ここなっつぴぃす

紡いだ夢の先へ

舞台「キングダム」観劇記録

 

舞台「キングダム」

@帝国劇場

観劇日 2023年2月9日(木)13:00 ぴあ貸切

 

(予定上演時間 3時間)

オーケストラチューニング開始 12:27~

1幕 13:00~14:15

休憩 14:15~14:42

2幕・カテコ(トリプル) 14:42~15:59

 

 

~本編~

登場人物

今回観劇するうえで必要な情報を手短にザっとまとめてみました。これさえ把握していればOK。

 

信(高野洸):身分は低くて頭も悪いが、剣の実力は本物。ものすごく単純で真っ直ぐ。将軍になることを夢見る。

漂(牧島輝):信の幼馴染で親友。お偉いさんにスカウトされて王宮に仕えることになる。

嬴政(牧島輝):今作品内では政と呼ばれている。秦の王。後の始皇帝で、中華の統一を果たす(今回はここまでは書かれてない)。

河了貂(川島海荷):信と漂の戦についてく。底抜けに明るい=空気読めない。お金のためなら頑張れる。

楊端和(梅澤美波):山の王(トップ)。政の願いを受け入れて、成蟜の反乱の鎮圧を図る。

壁(有澤樟太郎):政に仕える将軍。奉公心がとても高い。

成蟜(鈴木大河):政の弟。兄のことは大嫌い。王座につきたがってる。

紫夏(朴璐美):政が趙に人質として捕らわれていたところを助ける。しかし、その途中で死す。

昌文君(小西遼生):頭のキレる政の相棒。

王騎(山口祐一郎):政の曽祖父(中華統一を目指していた)に仕えていためちゃくちゃ強い武将。

バジオウ(元木聖也):楊端和に仕える。仮面をつけている。

左慈早乙女友貴):敵。人斬り長と呼ばれているくらいなので、めちゃくちゃ強い。

ランカイ:成蟜のペット。図体で大道具壊しそうなくらいめちゃくちゃデカい。

 

あらすじ

【1幕】

王騎「みんな口では大きなことを言いますが、目を見たらわかる。所詮建前だけなんですよ」

 

時は戦乱の世。とある田舎の片隅でチャンバラで戦う信と漂。その力は互角だが、2人ともとても強かった。そんなある日、王宮からの使者が漂のもとを訪れ、彼を王宮に仕えさせたいと申し出る。自分のみのスカウトに漂は「一日待ってください」と請うが、その話をこっそり聞いていた信は「行けよ」と彼の背中を押す。

 

こうして漂は王宮に仕えることになった…はずだったのだが、王宮は荒れているらしいと噂で聞いた信たちは彼のことを心配する。すると、血だらけの瀕死状態になって漂が帰って来た。漂は最期に、「ここに行ってほしい」と信に願いを託して息を引き取った。

 

信が言われた通りに行ってみると、そこにいたのは漂と瓜2つの少年・政。ここで信は、漂がはじめから影武者として捕らわれていたことを悟る。頭に血が上って政を殺そうとするも、漂の意志を汲み取り政を王宮に戻す役目を果たすことに。この日から信は「政の剣」となった。

 

途中で河了貂に出会ったり昌文君や壁と合流しながら王宮突破の作戦を練る。しかし、圧倒的に軍勢が足りない……そこで彼らは山の民たちの力を借りるため楊端和に会うことにした。最初は過去の怨念から政を殺そうとさえしていた民だったが、信の言葉で状況は逆転する。

 

「死んだ仲間の無念は復讐じゃなくて、そいつの夢を叶えてやることに使えよ」

 

漂を亡くした彼の言葉は確かなものだった。一気に民たちが静まり返ったのでうろたえていると、「うろたえるな。お前にしちゃ上出来だ」と褒めて再び楊端和に協力を願う政。

 

こうして彼らは王宮に向かうのであった。

 

【2幕】

王宮突破の作戦を練る政たち。無知な信は「そんなの勢いだろ!!」と豪語するが、敵軍8万に対し政群はたったの3000。この数を聞いて嘆く信の傍ら、「面白いじゃないか」「ちょうどいい数ね」と余裕そうな政・楊端和。トップたる姿勢とはこのこと。

 

