のブロマイド売ろうとしてたよ)。こういうちゃらけた姿が、主のイメージする小文吾と重なるなーと思った。

 

 

犬山道節:川上将大

ケンカっ早くて村雨丸を奪っちゃったりするけど、彼の行動には全て理由があって、最後は信乃たちに全面協力するようになる。幼少期から家族思いで、母と妹が殺されないために自分が故郷に戻ることを拒む彼の優しさ。自分が兄だと正体をバラさないまま浜路と話した後、「良き時間であった」というこの台詞に道節の不器用ながらも優しい人柄が詰まっていて大好き。

ちなみに、原作通り左肩にはしっかりあざがあります(ラストのシーンで着物を剥いで見せてた)。

 

 

犬坂毛野北村諒

自分の一族を殺した馬加大記への復讐しか頭になかった彼は、小文吾たちとの出会いによって生きる意味を見出す。最後は自分の命を犠牲にまでして仲間の因縁を晴らさせる。

小文吾「これだけ答えろ。仇討ちを為した後どうする?」

毛野「どうでもいい。私は生まれた意味を探すんだ」

小文吾「それが生きるとしたらどうする」

毛野「知らん!今が死んでいる時だ、生きたことなど一度もない!」

 

現八「なぜ私を殺さない?生きる意味を知ったってことだろーが」

小文吾「毛野、てめぇが誰かを斬りゃあ恨む側から恨まれる側に変わる。んなことわかってたことだろうがい。大八、あいつには因縁がある。きっとお前に近付いたこととは、そして俺もだ。思い出したんだ」

毛野「どういうことだ?」

小文吾「必ず解決するぞ、俺とお前で。あいつが最後の玉だ。思ってることを言え、毛野!てめぇには貸しがあるんだよ」

毛野「…わからねぇよ!だけど知りたい…このあざと私の生きる意味だ」

 

毛野「因縁があるのはお前だ。村雨丸まで引っ張る」

小文吾「お前‼︎」

毛野「これであの時の借りはチャラだ、いけ‼︎」

親兵衛「毛野。死んじゃうよ?」

毛野「もともと興味なかったんだけどなぁ。今‼︎一番生きようと思ってるよ」

小文吾「毛野ー‼︎」

毛野「あー…今…生きてるわ…」

 

 

犬村大角・月唄:椎名鯛造

「月唄」として玉梓の下部だった彼は1幕のラストから玉を持つようになった。玉梓が彼に言った「いずれお前もわかる」という言葉はこのシーンに向けられたものなんだと思う。常世では玉梓の尻にしかれ、前世(前の命)では妻・雛衣のことを誤解して結果的に死を招いたことを悔やんで自害したりと彼もなかなか苦労人。

でも正直、月唄のキャラクター性はあまり理解できてない。普通の人には見えないということは常世に生きているからだとして、何がどう繋がって大角に変わったんだろうか…。大角として1回死んでから玉梓の下部となり、そして記憶を取り戻して再び大角に、って解釈でいいのかな。

2幕終盤、大角を機にどんどん倒れていく犬士を見るのは辛かった。原作では犬士は最強だから負けるはずないのに…

 

 

犬江新兵衛糸川耀士郎

予知能力者というか物語の行方を知ってる(考察の方で後述)。みんなに頭なでなでされる末っ子くん。途中まで玉梓側の人間だったので、いつ八犬士側につくのだろうとずっとヒヤヒヤしてた(8人揃わないと困る)。毛野の隣にいるときの彼の名は大八。2幕中盤で生まれてからずっと左手が開かない話をし始めた時、久しぶりに「やらかしたーー!!!」って心の中で発狂した。親兵衛の左手見るの忘れてたぁぁぁぁぁぁ!!!(号泣)

ref.この1か月後に『太平洋序曲』を観劇したところ、親兵衛はたまかぎにおける狂言回し的な役割だったのでは?と思うようになった。

 

藍染カレン

八房の子ども。村雨丸や玉の気配に鋭い。偽の村雨丸にすぐ気付くし、出会った犬士が玉を持っていることもいち早く察する。当初は復讐心から信乃を殺す予定だったが、信乃と時間を共にすることで彼への思い入れが強くなり、結局彼を殺すことはできなかった。人を愛することーー彼女が旅で得た成果なのかもしれない。

ちなみに、作品名でもある「たまかぎる」は「夕」の枕詞らしい。西田さんは作品名からこのキャラクターの名前を決めたのかな。

 

 

浜路柳美稀

道節にピッタリくっついているのが可愛い。本来はそこまで(精神面的に)強いタイプではないけど、信乃や荘介、道節のために強くなろうと決心できる意志の固い女性。

 

 

金碗大輔萩野崇

「はじまりに伏そして起 金碗大輔孝徳」

因縁のもとを辿れば彼に行き着く。玉梓(里見に殺される)に育てられた八房を殺すはずが(伏姫を解放するため)誤って伏姫をも撃ってしまい、“ゝ大”として出家した大輔。八房の子である夕が里見家に恨みを抱いていたことは想像に容易い。大輔は罪を償うため八犬士を探す旅に出る。伏姫を愛していたからこそ、彼女の子である犬士を見守る目が優しいし、犬士がやられている時は誰よりも苦しそうな表情をする。途中、犬士がまだ揃っていない時に信乃を殺そうとした夕に対し「やめろ」と大声で叫んだ時の彼は、夕への約束はもちろん、犬士を守ろうとする気持ちが強かったのではないかと感じる。自分が犯した罪を一生背負って生きている大輔。だからずっと、伏姫は愛があってお前たちを産んだんだと犬士に説く。

 

 

玉梓・伏姫田中良子

「夕または玉梓 重ねて八房」

夕と玉梓を重ねるとはどういうことだろう…と考えてみた時に気付いた。八房は玉梓にとっては子ども、夕にとっては母親なのだ。玉梓と夕を直接繋げる糸口が八房…ということなのだろうか。どこから玉梓が伏姫になったのかがわからないの悔しい。

「児孫まで、畜生道に導きて、この世からなる煩悩の、犬となさん」

玉梓の呪い。彼女の怨念が八犬伝を生む。

 

 

村雨丸:大輔・玉梓の心、玉梓側に渡った時八房が目を覚ます

暁闇:夜明けの太陽が見せる闇、毛野が舞うと始まる、常世に生きる魔物が現れる時間、夕が生まれた時間

幻月:月の左右にある光の点、凍った雲が見せるまやかしの光

 

 

