ここなっつぴぃす

紡いだ夢の先へ

「GREASE」The Musical 観劇記録

 

「GREASE」the Musical

@Dominion Theatre

観劇日 2023年8月1日(火)19:30

(予定上演時間 2時間半)

1幕 19:31〜20:32

休憩 約15分

2幕・カテコ 20:53~21:55

ショー 〜21:59

 

〜本編〜

 

演出

詳細はカテゴリーごとに書くのでさておき、全体的な印象としては「ド派手・メリハリ・チカチカ」。照明の色使いや舞台美術が派手だったり、基本は派手なシーンばかりだけど時折暗いシーンが入る際は打って変わってピンスポでメリハリを表現、みたいな非常にわかりやすい演出だった。火やスモークなど特攻の演出もあって、演劇というよりはライブパフォーマンスに近い表現技法な気もする。

 

ステージ構成

一番興味深かったのが、本来あるステージを若干くりぬいて奈落を作っているところ(下記の写真参照)。この不思議な形に才能を感じた。あるシーンで紙を燃やして奈落に落とす場面があるんだけど、下に落とす際観客全員覗き込んで興味津々そうだった。

 

舞台セット

細い棒が天井から吊るされていて、キャストがたまにそこに登ったりしている。珍しく細かく作られているけれど、単体ではなくその棒が何本も連なっているので存在感は強い。

 

照明

1階席、舞台の斜め下、舞台上、2階席の上にあるであろうオペレーション室から等、色々な角度から照明を当てている(下記の写真参照)。赤、ピンク、青をベースにたいているので基本チカチカしているが、ピンスポをあてるときは一点集中にするなどメリハリをきちんとつけている印象。照明の色に中途半端さがなく、派手な色の使い回しをして派手さを演出していた。

 

音響 

音が大きすぎて耳壊れるかと思った。西洋人の感覚バグりすぎ。なにより、終演までにはその音量に慣れてきてしまっている自分が怖い。楽曲は有名どころばかりなので非常に楽しかった。

 

劇場

・1階の天井や座席間の段差は低め。2階は勾配や天井に解放感がありまるで帝劇のよう

・劇場内はかなり寒い

・劇場内部において角が少ない(下記の写真参照)

・舞台上は奥行きがある

 

 

その他

・開演前:幕はなし、BGMが流れていたり、舞台上のスクリーンに映し出されている絵が動いていたり

・ナレーションの人がいて、劇中定期的に話を進行してくれる

・夜公演にもかかわらず子どもも観劇

・トイレ列はほぼなし

・生オケっぽそう(奈落で待機)

・当日券で最安値で観劇したところ、25ポンド(ネット上で買うと30ポンド)で座席は2階の後ろから3列目の最下手

 

 

~観劇動機~

グリースかジャージーボーイズかムーラン・ルージュの3択でどれにするか迷ったけど、21年の日本公演大楽後にTwitterで放映されたティザーと曲見て「楽しそうだな。行けば良かったな」って思ったからグリースに。当時知り合いに「チケット余っているので良かったらどうですか」って声掛けられてたんたけど金欠で断った記憶があるからその無念を果たしたことにもなるのかな。あらすじ調べてみたらそっちの方が面白そうだったしね。本場はブロードウェイだからアメリカなはずだけど自分の意思で海外に来ることもそうないしそうなると英語版のミュージカルを観ることもなかなかないだろうからってことで見ることに。ちなみに、私のお目当てである『We Go Together』は1幕のラストとカテコで聞けたのでテンション爆上がりだった。

 

 

~感想~

いやぁ海外のミュージカルってすごい。規模感が違う。外装がGREASE仕様なのでてっきりDominion Theatreで根付いた作品なのかと思ったら7月2日から8月28日までの期間限定公演らしくてびっくりした。そんな短期間なのに外観含め劇場全体で盛り上げてくれるくれるんですか…⁉帝劇や明治座でもそんなフューチャーしてくれるかな…。ふと気になってwikiで調べてみたらGREASEは1971年の初演から今年で52年、映画だと1978年の公開からちょうど45年の歴史を誇るそうで、そんなロングランの作品を翻訳なしで観ることができて良かった(本場のブロードウェイでないことはさておき)。ちなみに日本初演の際は初代ジャニーズのあおいさんが主演を張ったそうで。色んな縁があるんだなぁ。