その時、政はふと人質に捕らわれていた幼少期を思い出した。趙に人質として送られ、店の食べ物を奪って飢えをしのいでいた日々。商人らに捕まった彼は腕をもがれそうになった時、「何の迷いがあろう。我々がすることは明白ではないか」と一人の女性に助けられる。その晩、岩に腰かけていると「月はお嫌いですか?」と再びその女性が現れた。彼女の名前は紫夏ーー彼女もかつて救われた身である。紫夏は「月がいつも以上に輝いているのは、くじけぬように励ましてくれているのだ」と政に教えてくれた。彼を命がけで運んでくれる紫夏。ところが道中、政は「痛みを感じない自分が王になれるはずがない。俺の周りには亡霊がいるんだ!」と葛藤する。そんな彼を救ってくれたのも紫夏だった。「しっかりしろ!亡霊なんていやしない!!全部まやかしだ。お前の前には私しかいない」

 

「あなたは生まれの不運により、およそ王族が歩まぬ道を歩まれました……しかし逆に言えば、あなたほどつらい経験をして王になる者は他にいません。だからきっと、あなたは誰よりも偉大な王になれますよ」

 

彼女は秦を目前に命途絶えた。「紫夏ーーーーー!!!」と幼少期と今の2人の政の声が重なる。彼は俯くもすぐ顔を上げ目を見開き、確固たる決意をあらわにした。

 

そんな回想をしていたところを信に呼ばれ、現実に戻る政。彼らは山の民に化して王宮に入ることに成功した。武装を外すタイミングで政の剣を皮切りに次々と敵軍を倒していく。

 

政「間違っても死ぬんじゃねえぞ」

 

しかし、人斬り長の名で知られる左慈を前に苦戦する信・河了貂・壁・バジオウ。壁やバジオウは攻撃を受けて倒れ込んでしまった(幸いにも浅い傷だったが)。それでも政の「勝利は目前だ!諦めるな!」の声で剣を振りかざし続けた結果、信が斬ることに成功する。そうして成蟜の待つ宮殿へと向かう一行。

 

そこには王座にふんぞり返る成蟜(とその取り巻き)がいた。信が大口を叩いていると成蟜はランカイを招集して戦わせる。力も大きさも及ばずに、倒れ込む信。河了貂がゆすってもなかなか起きない。その時に彼の頭によぎったのは、幼き日によく戦っていた漂の姿……に重なった政だった。

 

「……違う、漂じゃない……!!!」

 

「この戦はお前にかかっている!」と叫ぶ政の声で目覚めた信は動きを制されたランカイを後ろから斬る。最強なはずだった愛玩を殺されて焦る成蟜。信から王座を退けられたうえ、呆気なく彼は政に捕らわれてしまった。

 

成蟜「俺が王になるんだ!」

政「金と地位が全てだと思って言るお前に王はふさわしくない」「この戦でたくさんの人が血を流した。お前は人の痛みを知れ!」

と馬乗りになって成蟜を殴る政。成蟜が周りの連中に「政を今すぐ殺せ……殺せーーー!!」と叫んでも彼に従う者はいなかった。そこに王騎も現れたが、政の「中華統一」の夢を聞き、かつて仕えていた主のことを思い出す。「面白くなりそうだ」彼は天にいる主にそう言った。

 

信「俺たちの勝利だーーー!!!」

 

 

信は家と領土を貰って王宮を離れることにしたらしい。政は「明日去るのか」と少し寂しそうだが、また何かあった時は彼を呼ぶことになりそうだ。最後に信の提案で木刀で手合わせを始める2人。両者が一歩ずつ近付き、刀を振りかざし飛ぶところで幕は閉じる。

 

カーテンコール

1回目

・アンサンブル(7人→8人→6人)の後に出演者。基本は2人ずつ出てくるが、政と信はソロで登場。

・挨拶をするとそれぞれ上手と下手にはける。上手勢は信、バジオウ他。一方の下手勢は政、壁、成蟜、紫夏etc(雑でごめんなさい)。

・子役2人のターンの時、神谷晴大くん(幼少期の政役)がワンテンポ早くお辞儀しちゃって慌てて隣を伺う。そのあと藤原詩音くん(幼少期の信役)とキメポーズしてて超可愛かった。

・輝くん、下手から出てきて0番のセンターラインを真っ直ぐ見つめて歩いてくるんだけど、途中少し上を向いて微笑んで前に進む姿がやり終えた役者の顔してて最高でした。

・上手側から中心に集まって来たときに詩音くんの手を取った洸くん紳士。

 