影ナレ

①12:45~

洋二郎

「俺の名は犬田小文吾、旅の途中だ。小文吾、今迷ってる。EXシアターで目の前にある旅一座の公演を観るか、舞台キングダムを観るかだ。ここでみんなにアンケートを取ろうと思う。(拍手の量は同じくらいで)君たち、狂ってる。今ここEXシアターだよ?これからやるんだよ!?俺は目の前にある旅一座の公演を観た方が良いと思うけどナ。俺は観よそうしよ!」

「EXシアターは最新の地下構造により、地震に対して安全なものとなってます…おおこれすげーな。100人乗ってもだーいじょうぶっ!(シーン)続けます!(笑)」

「外気を取り入れる空調システムにより客席内の空気は1時間に5回から6回ほど入れ替わりますだって。一説によるとスイスのアルプスの空気より綺麗になるそうですよ?(シーン)嘘です!」

「小文吾でした〜拍手〜!舞台キングダムもよろしく!」

 

②開演直前

夕「…んんっ…」

玉梓「目が覚めた?」

夕「ここは…?」

玉梓「EXシアターよ。冗談よ、ここは暁闇。私は玉梓、あなたはこれから現世(うつしよ)へ行ってもらうわ。旅の途中で色んなことが起こると思うわ…だって千秋楽だもの。どいつもこいつも余計なことばっかやるから。ぜーんぶシカトしてね」

夕「わかった」

玉梓「良い返事。はぁぁぁ……今日は長いわよ…(大拍手)。それじゃあDisGOONie出航だーーー!!!」

夕「ワオーン」

 

あらすじ

1幕

玉梓「その光に色はございません。語れるものがなくなれば物語と言えぬように、人は人を色、物も色、心も色で語るのです、が。その光だけは色などないのです」

 

大輔「その刀は人でございます」

玉梓「その刀に血が宿ることはございません。人が思いを手で拭うように、その刀身から水気が血を洗い流すのです。しとしと、しとしと、と。あなたが見ているものは月ではありません、それは」

月唄「幻月」

玉梓「月の左右にある光の点、凍った雲が見せるまやかしの光、あえてものを語るならそんな物語をみせましょう、月の唄が語りべなるままに」

 

玉梓「何かわかるかい、親兵衛」

親兵衛「うーん、全然わかんないや」

玉梓「『菩』さ」

親兵衛「『菩』?ボーボーの『ぼ』?毛の?」

玉梓「見なさい」

親兵衛「へぇー…全然読めないや」

玉梓「でも、あなたにもあるのよ」

親兵衛「いらないよ」

玉梓「どうして?」

親兵衛「あなたが悲しむから」

玉梓「本当の悲しみはね、雨をも打ち消すのよ」

親兵衛「雨も?」

玉梓「そう。炎で」

 

玉梓「語りなさい、親兵衛」

親兵衛「俺が⁉」

玉梓「あなたは火の子よ」

 

親兵衛の左手に『仁』の字を書いてその手を両手で包む玉梓。

親兵衛「それ…」

玉梓「あなたにもあげる。これが始まり。八つの玉が揃いし時」

親兵衛「妖刀・村雨丸が現れる」

玉梓「私が一番欲しいもの、心を失った八つの玉」

 

玉梓「その光に色はございません。私は“透明”と語りましょう」

道節「俺が生きれば死ぬ者がいるんだ」

現八「死ぬ者がいるということはここからでもわかる」 

毛野「わかることは、終わりは本当の終わりだってことだ」

浜路「終わりだとしても思い続けたい」

荘介「思い続けてもそれは届かないだろう」

親兵衛「届かないものをこの手の平に」

小文吾「この手の平には血が宿る」

信乃「その刀に血が宿ることはないと言う」

信乃・玉梓「人が思いを手で拭うように、その刀身から水気が血を洗い流すのです」

玉梓「しとしと」

信乃「しとしとと」

信乃・玉梓「その刀は人でございます」

 

夕「返して…ねぇ返してよ……」

大輔「なんという、ことだ…。全て奪ったのは、私だ」

夕「許さない…」

大輔「お前は…あの犬の、八房の子なんだな。玉は戻ってくる。私がお前に力を授けよう。あの刀を手にし、思いを遂げられるように。それが私の償いだ。愛しい者を失った悲しさは同じだから」

 

玉梓「その光に色はございません。ただただ月よりも美しく刀に向けて光を起こすのです」

 

大輔「お前は、どうしたい」

夕「……全て奪ってやる‼」

大輔「その刀は」

玉梓「その心でございます」

 

~オープニング『透明色』~

 

室町、安房。大塚の犬塚信乃は代々伝わって来た村雨丸を時の将軍・扇谷定正に返すべく旅に出る。信乃の使用人・犬川荘介も一緒だ。彼が蟇六夫婦の命に背けなかったことが後に波乱を起こすきっかけになるのだが…

そしてもう一人、いやもう一匹信乃と旅を共にした者がいた。名は夕(はろか)。彼らは金碗大輔-金の錫杖を持った坊主-が出てきたり村雨丸を届ける旨の同じ夢を見ていた。しかし、それは夢ではなく、亡き伏姫の心を宿した子を見つけるための思いだと大輔は言う。玉を持つ仲間を探せ、と。


「その刀は悲しみを持っている。非望という名の悲しみだ」


一方、他の犬士たちは各々の場所で同志に「出会って」いく。

「悌」の玉を持つ犬田小文吾は犬坂毛野の舞を見て彼女(女装姿)に惚れる。大八(親兵衛)が止めようとするも結婚するなど言い出す2人。


網干左母次郎を待つ浜路に自分の正体を隠して寄り添う犬山道節。彼は浜路に「忠」の玉を託した。


玉梓「児孫まで、畜生道に導きて、この世からなる煩悩の、犬となさん。さあ、常世から進みなさい。暁闇が開けるまで!」

暁闇が始まり、魔物を相手に苦戦する信乃・荘介・夕。信乃は荘介に村雨丸を託す。彼は蟇六夫婦の命通り、その村雨丸を彼らに渡してしまった。偽刀を信乃に返すも夕はそれが偽物であることを見抜いてしまう。


そしてここから無数の戦が始まる。

一族を滅ぼされた復讐として馬加大記を闇討ちする毛野。
村雨丸を手に入れるがために蟇六夫婦と浜路を斬る網干

夕の言うことに従わず偽の村雨丸を献上したため、扇谷定正に命を狙われる信乃。

 