 

ロンドンのミュージカルはネットから購入するのが筋というかベーシックなスタイル。主はクレカの問題上上手く決済できなくて毎度劇場で当日券を購入しているんだけど、劇場ごとの対応が一番わかりやすいので意外とおすすめ。今回は開演1時間半前に行ってみたところ「裏口のエントランスから入ってくれ」と言われ(明らかにここがエントランスだと思うんだけどな…)と文句をたれつつ怪しい道を通って建物を一周してみるも、もちろん裏口にエントランスなどなかったので気まずい思いを抱えながら表に戻って再び「当日券を買いたいんです」と説明したら苦笑されながら中のチケット売り場に通してくれた。え…最初からそこ通して⁉「さっき○○行けって言ったよな?w」とコソコソ笑われたような気がするけど、身内(セキュリティーガードマン内)ってそういうノリあるもんな、うんそんなもんそんなもんとスルーして無事に当日券をゲット。購入するまでは微妙だったけど、チケット売り場のおじさんとか入場の際にチケット確認してくれた女性のスタッフさんとかは良い人だったので、そんな身構えることはしなくても大丈夫。

 

そしていざ観劇してみると新たな発見をすることができた。まずは日本のスター性。主がよく観に行くストレートプレイ(以下:ストプレ)や2.5次元ミュージカルなどの商業演劇ではほとんどの観客がオペラグラスを使用して観劇することが多いんだけど、ロンドンの劇場では最後列の人でさえオペラグラスを使わない。でも、劇とかステージ構成とか演劇の本質を観たいなら本来オペラグラスなんて必要ないはずなんだよね。そう考えると日本では特定の俳優さんを目当てに観劇する人の割合が高いなぁと感じた。それが悪いことかって言われるとそういうわけではないと思うし主もその部類にいるから何とも言い難いけれど、スター性に頼る日本の演劇社会は脆くなってしまうのではと危ぶまれるところはある。

 

あとはストプレの普及率。歌やダンス、派手さではなく言葉の表現に重きを置くストプレは日本ではメジャーな演劇様式だけど、海外ではあまり聞かない。それは海外ではミュージカルの方が主流であることは勿論、地味な演出が多いストプレはわかりにくい要素が多いからなのかなと思った。思い返すと日本のストプレはわびさび感が強い。言葉で巧みに問いかけられるより歌でパンチきかせて観客の心を動かすミュージカルの方が響きやすいのかな。主は西田大輔さんの謎解きみたいな作品が大好きなんだけれどそれは日本人の感覚なのかもしれない(母語が日本語でない外国人にとって日本のストプレを理解するには相当の語学力が必要になる。同じことは日本人にも言えるが)。ストプレ発展の要因はその特徴にあるのかも。

 

また、英語から日本語への翻訳・翻案についても色々な意見が飛び交いそう。たいていのミュージカルは欧米発のものが多いのでそうなると、

①英語劇を英語で本場(英語圏)の劇場で

②英語劇を英語で日本の劇場で

③英語劇を日本語訳で日本の劇場で

の3パターンが生まれる。主たちが日本で受容する英語劇(ミュージカル)は基本③だけど、たまに②のようなパターンもあったりする。ぶっちゃけ母語日本語の日本人にとって英語で作品を理解するのはかなりハード。細かい言い回しとかはやはり日本語の方が把握しやすい。けれども、英語で生まれた作品は英語の方が脚本家の言いたいことが言いたい言葉でつまっているだろうし、ダイレクトに言葉を受け取りやすいのは確か。そう考えると英語って偉大だなぁって思う(演劇オタクが英語を勉強する意味はここにあるのでは)。語学レベルが上がったらいつか主も予習なしで英語劇を観てみたい。


最後に付け加えるとすれば、観劇スタイルがフリーダム(笑)お菓子食べながら観るのもあり、ワインを嗜みながら観るのもあり。幕間にスタッフさんがグラスを回収しにくるくらいなので。曲が終わるごとにお手洗いに立ち上がる人が一定数いるのも衝撃だった。やはりロンドンは自由な街。