牧島「舞台は一期一会だなって思ってて。僕自身は3回目の公演ですが、Wキャストということもあり今日まで一緒に立ってなかった人がいたことが驚きで、共演者もお客さんもバラバラで、舞台は1回1回違うってことをいつも以上に感じました。その日その日を大切に思ってやってます」

 

2回目

・上手の後ろから洸くん、下手の後ろから輝くんが走ってきて、後ろの方の0番で向かい合ってから前に進んでくる2人。2人で顔合わせてにこって微笑みあう。

・前に出てきたら、手をパーってやって下手のキャストを呼ぶ輝くん(洸くんは上手を招集)。両手精一杯下手に広げてて可愛すぎた。

・美波ちゃんが晴大くんの背中をに手を回して誘導する。

 

3回目

・登場の仕方は2回目と同じ。下手から入場して真ん中に走ってくるまでも、前に進んでくる時も下手にはけるときも洸くんと顔合わせてにこって笑う輝くんでした。

・洸くんの「本日はまことに!ありがとうございました!」の後、輝くんがワンテンポ遅れて「ありがとうございました」って言う。声低い。

 

演出

・上演前まではモニターに岩がたくさん映し出されている。ときどき岩が動き始めたかと思うと、火の色で文字が浮かんでくる(多分甲骨文字)。しばらくすると風に去って消える。下手のフロントサイドライトのところでスタッフさんが照明器具動かしてた。

・幕の最初は照明を壁まで使って世界観に引き込ませる

・1幕始まってから5分くらいして曲が流れるとさらに照明を客席に当てる

・漂が王宮に行った後、彼に追い付くために鍛錬を重ねる信のシーン。舞台上のあちこちを移動する際に、白の明るいスポットライトはもちろん、そのライトの前に青のライト(点)が4つ。大きさは違えど、各所必ず4点なので、なにかこの「4つ」に意味があったり……?

 

・1幕、信・政・河了貂が地下道を通っている時に政が持っていたともし火。火がなびいていたし、煙も少したっていて再現度がとても高いが、あの正体は何だったんだろう…。政が信に捕まれるとすぐ消えたので本物でないことは確か(事故に繋がりかねないしね)。

 

・大道具がとても豪華。毒矢を放つと竹に刺さったり、その竹が割れたり(人の手に当たれば弾性が働いて少し戻ります)、岩が砕けたり(よ見ると糸で繋がっています)。信が住んでた田舎の家も回る。幼少期の政と紫夏が乗っていた馬車も車輪が回ってる。さすが東宝

・物理的に高い大道具が多い。2幕で王宮に入って指揮をとる際に輝くんがめちゃくちゃ高いところ上ってたけど(舞台上の天井つきそうなレベル。2階席より高いかも)、高所恐怖症だったら絶対ムリ。高所恐怖症じゃなくても下見たら足すくむと思う。

・大道具の中でも舞台の半分以上を占めるセットは舞台の奥の方から出てくる。奥行がめちゃくちゃあったので、もしかしたら舞台裏の通路を開けてたり、普段道具を閉まっている場所を解放しているのかも。

・場面転換が頻繁。暗転も多め。暗転から明転するタイミングはかなり早い。

 

パルクールで戦闘シーンを演出。特にアンサンブルの方がめちゃくちゃ動ける人ばかりで、斬られるとバク宙や側宙を華麗にきめる。

 

・生オーケストラだったので、音が良質。

 

劇場

・2階B席でもオペラグラス(双眼鏡)があれば全然見える。客席含めた演出を見たい方はむしろ2階の方が客観的に見られる。

 

・1階のトイレは行列。開演~上演前だったら2階のトイレは並べずに入れる確率が高い。

・幕間の休憩のトイレは地下1・2階を勧められる。この時間は2階も大行列なので注意

・コインロッカーを使う人がかなり多い。

・劇場内はWi-Fi繋がらない。SNS等使いたいならロビーに出るのがおススメ。ロビーに設置されている椅子は低反発でふかふかしてるし(もちろん観劇席もふかふか)、そもそもフロア全体にゆとりのある劇場なので、居心地バツグン。

・劇場の広さとか時間がゆっくり流れている感じは明治座と似てるけど、カーペットや賑やかさが異なる。カーペットは帝劇の方が厚くて(踏む度に少し抵抗してくる感じ←表現が難しい)暗い赤で(赤紫)、明治座は出店があるので終始わーわーしてるけど帝劇はアナウンスや観劇者の声で賑わってる。