しかし、その戦が同時に「出会い」をももたらし、相手が自分と同じ玉を持っていることを知る。

信乃を狙うために牢屋から釈放された現八。

浜路を殺した網干を斬ろうとする道節。

 

「その刀は人でございます。透明に色はつきません。どんな色も何かあっても」

 

夕「あいつの命は私のものだー!」

大輔「この叫びを…あなたの声を聞くために」

玉梓「だからこそ、透明色を待つのです」

 

ようやく玉を手にした大角と親兵衛含め、8つの玉が暗闇の中で赤く光る。

 

 

2幕

伏姫「遠き先に一人の少女が生まれます。その子はきっと出会ってくれる。、因縁や運命を超えて歩いてくれるあなたと。大輔、その時まで生きてください」

大輔「私は…あなたに出会うまで…諦めません」

 

馬加のもとに行かせまいと毛野と対峙する小文吾。

夢と離れている現実を歩んでいることに気付き始める信乃と現八。

道節が浜路を殺したと勘違いして彼に襲い掛かる荘介。

小文吾を介してもう一人の復讐の相手・現八に辿り着く毛野。

湖の畔で浜路に話しかける玉梓。

大角の父・一角の亡霊に出会って大角に真実(彼の目の前にいる父は化け猫であるということ)を伝える現八。

出会って、心を許して、本音を吐き出す犬士たち。

 

夕がただものではないことを理解したうえで旅を共にすることを受け入れてくれた信乃に、大輔は荘介が主殺しで処刑されることを告げた。

信乃「行くぞ荘介」

荘介「行けません!私は…行けません」

信乃「なぜだ」

荘介「村雨丸をすり替えました、あなたの命が危ないと知りながら!それだけじゃない!ずっと、あなたの間者でした!あなたを騙し、共にしながらずっと!あなたを裏切ってました!」

信乃「知っている!…ずっとだ。何年一緒にいると思っている。でも一番知っていたのは、お前が苦しんでいたということだ。荘介、お前は武士だ」

 

信乃は一度死んだ浜路に再会する。だが、どこか様子がおかしい彼女の正体は…

「やはりあなたは因縁通りにはいかないのね、犬塚信乃」

その姿が玉梓と重なった。浜路を殺そうとする玉梓に、信乃は村雨丸を渡そうとする。

現八「信乃殿、それを渡してはならん!」

信乃「命よりも、重い刀などない」

 

彼らの生い立ちや出会いを見て心が揺れる夕。最初はただ一心に殺したいと思っていた気持ちが徐々に変化していく。

「どうして私にこれを見せる」

「この世にはわからない感情がある」

 

夕「わからない…どうしていいか。こんなこと、思わなかった…。できなかった…!奪われたのに…」

大輔「あいつらも、お前もそれぞれ一緒だ」

夕「私は何のために生まれたんだ…。何のために…何のために…何のために…!」

大輔「夕、思うように生きなさい。どうなったって構わない。ただ忘れるな。見守る人が、きっとお前にはいる」

 

そして信乃はようやく大輔の正体に気付く-伏姫を心から愛した人。これまで運命から目を背けてきた彼は自分たちの因縁に向き合うことにした。村雨丸が玉梓の手元に渡った時ようやく八犬士が揃い、最後の玉を持つ男-犬江親兵衛-に立ち向かう。

 

親兵衛「たくさん死んだよ。大角も荘介もきっと道節と現八も」

小文吾「そんなはずはねぇ」

親兵衛「そして、毛野も」

小文吾「…死んでんのはお前だ…お前は俺の妹・ぬいの子だなんだ。お前も、ぬいも、殺された…お前の親父にだ。守ってやれなかった。俺は怒りに任せて…お前の親父を殺したんだ…!何も生まれないまま、ただ怒りに任して殺したんだ」

親兵衛「…左手が開かなかった、生まれつきね。でも母さんはその左手をずっとさすってくれた。毎日、ずっと」

小文吾「お前…まさか…」

親兵衛「死ぬまで毎日言われたよ『大丈夫、あなたは希望よ』」

小文吾「お前、覚えてるのか…!」

親兵衛「忘れたことないさ。だから、この暁闇を俺の全て、この左手を開かしてくれたもう一人の母さんに、届けなきゃいけないものがある。俺の痛みを吐き出すんだ。持っていってくれる人がいるから」

 

その頃、夕は村雨丸を前にしていた。玉梓に信乃を殺すことを促される、が…

「私は信乃の玉でありたい。奪うのではなく、与えてもらった。色んなものを」

 

信乃「あなたは伏姫ですね、里見の呪いさえも引き継いだ。敵討ちに来たのではありません。私は信じています…出会うことをこの旅の先を。だから村雨丸はお返しします。痛みを背負っていてくれたあなたに出会わせてあげたいんです。俺たちは旅をします。そうでなきゃ出会えない」

 

親兵衛「左手に書いてくれたじゃないか。『玉蜻る』と。改めて、最後の一人・犬江親兵衛仁だよ」

信乃「遅いな、まったく」


大輔「お前たちが、出会わせてくれた。伏姫、痛みは一緒に背負わせてもらいます。そのために生きてきたんです。この刀は」

玉梓「人だから。私の…心だから」

 

浜路と合流した犬士たちは玉と牡丹のあざを見せ合い、遠い空を見上げた。

 

 

カーテンコール

・つばさくん、きたむー、カレンちゃんの3人は中央から出入り。他のメンバーは上手と下手にそれぞれはける。

・下手バルコニーに西田さんと2人の大人の方が出てくる。暖かい眼差しを向け拍手する一同。

 

東京楽なので一人一人コメント

崎山「お客様のお尻が壊れる前に、短めに!」


川上「稽古中からたくさんの刺激と学びと新たな楽しさをいただきました。どうかこの航海の旅路を最後まで共に歩いてください」


鯛造「稽古から本番、ここにいられることがずっと幸せでした。ただ、幸せっていっぱい摂取すると疲れるんだなーっていうのを…(乗船は)2度目ですけど感じました(笑)」

 

柳「浜路を演じてみて、私自身も浜路みたいに愛されるような強い女性になりたいって思ったのと、あとこうやって守ってもらう女性って嫌われがちなんですけど、そういう浜路じゃなく演じられたかなって信じてます。一生懸命頑張ったのでこれ以上喋ってしまうと泣いちゃいそうなので、最後は浜路らしく笑顔で終わりたいと思います」


