ここなっつぴぃす

紡いだ夢の先へ

ミュージカル「Frozen」観劇記録

 

「Frozen」the Musical

@Theatre Royal Drury Lane

観劇日 2023年7月16日(日)

(予定上演時間 2時間半)

1幕 13:02~14:03

休憩 約20分

2幕 14:24~15:13

※ダブルカテコなし

 

 

~本編~

 

あらすじ

話の流れやオチは原作の映画と同じだが、ナンバー(曲)の順番は若干変動あり(後述)。また、幼少期エルサがアナを傷つけたきっかけが、広場で遊んでいたことではなく、ベッドの上で遊んでいたことであるという違いも見られた。

 

 

演出

アナウンスやベルはなしで公演が始まる。上演前も休憩も上演後も常に幕は降りている状態だが、前面のスクリーンにタイトルやアレンデールの景色(オーロラ、雪山等)などが映されている。

 

1幕

2枚の幕が順に上がっていく。1枚目が上がると舞台上が透けて見え、数秒後にもう一枚の幕が上がって公演がスタート。

 

♪ Do You Want to Build a Snowman?  (アナ×エルサ)

2番でもアナの子役は変わらず(原作との相違点)。間奏にエルサのセリフが入るのだが、その際アナと同じところで喋っているものの、エルサだとあたかも部屋の中で喋ってるように見える(アナは部屋の外)=背景のドアが2役を果たしている。

 

♪ For the First Time in Forever (アナ×エルサ)

Do You Want to Build a Snowman? 後わりとすぐこのナンバーに入る。おちサビがエルサとアナのみで、原作通りではあるがミュージカルだから物足りないな…と思っていたらさらにもう一回おちサビ到来。今度はアンダーの方々含め全員で熱唱するという、まさに観客のニーズを満たす演出に心が震えた。

 

♪ Love is an Open Door (アナ×ハンス)

For the First Time in Foreverと少し間が空いて始まる(その間に歌っていなかったのかというとそういうことではなく、原作にはない歌がちょこちょこ各所に含まれている)。歌唱しているのはバルコニーなのだが、歌い終わるとパーティーを楽しんでいる人たち(アンダー)がアナとハンスの周りに来ることで城内の雰囲気に再び戻る。その後大道具が転換して背景は城内に。

 

~エルサの力が城内にばれてしまうシーン~

上手袖からつららが出てきてスモークが足元を覆う。つららはスムーズには出てくるのだが、重さのせいか若干揺れているため良くも悪くも演劇感が出てしまっていた。

 

~オラフが登場するシーン~

天井についているスピーカーからオラフの声が聞こえる。この際、全方面から聞こえるのではなく、下手や上手など一方面のみから聞こえてくることで、子供の興味を引き付けたり、近くにいるのかもしれないという想像力を膨らませてくれる。ちなみに私はオラフの客席降りが来るかと思った(笑)天井が低い理由がこれにて判明した。

 

♪ In Summer (オラフ)

原作と比べるとナンバーの入れ替わりが若干ある。「summer」の標識が上から下がってきて突如始まるオラフソロ。奈落からsummerを代表するパラソルやビーチも登場してあたりは夏感で溢れる。

♪ Let It Go (エルサ)

1幕の締め。1番サビで手袋やドレスがワイヤーにつるされて袖に飛び(手袋は上手、衣装は下手)、2番からは照明とスクリーンを駆使して雪のお城が作られていく。2番サビはあまりパッとした演出がなかったので「こんなものなのか…?」と思っていたら、おちサビで大道具(雪の城内の階段)が登場し、背景のスクリーンから観客席との境目のフレームまで全面を使った雪の演出にわれんばかりの歓声が響いた。歌ももちろん迫力があったが、特に印象的だったのはエルサの動きに合わせて照明や背景がぴったり動くところ。エルサがパッと手を開いたと同時に照明が中央からサーっと消え、暗転して1幕終わる。

 

2幕

~アナが凍ってしまうシーン~

数十人のアンダーに囲まれたかと思ったら、質素な白いドレスに白い布を被ったアナが出てくる。散らばっていたアンダーの方たちはアナが凍った瞬間にアナの後ろに並んで(無作為そうではあるがもちろん立ち位置は決まっている)、この出来事の規模の大きさ、取返しのつかない事態になった危機感を暗示しているように感じた。