・厳かさと歴史を静かに物語るカーペットや柱の汚れ

 

その他

・「終演後にご挨拶あり」と事前にアナウンスが流れる(貸切公演だからかな…他の日はどうなんだろう…)

・「客席に小道具か落ちるかも」と事前アナウンス。「どんな演出してるの!?」って思ったけど、2幕の乱闘シーンはかなり激しく動いてるので衣装の糸や刀のささくれが結構散らばってる。

 

・5分前のランダム影ナレは華優希ちゃん(ナレーション終わった後に名前言うので誰だかわからない)

 

・終演後規制退場がなくてびっくりした。みんな早く出ようとしてつまってた気がする。

 

~レポート~

観劇理由

・中国史×大劇場

・帝劇

・キャスティングが豪華

 

昨年観劇した『MOTHER LAND』(明治座)の影響で、壮大なスケールの中国史が大劇場で舞台セットを動かしながら演出される姿に感銘を受ける。そこで、中国史マンガで有名なキングダムをまずは映画から見てみようかな~って思ったのが2022年2月初旬。そしたらその1か月後に舞台化が決まって「これはキャストがどうであれ観に行かねば」と決意。しかし、蓋を開けてみたらキャストが私得すぎてビビった(8月下旬情報解禁)。膝丸髭切コンビはさることながら、準主演に輝くん、他のWキャストに樟太郎くんや璐美さん、聖也くんもいるし、何より一番びっくりしたのはここにジャニーズが食いついてきたこと!!!オーディションだったらしいけど、大河ちゃんよく掴み取ったね!?ジャニオタ兼舞台俳優オタの主、主命を果たすべく2月は帝劇に居座ることを決める。そんな主に追い打ちをかけるような衝撃的な情報が発表される(9月下旬)。

 

「帝国劇場、2025年に一時休館へ」

 

どうやら老朽化が原因らしい。110年も歴史を紡いできたのだ、未来に継承するためにも改修は避けられないが……色んな思い出が詰まった今の“帝国劇場”がもう見られなくなってしまう。私情を挟むと、帝劇は自担くん(森田美勇人と言います)がジャニーズで活動していた証でもあって。彼は当時確かにここにいた。時々、「彼は本当にジャニーズだったんだろうか」って過去を幻に感じてしまう瞬間があるんだけど、そういうとき帝劇を思い浮かべると彼が踊っていたことを思い出し、改めて“今の森田美勇人”を受け止めることができる。

 

話が逸れてしまったけど、こういうワケで帝劇はとても大切な場所だった。だから、最後の姿はやっぱり目に焼き付けたくて、なんとしてでもキングダムに足を運ぶことを決意(n回目)。

 

感想

まず唱えたいのは、原作まったく知らなくてもいける。主は試し読みで1巻の冒頭を読んだのと、一年前に『MOTHER LAND』の予習で昌平君とか春申君の時代を調べていたくらいの知識だったけど、 河了貂が分からない体(てい)で政が説明してくれるので理解できた。ちなみに、今回のキングダムとマザランの範囲はほとんど被ってなかったけど、嬴政が趙に捕らわれてどうこう…みたいな話はマザランでもあったので、世界線が繋がったような気がして嬉しかった。

 

辛い過去が糧になる

信はどこまでも明るく真っ直ぐで、政は常に肝が据わって堂々としているように見えるけど、ここに行きつくまで色んな経験を重ねてきた。死んだ友の夢を叶えようとする信の中にも、「人の痛みを知れ」と実の弟を殴る政の中にも、彼らに仕える将軍たちの中にも存在する揺るぎない意志。その根端には自身の手で誰かを殺した経験があって、その命をいただいて自分が生きていることを自覚しているところにあるのかなと感じる。

 

戦国モノだから信が漂を失ったり、政が人質にされたり、色んな出来事があるけど、他の史実モノと比べて「死」はあまり描写されていない印象を受けた。壁やバジオウががどんどん倒されていくのに、何にもできなくて河了貂はすごくすごい辛かっただろうな、とも思う。

 

 