谷口「人間は人生を理解することを後ろ向きにしかできないそうで、ただし生きていくことは前向きにしかできないらしいんですよ。ちょっと僕が言うと嘘くさい言葉なんですけど(笑)これ本当にキルケゴールという哲学者の言葉でして、この八犬伝をやりながらずっとそんなことを考えてました。過去に何があっても前を向いて一緒にいる仲間のために、ここにいる人たちのために、一生懸命生きることが僕たちのできることなんじゃないかなと思いました。皆さんのおかげで前に進めました。大阪も一生懸命やります。もし来れたら来てください」


村田「はい、俺の名は犬田小文吾(Twitterの出だしと同じ)。3つございます。大阪公演もしよろしければ足を運んでいただきたいというのと、大阪千秋楽に配信が決定しました‼︎3つ目ですね、ロビーを出ますとグッズが売っておりますからね。この条件3つ揃ったら、僕のあざがお尻にあるんですけど、この尻のブロマイドを差し上げます!」

 

良子「本日は出会いに来てくださって本当にありがとうございます。私は生まれた意味とか何で生きてるんだろうとか考えることなくただ一生懸命生きてたら、今日こんな幸せな場所に辿り着くことができました。どうか皆様も、色んなことあると思うんですけども、生きて、なんとか生きて、また出会えたらなと思っております」


萩野「崎山くん中心に新しいキャストが新しいDisGOONieの風をすごく吹かしてくれたなと思っておりまして。少しでも多くの方に観ていただきたいなと思う作品なので、もし良かったらお力添えを、宣伝などしていただけたらなと思います」

 

糸川「本当に僕の魂を注いだ舞台になりましたんで、そんな中お尻を痛めながら観に来てくださった皆様のことが大好きです。以上。ありがとうございました」


砂川「荘介としてたくさん跪いてたくさん信乃様に光をいただいてお客様にも光をいただいて、本当に幸せでした」


藍染「私は初めて乗船させていただいたんですけれども、この赤くて得体の知れない私をキャストの皆さん、スタッフの皆さん、そして乗船してくれた皆さんがとても温かく見守ってくださって、夕と共に本当に色々なものをいただいたと思っております」

 

北村「皆様にとって特別な物語になっていたらとても幸せだなと思います。1個だけ、本当に謝らなきゃいけないことがあって、昨日ツイートで『明日配信あるよー』って書いちゃったんですけど、大阪千秋楽の話でした。本当に失礼しました(笑)」

 

崎山「たくさんの拍手と、素敵な景色を見せてくださってありがとうございます。皆様からいただいたたくさんの風を使って帆を張って面舵いっぱいで大阪に向けて出航していきたいと思いますので、引き続きの応援よろしくお願いします」

 

アドリブシーン

・「ハイ」

信乃「ではここにある臓器は?」

荘介「はい(肺)」

信乃「物は燃え尽きると何になる?」

荘介「はい…(灰)」

信乃「『低い』は外来語で?」

荘介「Low」

信乃「おおおおーー!良い声するじゃないか荘介。いいか、俺とお前は同じ境遇なんだ。父上を失ったことも身寄りがいないことも。あの時から俺はお前を兄弟だと思っている。死ぬ時は一緒だ」

 

・オープニングのオチサビで現八が取り出してきた本を見てブンブン手を振る道節と毛野。その後道節が毛野の背中を押して次のシーンに移る。

 

・「結婚してください」「はい」×6 (次第に北村毛野の返事が早くなってく)

小文吾「僕と!結婚してください!」

毛野「はい」

親兵衛「はい」

小文吾「まさか上手くいくわけないよな、だって初めて会ったんだもん。そんな簡単に結婚できる…さよならっ……ふふふふふ…今…なんつった?」

毛野「はい」

小文吾「はい…?え!?僕と!結婚してください!」

毛野「はい」

小文吾「ちょっとなんか…え、今言ったよね?」

親兵衛「言った!」

小文吾「僕と!結婚してください!」

毛野「はい」

小文吾「ちょっちょちょっと早いぞ。どうした?言ったよな!?」

親兵衛「言った!」

小文吾「よし…僕と!結婚して…」

毛野「はい」

小文吾「ちょっちょ早いよ。言ったよな、言ったよな」

親兵衛「言った」

小文吾「よし、もう一回いこう。僕と!」

毛野「はい」

小文吾「ありがと、ありがとう!」

親兵衛「毛野、本気で言ってるのか?」

毛野「よろしくお願いします」

小文吾「あ、あまりのことに世界が白黒に見える。今、白黒だよ!」

親兵衛「狂ってる!世界が!」

小文吾「お前は今からあさっちょ改め嫁っちょとなる!いいか!」

毛野「はい!ワンダフル♡」

小文吾「ババババーンババババーンババババンババババン…」

親兵衛「嘘でしょ⁉︎ねぇ嘘でしょ⁉︎」

下手通路を通ってはける小文吾と毛野。

 

・親兵衛のアカペラが上手すぎる

玉梓「親兵衛、親兵衛!」

親兵衛「はーい?今大変なんだから!毛野がね結婚しちゃうんだよ」

玉梓「そうかい」

親兵衛「アレだね、やっぱり美女ってのは野獣が好きなんだね。♪Tale as  old as time. Song as old as rhyme. Beauty and…」

玉梓「静かにしなさい」

親兵衛「はーい。ねぇ、今って暁闇でしょ?毛野が舞ってたし」

玉梓「そうだよ。現世とこの常世が混じわる時間。人ならなるものが現世で思いのままに生きられる時間さ」

親兵衛「ファンタジー!♪Beauty…」

玉梓「静かに!」

 

・小文吾の生い立ちを語る番になった時、早速ボケようとした洋二郎さんの後ろにそっと立つ萩野さん。出番はまだなのですぐ下手に帰っていった。

・洋二郎さん「そんなの関係ねぇ(小島よしお)」

 

・小文吾、ラッパーになる

小文吾「パンパカパーンパンパンパンパカ~♪わったしたち出会った瞬間に~恋に落ち婚礼の時期を楽しみました(エレクトリカルパレードの替え歌)。えーそれじゃあ聞いてください。新曲です、『If』」

小文吾「♪高鳴る鼓動は~旦開野に~ビビる馬加嫉妬する~Don’t you know~そこに小文吾来て~あんたを斬る~そんなシーンがあーった~…だーけーど、芝居の尺が長いから~」

「いやいや」

小文吾「迷わず~カットされた~◯△×~芝居の尺は長いけど~楽しんでくれるかな~」

 