 

その他

・開演前には雪山で聞こえるような風の音が流れている=アナ雪の世界観を劇場全体で作り出している

 

舞台美術:大道具の転換のスピード感

秒ごとに大道具が上がったり下がったりするのだが、そのスムーズさに感動した。これだけスムーズに動くのであれば転換が早くてもストレスに感じない。雪山で出てくる橋が非常に長かったので、どのようにして袖にしまっているのか気になった。

 

照明
照明で登場人物の心情を表す演出が面白かった。例を取り上げると、エルサの影。体の前にあるオレンジの影は「開城しました!」という明るい情景・心情(エルサの気持ちではなく、他の人のワクワクした気持ちなのかもしれない)を表現しているが、後方に伸びた白や水色の影はエルサの暗い気持ち・世界観が暗示されている。また、雪の城をアナやクリストフが訪れた際に怒ったエルサの心情を表すべく、氷の柱の下の方が赤に染まっていた(これは原作と同じらしい)。

 

・表で早着替えする場面が何箇所かあり。日本では早着替えといえば舞台袖でしたり、舞台上でしたとしても布で隠して着替えるなど大っぴらにするものではないので新鮮だった(もちろん下に衣装は着ています)。

 

・アドリブ多め。ネタの箇所をたくさん作っている。

 

 

劇場

・座席:ふかふか。座高にも座り心地にも問題はなし。頼めばクッションも貸してくれる。客席は4階建て。今回筆者は3階のグランドサークルで観劇したのだが、袖が少し見切れる程度で支障は特になかった。

 

・2,3,4階席の天井が非常に低い。天井には各所にスピーカーが設置されている。

 

その他

・当日券は有人と無人のレジがある。有人の方に行くと紙チケで印刷してもらえる。当日券は来た順で座席を選択することができ、スタッフさんは前の端っこの座席よりも若干後ろの真ん中の席をお勧めしてくれる。

 

・生オケの演奏あり。ロイヤルオペラハウスほどではないがオケピも用意されている。音響さんの部屋は下手の1階にあり。

 

・オラフは人形をキャストが動かす方式。キャストの方は帽子は被っているが顔は出している。一方スヴェンは頭と前足のみキャストの方が動かしている感じだった。

 

 

~感想~

海外で観劇した初ミュージカル。クオリティーが高すぎた。ディズニーだからかロンドンだからかは定かではないが、お金がかかっていることがよくわかった。客層も子連れ(キッズはエルサやアナのコスプレをしている子もかなり見られる)が多かったので、演劇文化が強く根付いていることを実感する。服装もラフな上、普通の建物に紛れて劇場が存在しているので身近な場所に位置しているのが良い。子供が多いが故に目の前がさえぎられたり(動いているから)、話し声が聞こえたりと落ち着きがない空間ではあるが、小さいうちから演劇に触れることができてなんて幸せななのだろうと思っていた。エルサとアナの幼少期を演じていた子役の子を見て感じたのは「演技の自然さ」。これは日本の子役にも共通して言えるが、小学校低学年中学年くらいの子たちの演技は現実に近くて違和感を覚えない。これが中高生になると思春期の影響かためらいやおどおどしさが見えてしまうのだが、若い子たちは本当に無垢で真っ直ぐな演技をする。小さい頃から鍛えられていたり、観劇経験が豊富だったり教育が違うのだろうな。

 

また、アンダー(アンサンブル)を軽視していない風潮が非常に良かった。ひっきりなしに様々な役にチェンジすることが多いが、役名をもらうことはできない。日本では「アンサンブルの皆さんでーす!」と一括りにされ、衣装も質素なものを用意されることが多いが、この作品ではメインキャストと変わらないくらいの豪華な衣装をまとってのびのびと演技をしていたのが印象に残っている。彼らがいることでアナ雪の世界観に厚みが増し、作品の幅が広がっていることを改めて感じた。

 

そしてなんといってもナンバーとキャストの歌唱力の高さ。Do You Want to Build a Snowman? の終盤とFor the First Time in Foreverのイントロを聞いて涙が出てきたのは、歌声、演出の迫力、そして幼少期母親と一緒に観た記憶が蘇ってきたのが理由だろう。ふと小学生の頃を懐古した。