政に漂の姿を重ねる信

信の力で成蟜群を鎮圧したと言っても過言ではない今回のストーリー。そんな信の心中に存在し続けているのが「漂を失った悲しみ」。彼は2幕中盤(ランカイに倒されてしまい、漂のことを回想するシーン)まで政に漂を重ねていたのではないかと主は考えている。約束通り漂に託された地図の村まで行ったり、漂が身代わりだったと知って政を殺そうとするも「漂の意志を汲み取らねば」と剣を納めたり、最初信は「漂のため」に動いていた。見かねた政に「漂を弔うのはそれで最後にしろ。ここからはお前の人生だ」って言われ、納得したような顔して自分の意志で戦うようになったけど、ランカイに倒されて回想したときの「違う……漂じゃない!!!」と頭を抱える姿。納得したように見えてても、心のどこかでは「漂のために」という気持ちが働いていたんじゃないかな。そこから徐々に政と自分自身に向き合ってく信。仲間のためにここまで強くなれる彼は本当に強い人だと思う。経験した悲しみは自分次第で良い方向にだって変えられるものなのだと思えた。

 

 

牧島嬴政に落ちる

タイトル通り。輝くんめちゃくちゃハマり役。彼の「目」と「声」が非常に活きるキャラクターだった。もとから輝くんは集中すると目がバッキバキになるんだけど、大事なシーンの手前(殺陣の直前とか)でその目になったら、決意をすごく感じるし、何か思うところがあるのかなとメッセージを受け取ることができるし、ストーリーとアクションの良い切れ目にもなる。輝くん自体声はもともと低いけど、政のときはさらに下げてた。多分限界まで低くしてたと思う(大声出すときはあれより少し高くなるしね。漂との演じ分けもあるからだろうけど)。

 

声で特に感動したのは、紫夏が亡くなるとき「紫夏ーーーー!」って子役の晴大くんとセリフが重なったところ。キャストによって変わるけど、晴大くん演じるチビ嬴政はボーイソプラノ系のハイトーンでかなり高め。一方で牧島嬴政はバス系なので、2人の間には結構オクターブ差が存在する。うだうだと何が言いたいのかというと……現実的に見る声変わりパターンと近くて切ない気持ちになる!!!佐藤の流司くんとかみたいに幼少期ハイトーンだった子に限って声変わりするとめっちゃ低くなるみたいなパターンって、過去の天使時代思い出して切なくなるというか(チビジュオタの本領発揮)。どんなに高い声を出そうとしても成長した政が幼き日のエンジェルボイスを取り戻せることはないので、そんな諸々の思いがストーリーと重なってより切なくなる。全体のストーリーを見てもこのシーンが一番涙を誘うところ(成長した政が自分の左足で紫夏の身体を支え手を重ねているのも良いよね。逞しくなった証拠)だけど、この「声」がさらに切なさを強調していて良かった。

 

演じ分けといえば、漂と政の区別が絶妙で良かった。漂のときは無垢な笑顔で声色も高いんだけど、政になるととたんに目つきが変わって真っ直ぐ前を見据えるようになる。見た目は瓜2つでも違う人間だからもちろん性格は異なるわけで、でもだからと言って声色や表情などの上っ面を変えただけでは政を完璧に伝えきれない。小関嬴政は拝見したことがないのでわからないけど、牧島嬴政からは内なる「俺は政だ」という圧を感じたし、佇まいも台詞のスピードも重厚感があって、台詞がないシーンでも一つ一つの細かい動作で政を演じきっていた。これらは全部本人の中でしっかり漂と政のキャラクターを作り上げており、その意志に基づいて自然と身体が伴った結果だと思う。

 

もちろん、天井届きそうなくらい高いセットの頂上に立って群を指揮する政もかっこいいけど(このときの照明がカラフルで綺麗だった)、一番好きだったのは合流地点に着いてすぐ倒れてしまった信を「一晩で親友を失って、ここまで来たんだ。疲れるのも無理はないだろう(ニュアンス)」と言って、彼の手を引っ張り自分の首に回しておんぶして階段に置いてあげるところ。政の優しさが滲み出てるし、信のことを大切に思っているのがよくわかる。

 

 

舞台「キングダム」は極上のエンターテイメント!