・小文吾のアンケート

小文吾「俺の名は犬田小文吾。これから愛しい人と初夜を迎える。さっきまでここでちょっと…」

大輔が下手から登場して小文吾の後ろにそっとつく。顔を合わせてすぐはける。

小文吾「忘れよう。さっきまでここでちょっと切なめの場面をやっていたが、そんなの関係ない。あー申し訳ない、そんなの関係、ない(小島よしおの身振り)。俺も切ない気持ちで溢れているからだ。そこに旦開野が寝ている。最初は口付けから交わした方がいいのかただ抱きしめた方がいいのか、ここでみんなにアンケートを取ろうと思う。口付けを交わした方がいいと思う人、手を挙げて」

客席の三分の一くらいが手を挙げる。

小文吾「こんなにたくさん挙げてくれてる!でも一つだけ言っておく。台本には、ここはシカトされるって書いてあるんだ。だけどね、勇気を持って挙げてくれたみんなに拍手だ!」

 

・段ボールのうっすい船を毛野と一緒に漕ぐ小文吾。

 

 

演出

・開場中は上手と下手の舞台セット(障子の割合は4:3)の間から、奥にスクリーンが見える(映し出しているのは今回のティザーでよく見る青赤のモヤ+玉)。

影ナレ~1幕が始まる際、色の入ったサスペンションライト(舞台上からの照明)がH~K列あたりにめちゃくちゃ当てられる。最初の光めっちゃ客席当たる(真ん中の列あたり)
・天井に届きそうなくらい高い舞台セットは頻繁に回る。開場中は障子の面が客席に向けられているが、その反対側は階段になってたり。

 

・月唄、親兵衛、玉梓は時折他の役と同じセリフを被せてくる。映像作品で言う回想シーン的な。

 

・1幕では1つの同じ玉を使って、各犬士の生い立ちが語られる。例えば、道節と左母二郎が戦っている時(1幕にあった殺陣の中で最もスピード感があった)に落ちた玉が毛野の手に渡って馬加と戦うシーンに、そしてその後信乃・現八の戦いに玉が繋がる、というように複数の戦いが交差して描写されている。

 

・客降りは1階に3回あり。

1回目は小文吾と毛野が「結婚してください」「はい」のくだりを5回やった後、2人が下手通路を通って後方扉からはける。

2回目は賢志さんが上手の通路を通って上手横の扉にはける。

3回目は荘介が死刑されそうになるところを助けるシーン。下手後方から信乃、上手後方から現八が登場。

 

 

劇場

・階段のきしむ音が大きめ(座席がかなり繋がってる可能性あり)。そのため、客降りなのか観客が途中退場しているのかわからなくなる時さえある。

・椅子は低め。

 

 

その他

・入場は2階のエントランスゲートから

・東京楽のわりに客席の温度低め

・入場特典はタオルにマスクケースと豪華(ref.前作のリトファンの特典はポストカード2枚)

 

・開場中に流れていた「♪だから痛いんだだから笑うんだ こんな世界でも明日はきっと 旅は終わらない」という曲、思い返せば毎回流れてるなーと思ったけど、ネットで調べてみても曲名が出てこない。どなたか存じ上げている方がいらっしゃいましたら教えてください。

・「私を探した」という歌詞の入った曲など、いかにもDisGIONieらしい選曲

 

 

〜レポート〜

 

裏話や開幕直前SPの話はこちらの記事で↓

kiminoyumetotomoni.hatenablog.com

 

観劇理由

・DisGOONieだから

 

めちゃくちゃ端的にまとめたけど、この12字に全部詰まってる。西田作品はクセが強いので人それぞれ評価が異なる中、主は全脚本家・演出家の中で一番西田さんが好き。言葉の言い回しとか照明の使い方とか舞台セットの動かし方とか挙げていったらキリがないけど、とりあえず西田さんが作る世界観に惚れている観客の一人だ。DisGOONieに限らず西田さんはガーネットオペラとかまほろばかなたとか外部でも作品を作っているけど、彼のやりたいことを存分にかなえているのはやはりこの座組ではないかなーと思ってる。そしてそれに乗っかる大人組を始めとした乗船員。それを観る観客。DisGIONieの一体感はもはや私のふるさと。今回、西田さんの脚本で新たに気付いたことは……倒置法が多い!

 

 

考察

今回は予習として200巻近い八犬伝を現代語訳で読むことに。

kirinwiki.com

八犬伝自体は小学生の頃から読んでいたので馴染み深かったし大好きな話だったけど、いざ分厚い本を読むと登場人物が多すぎてサブキャラはほとんど把握できない。上演時間が限られている玉蜻でいったいどこまでを描写するのかなーって思ってたら本当に序盤の序盤だった。結城の合戦はワードだけ出てきたけど、メインは八犬士の生い立ちと彼らがそれぞれの場所で出会うシーン。“8人が力を合わせて〜”みたいな八犬伝っぽい場面は最後の最後でしか出てきません(各々のシーンを見てきたから8人揃うと迫力すごかったけど)。

 

正直、今回のDisGOONieはかなり難易度高め。1回だと全然わからない。多分その原因は場面転換が多かったり、伏線を張りすぎていたり、直接的な表現を避けているから。群像劇のうえ、各所で起きている戦を交互に描写しているので、何がどうなっているのかわからなくなることも多々。毛野が馬加に反乱を起こした際、めっちゃ混乱していたのはアンサンブルさん演じる従者の慌て具合で察した。でも、何がなんでも途中で理解することを諦めてはいけない。わからないならわからないなりに自分で考察を立ててこそ新しい解釈が見えてくるのではないかと思う。主は玉梓が伏姫だとわかってとてもスッキリしました。とりあえず、1幕は犬士たちの生い立ちが描かれていて、2幕では犬士がようやく集い、夕に温かい感情が芽生えた後、親兵衛を味方に引き寄せ、伏姫・大輔を成仏するという構成が頭に入っていれば大丈夫。

 

ちなみに、上演時間4時間(正確に言うと3時間58分)は全然気にならなかった。「ちょっとお尻疲れてきたかな…?」と一瞬感じたくらいで、全然耐えられる(今回はストーリーの展開が早いのでね)。

 

 

新説・八犬伝とはーー「出会い」

なんせDisGOONieなので、あくまで‘“史実に基づいた物語”。原作通りの展開にならないことは予測していたけど、まさか犬士が死ぬとは(玉の力で生き返りますが)。原作では犬士が戦に負けるなんてことはほとんどないけど、今回は大角→荘介→毛野→現八・道節→小文吾の流れで、倒れたり自首したり刺されたり。また、現八が大角を守れなかったり、小文吾が親兵衛を守れなかったりと因縁も原作より深いのかなと思った。これぞ「新説」だね。色んな「出会い」をテーマに、細い糸が紡がれていく。犬士同士が出会うことも、夕に出会うことも、伏姫に出会うことも、村雨丸に出会うことも。

 

もちろん、原作に忠実なシーンも多い。例えば死刑されそうになっている荘介を信乃と現八が助けるところ。このシーンでは①客席に照明が当てられて②信乃と現八が出てきて③客席の通路を通る信乃の振動を感じて(主は下手側に座っていたため信乃がめちゃくちゃ近かった)という3つのパンチが同時に襲ってきてすごい感動した。泣きそうになった。

 

 

オープニングを考える

たった4分間されど4分間の中に紡がれた物語とは何だったのだろうかーー

1回の観劇と100回以上観たYouTubeの無料公開の映像とともに考察してみる。

 

・玉梓に頭をすられて安心そうに目を瞑る夕

→母・八房の育ての親・玉梓に安心感を感じた。

 

・「忠」の玉を追う視線・姿が隣の浜路とリンク

→ミミクリが起きていることで兄弟感が出る。

 

・アンサンブルの女性(きっと小文吾と縁のある方でしょう)に玉に手を重ねる仕草(初日)

→東京楽では手招きはしたものの女性と手は重なておらず。ここは日替わり?

 

・歌詞とストーリーのリンク

「何も聞こえていないと思ってるんでしょう 何も知らないでいると思ってるんでしょう」

→一人称は何?村雨丸?玉?

 

・浜路を見つめる荘介、一方で浜路は彼の横を通り過ぎる

→荘介の叶わぬ恋

 

・左手を挙げた新兵衛

→『仁』の玉を握っていたためにずっと開かなかった左手が開くように

 

・他の犬士よりも眉をひそめて不思議そうに『礼』の玉を見つめる月唄

→後に大角となる彼は、玉梓にこき使われていたこともあって色々思うところがあるのかな…

 

・サビ「あらゆる景色で持って~」のところですれ違った玉梓を、振り返りはしないが何か噛み締める大輔

→彼女への罪を思い出してる?

 

・サビ「だから、あなたに意味はちゃんとある」のところで信乃を見つめて微笑む大輔

→彼の愛した伏姫の子どもを温かく見守るパパの目

 

・↑このシーンのすぐ後に上手から走って夕が出てきて、2人を見た後、村雨丸をそっと手にとって抱きしめる

村雨丸を取ろうとする思い?本編では実際に荘介の手によって玉梓たちに村雨丸は渡るが……

 

・オチサビ前に信乃、新兵衛以外の全犬士が敵陣にやられる

→2幕で各犬士が殺されるシーンとリンク。特にOPの毛野の刺され方(のけぞる感じ)は終盤殺される際の刺され方と一致

 

・親兵衛に刺される小文吾

→本編でも小文吾は新兵衛に殺されそうになる。ただ、本編と違うのは小文吾を刺した後新兵衛も一緒に倒れるところ。

主はそもそも観劇前まで小文吾を刺しているのが新兵衛だと全く気付かなかった。これは物語を知ってからではないとわからない発見だったのかも。

 

・奮闘する瞬間は被らないが倒れる瞬間が重なる道節と現八

→本編でも殺され(そうにな)る際には一緒にいる2人。

 

・そんな犬士たちがやられている姿を見て苦しそうに顔を歪め後ろに下がる大輔

→やはり子供たちが殺されるのは辛いよな…

 

・信乃「お前どこかであった事あるか」夕「(俯いて首を横に振る)」信乃「この感覚は何だ…」

→白い大きな犬として夢の中で既に夕と会っていたから

 

・夕「私も連れて行ってほしい」信乃「え?」夕「その刀を届けるんだろう、それなら私が必要だ」信乃「なぜそれを知っている!?」夕「それだけじゃない。お前は玉を持っている。私がお前の旅になる」

→夢の中で信乃が村雨丸を届けることも、光る玉を持っていることも知っていた夕。八房を殺された復讐として、大輔が愛した伏姫の子ども・八犬士を殺し、玉を手に入れるために、信乃に近づく

 

・夕が「お前の旅になる」と言うと、玉梓(伏姫)から玉が飛び出る

→それと共に倒れていた犬士が生き返る(玉の力によるもの)。夕は伏姫のもとへ。そんな彼女に優しい眼差しを向ける伏姫。彼ら・彼女らを見て微笑む大輔。

 

・生き返って中央に集まる犬士たち。小文吾は「よっ」って手を挙げながら久しぶりの再会を嬉しそうにしてるように見える。

 

・オチサビに入ると信乃に駆け寄る浜路。

→無事に信乃に会えたらしい(そういえばマザランでもオチサビの時に昌平君と李環がこんなシーンやってたな…まぁ今回は抱きしめてないけど)

 

・再会すると浜路含め上を見上げる八犬士。

→DisGOONieオープニングの恒例パターン。その先にある希望を感じる。

 

・現八が本を持ってきて犬士に見せるシーン。初日は犬士たちがその本を指さして笑っていたが、東京楽では道節と毛野が顔を合わせて現八にブンブン手を振る(俺違う、的な)

→ここは日替わりシーン。果たしてこの本の正体とは…?南総里見八犬伝かな…

 

・本編では何が起きようと村雨丸を抜かない信乃が、オープニングのラストでは夕の上で村雨丸をゆっくり抜く。しかし、夕を殺そうとはしていない様子。

→信乃が村雨丸を抜いた意味とは?

 

・ラスサビ「あなたがあなたをつくるのよ」で八犬士がポーズをキメる直前、離れた場所で大輔と伏姫が顔を見合わせて笑う

→本編では村雨丸で2人は共に自首するが、それを経て上から見守っている…?

 

・3回現れる影が何を表しているのか

1回目:曲前、大輔「その刀は」玉梓「その心でございます」と言うと現れる下手の障子に移った影は徐々に小さくなって消える。すると、そこから信乃が出てくる。

2回目:1サビの「あなたに意味はちゃんとある」で大輔が信乃を見つめて微笑む時、上手の障子に映る影は徐々に大きくなる

3回目:1サビの間奏、夕が村雨丸を抱えて走り大輔がそれを見つめている時、上手の障子に移る影も徐々に大きくなる

→何かのきっかけを表していることはたしか。影=犬士を襲う闇?影が小さいほど良いことが起きるし(犬士が集まる)、大きくなるのは悪い前兆の可能性が高い(夕に村雨丸が取られる、犬士がやられる)

 

 

最後音楽がブツッと切れて荘介の生い立ち語りが始まるのはびっくりしたけど(笑)せっかく素敵な曲なのでアウトロの最後まで流しても良かったかな。それよりもオチサビあたりで一瞬音が止まったことが怖かった。役者陣はプロなので気にも留めない様子でポーズを取り続けていたけど、主は内心ヒヤヒヤでめっちゃ焦ってました。すぐ動いたので結果オーライですが。

 

ちなみに、オープニング前の冒頭20分は4時間の作品をぎゅっと短縮した導入部分。

月唄「行徳に『悌』の玉を持つ人殺しが一人」

小文吾「やり直すことはできねぇ。これでもう…人殺しだ」

月唄「武蔵に『忠』の玉を持つ墓から蘇った男が一人」

道節「どうして…俺は生きてる…うっ…教えてくれ、睦月」

月唄「大塚に生まれを呪ういいなずけ一人、そしてもう一人」

荘介「浜路様、あなたのせいではありません」

浜路「でも信乃様の…お父上を殺したのは…私のおうちよ」

荘介「そうだとしてもあなたを恨むような人ではありません」

浜路「荘介、信乃様の近くへ。きっと辛いだろうから」

荘介「私は」

月唄「叶わぬ思いに心を焼く『義』の玉を持つ男一人」

この部分は全て本編の中に登場する台詞の抜粋ですね。なんとなくのあらすじを把握したいならこの冒頭20分~オープニングを見るのもアリ。

 

 

八犬士と夕の関係性

月唄「里見にまつわる一匹の犬。その犬とともに過ごした伏姫のお腹に宿したのが八つの玉。私たちはその子どもたちだ」

大輔「私が里見の犬を、八房を殺した。それが因縁の始まりだ」

信乃「もう一人、夕。あの子もそうか」

大輔「そうだ」

 

夕「…奪われたものがある。温かい時間、全て奪われた」

 

八犬士が揃う前に殺すと、夕の“全て奪う”という願いは果たされない。彼女が犬士に恨みを持っているのは親(八房)を殺された後で生まれてきた子どもたちだから、と思ってるんだけど、八犬士は伏姫が宿した子だから実質八房の子でもあるんだよね。つまり、腹違いとは言えど(産みの親がまた別にいるということが少しややこしいが)夕と犬士たちは兄弟だということ。

 

「八房の中にもあなた(伏姫)は玉を落とした。あらがう八房と消えたいあなたの心から、夕が生まれたんだよ」(親兵衛)

…ん?ちょっと待って、八房が夕の子だとしたら八房(オス)が夕を産んだことになるの(本編では伏姫が夕の母だとは言われていない)…?それってファンタジーすぎないか…?まあ要するに犬士たちと夕は伏姫の思いから生まれた兄弟で、その中でも特に親兵衛は伏姫に育てられたから(産みの親はぬい)夕と近しい間柄なんだ、ということで!

 

 

玉の意味

八犬士がそれぞれ持っている玉は、現八が「あの玉はひとつ分の命になるかもしれんと思ってね」と言うように、一度死んでも生き返ることができるパワーアイテム。何人かの犬士たちは玉によって命を救われたことがある。信乃は1幕で「玉なんて持っていない」と何回か言っていたが、彼は父が自害した時に自分も後を追って首を斬ったから本来ならもう死んでいるはず…それなのにまだこの世にいるということは玉が彼の命を助けということなんだろうね。いつ手元に戻って来たのかはわからないけど。

信乃:父親の後を追って自害した時

毛野:一族を馬加に殺された時(当時毛野はお腹の中)

大角:雛衣が自害した後自分のせいだと責めて後を追って自害した時

親兵衛:実父に殺された時

浜路:左母次郎に殺された時(道節の玉を所持)

 

もうひとつ。物語の進行には関係ないけど、もとの玉の字と対になっている字。

「『義』の玉は手にしたものを失い、これと為す。『智』の玉は駆け抜け『生』の意味を今や手に。『悌』の玉は己の『心』を探り始め、これで『忠』の玉もようやく『発』となる。はじまりを司る『仁』はあるがままの『如』く、あと一つは…なんだろうね月唄」「『信』の玉は未だ牢屋の奥深く。『孝』を生きる真ん中は『』んでくれるかねぇ」

玉梓がこう言っていることと、冒頭の親兵衛と玉梓のやりとり(あらすじ参照)から6人の意味はわかったんだけど、荘介と大角がわからない。一方が「是」でもう一方が「畜」。

信乃:「孝」→「

荘介:「義」→?

現八:「信」→「菩」?

小文吾:「悌」→「心」

毛野:「智」→「生」

道節:「忠」→「発」

大角:「礼」→?

親兵衛:「仁」→「如」

 

 

予知能力者が多すぎる問題

この中には物語の行方を全て知っている唯一の人物がいる-玉梓でもなければ大輔でもない、そう親兵衛です。犬士の生い立ちを聞かされているときに知らぬふりをしたり、玉梓の前では子どものようにふるまっているけど、犬士を救ったりと村雨丸が伏姫のもとに届くように手助けすることが多々。

 

毛野「お前もこれが終わったら私から離れろ」

親兵衛「どうしてさ⁉︎」

毛野「旦開野は終わりだ。これ以後は畜生道に生きる」

親兵衛「そういうわけにはいかないんだよねぇ。俺が最大の敵なんだから」

 

馬加を殺そうとする毛野に、

親兵衛「恨みを持って人を殺せばお前はもう人ではなくなる。いいの?」

 

ファンタジーその2~現八篇~

月唄「お前が生まれてきた意味を知るため、旅をするがいい」

現八「あーなるほどねー。じゃあさ、君がやってみないかその旅を」

月唄「あんたの因縁!」

現八「あんたの因縁でもあるんだよ」  

月唄と出会った際、既に現八はこう言っていた。もしかして彼は月唄が大角である(になる)ことを知っていた…?しかし、そう仮定したとしても、どこでどう知ったのかがわからない。だって月唄が大角になるのはまだ先の話じゃん。考えられるのは夢説。2幕で「一度死んだ時に玉と因縁について知らされていた男がいる。それがこの男だ」と現八が言っているシーンがあるのだが、夢で告げられた可能性もありそう?確かなのは、親兵衛が物語の結末を全て把握している時点でこの話はファンタジーだということ。まあ原作の時点で親兵衛のサイズ感だったりとか怪力具合とか虎が巻物から飛び出してくるとかファンタジー要素マシマシだもんな、そりゃ納得!

 

ファンタジーその3~道節篇~

「お前がそれを持っていることが、その二人の兄弟への祈りになるんだ。大切に思うなら受け取れ」
と言って自信の「忠」の玉を浜路に託した道節。この後彼女に何かあるだろうと予測して渡したのか、左母次郎に殺されることを知っていて渡したのか、正解は西田さんにしかわからない。

道節「浜路は死んでいない。そのために渡した…私の玉を」

道節「お前にはきっとこれからも苦難しかないだろう。多分、それは俺たちが与えられた風なのかもしれない。お前はその風にのまれている」

荘介「あんた…」

道節「次に会う時にはそうでないことを願う。それまでこの刀と…お前の玉を預かっておく。命よりも大切な我が妹だ」

 

ファンタジーその4~最後のシーン~

一番疑問なのは最後の方でほとんどの犬士が殺されたはずなのに、結果的にみんなで空を見上げているシーン。玉が命1回分だとしたら、その効果を既に使っている人もいるわけだから助からないはずなんだけど…

 

衣装と照明で生きる八犬士

原作では小文吾が最推しだった主ですが、今回の八犬伝だと一番道節が好きだった(もちろん村田小文吾も小文吾らしくて良かったけど!)。理由は逞しさと優しさとサイズ感。これまで小文吾ばかりに目を向けていたけど、川上道節見てたら「ああ道節ってそういえばこんなイメージかもな」って腑に落ちた。将大くんめちゃくちゃハマり役。

でも北村毛野も捨てがたい。きたむー、魅せ方が上手。DisGOONie名物の憂いを帯びた衣装と淡い照明。今回はアンサンブルの方に加え、毛野の衣装がかなりひらひらしていたんだけど、2幕が終わって暗転し始めたところで袖を舞わせたのは名案すぎた。衣装が生きている…!そのまま暗転したので、毛野の衣装は舞ったまま主の記憶と化した。

 

目が足りないとはまさにこのことで、道節も毛野も見たいのに、この2人は対極的に立つことが多いため上手と下手を両方把握せねばならない。人間が色彩を認識できるのは35度までなどと言われているが、いざとなったらバキバキに開いて70度くらいまでは見えることが判明した。

 

 

出演者の印象

崎山つばさくん

初見:死神遣いの事件帖 or 舞台ID 

前回出演していたプロペラ犬の作品といい、よく0番に立つ俳優さんだなぁと。そしてセンターが似合う。思ってたより声が低くて、聞き取りやすかった。


北村諒くん

初見:刀ステ

なんだかんだ初なまむー。2.5ハマった初期から存じ上げていたので初めてな気がしない。女形が綺麗なあまり、思わずブロマイドを購入してしまった。衣装のなびかせ方が上手。個人的に特に好きなシーンは冒頭、民衆や小文吾の前で披露した燃えるような舞。


藍染カレンちゃん

初見:たまかぎ

カレンちゃん本人が意志の強そうな女性っぽそう。そういう意味では夕はハマり役だったのかなと思う。

 

糸川耀士郎くん

初見:刀ミュ

以前からきたむーと耀士郎くんって似てるなーって思ってたんだけど、本人たちも自覚あるそうで、同じアングルで撮ったり相手を盗撮したりと大の仲良し。ついにきたむーからまねじろう呼ばわりされる耀ちゃん。新兵衛の幼さを喋り方やスピードで演じていて良かった。アドリブシーン(「美女(毛野)は野獣(小文吾)が好きなんだ」の後)の『Beauty&the Beast』、アカペラなのに上手すぎた。さすが。

 

砂川脩弥くん

初見:舞台ID

身長高い郡の一人。やっぱり身長高いと映えるねぇ。

 

川上将大くん

初見:アクターズリーグ2022(バスケ)

体は大きいし動きはダイナミックだしめちゃくちゃ強そうで怖そうに見えるけど、実はすっごい謙虚で小心者な一面を直前配信で知った。ギャップ萌え。左母二郎と闘ってるシーンの殺陣の迫力は本当にすごかった。キャストさんが直前配信とかツイッターとかで「道節の好きなシーンがあるんです」って言ってるけど、良いシーンありすぎてもはやどれかわからない。


椎名鯛造さん

初見:和田雅成くんのブログ

みんなのお尻と公演時間を気にかけてくれる鯛ちゃん。生のお芝居に触れるのはマザランぶり。改めて目の当たりにすると、鯛ちゃんの声はすごい聞き取りやすかった。


柳美稀さん

初見:たまかぎ

DisGOONie名物の強い女性シリーズ。浜路の信乃や荘介や道節を心配させたくないという気持ちがしっかり伝わってきた。彼女のツイートを遡っていたら、えいらぶ長谷部の主でびっくりした。あのギャル審神者ね…浜路と同一人物には見えない…


谷口賢志さん

初見:PSY・S

この前まで見ていたREALFAKEがゴリゴリの悪役だったのでその印象から抜けられるか心配…だったけど、髪の毛切ってさっぱりしたので現八として見ることが出来た(良かった)。


萩野崇さん

初見:デカダン

声が良い。最後良子さん演じる伏姫と抱き合うシーンは感動した。自分の罪を背負い続けた大輔がようやく伏姫と一緒に空へ旅立ちましたとさ…そしてそれを静かに見守る犬士たち。


村田洋二郎さん

初見:PSY・S

やはり公演時間伸ばしてるのは洋二郎さん。1幕でも2幕でもアドリブかましてきた。途中ピカピカ光るメガネと首にかけるヤツをぶら下げてきたむーと茶番やってた。今回は東京楽だったけど、客席の温度が低めだったので滑っているように見えたけど…もちろん面白かったです。

 

田中良子さん

初見:PSY・S

数年前にPSY・Sで初めて拝見して「なんて強い女性なんだろう」と感銘を受ける。その後のデカダンでも強い女性をやってらっしゃって、良子さんといえば“強い女性像”。久しぶりにご夫婦で板の上にたつ姿を拝見したのですが、洋二郎さんがカテコでお尻を見せようとした時、良子さんは元に手を当てて恥ずかしそうに苦笑いしてた(笑)