総じてこれに尽きる。2.5次元俳優、ミュージカル俳優、アイドル、声優色んな界隈の次世代を担う役者のキャスティングに加え、原作の支持率の高さが話題性を呼び、情報番組での特集やナカサチさん(衣装)の密着をはじめとする宣伝効果、さらに帝国劇場というブランドが拍車をかけて公演の知名度が格段と上がった。舞台は映画などの映像媒体と比べて敷居が高いため足を運ぶことにためらう人も多いけど、公演の評判を聞いて気になっている人も増えていると聞く。ましてやキングダムは映画化もされているのでそこから舞台に興味を持ったファンもいるかもしれないね。ありとあらゆるファンが集まった結果、観客層は小学生からご年配の方とかなり広かった。ちなみに、政と信、河了貂以外のキャストの出番はかなりムラがあります。そういう時は是非推し以外の役者のお芝居や演出にも注目してみてください。

 

余談ですが、ジャニオタ兼舞台俳優オタの主なので、ファンの方がロビーで一緒に写真を撮ってるグッズ全部どこのものかわかってしまった。よく見かけるのは大河ちゃんのアクスタやジャニショの写真だけど、膝丸髭切のぬいもいれば、今回のグッズのアクリルカードを出してる人もいるし、Endless SHOCKの広告の前で佐藤勝利くんのぬいと撮ってる人もいた。こんな風にオタク観察してる主の真後ろではエーステと荒牧さんの話で盛り上がってる。十人十色。(余談終了)

 

役者はもちろん、初見の人でも理解できる脚本。原作を知っている方はそれと照らし合わせながら観てみるのも面白いと思う。特に締め方が明るくて素敵だった。あらすじでも書いたように、ラストは信と政が手合わせをするシーン。本編では直接戦わなかった2人が目をキラキラさせて剣を振りかざした画に未来を感じた。2人がいれば夢だって現実に変えられる。さらに、この時の「ジャンプしている途中で照明が落ちる」という演出がめちゃくちゃ良かった。実際に手合わせするシーンが描写されてたら「やっぱ2人とも強いなー」で終わったと思うんだけど、この“中途半端”なところまでしか提示されなかったからこそ、観客はその先を想像したくなる。演劇の持つ「想像力」という力を上手く活用した締め方だった。1幕最後にはクスッと笑えるシーンも用意されてて良い(山の民→信「お前が言っても説得力ないな」)。

 

そして豪華な演出。劇場の大きさに飲まれない大きくて高い舞台セット(ランカイはセットに含まれるのか…?とりあえず大きかった)、それらの大移動(大劇場の見どころ)、スケールに見合った照明の使い方。セリは死んだ人を運ぶときと地下道に行くときに階段として使われていて、特に漂や紫夏が倒れる時にしっかりそのセリ内に収まって倒れたのはお見事でした。少しでもズレると大怪我になりかねないからね、観客は内心ヒヤヒヤです(もちろんセリは小さい光で囲まれてるので役者もしっかり把握できるだろうけど)。衣装はナカサチさんなのでもちろん素敵。2月7日放送の『セブンルール』(フジ)でナカサチさんの密着映像が流れたんだけど、改めて一人一人の役者に合わせた素敵な衣装を作ってくださる方だと確信できた。結成当時から今日まで7ORDERの衣装を担当してくれていたのでもともと信頼していたんだけど、制作過程を見ることで初めて知ったことがたくさんあったし、改めて手間暇かけて作ってくれていることもわかった。今回はほとんど輝くんのことを追っていたので政の衣装の話をすると、動く度になびく裾や殺陣の際に邪魔にならない程度の袖の開き具合でより政が華麗に見えた。

 

 

 

出演者の印象

高野洸くん

初見:ヒプステ1

よっアキラ✋ってノリで勝手に親近感抱いてる俳優さん(私と、じゃなくて顕嵐ちゃんと)。終始目がキラキラしていて、成蟜に勝って「俺たちの勝利だー!」って剣を掲げていた姿がめちゃくちゃ主人公だった。漂じゃなくて信だってわかったとき(左慈と戦ってたとき)の表情の変化が巧み。宏規くんが「洸は主役が似合う」って言ってた意味がわかった気がする。左慈と戦っているときに蹴られて10段くらい落ちるシーン、キマってた(主はこの演出を勝手に「Endless SHOCK」と呼んでいる。理由は簡単。毎作光一さんが階段落ちしてるから)。漂の死際、全身で彼のことを受け止めて耳を傾けるシーン、迫真の演技で良かったよ。

 

牧島輝くん

初見:刀ミュorあそびば

牧島嬴政に関しては上記しているのでここでは少しだけ。見方によったらもはや政が主人公ってほど出ずっぱり。もはや主人公はフォーキャスト。良い役どころもらったねぇ。大河ちゃんに跨ってパンチするシーン(推しと推し界隈の共演)の説得力半端じゃない。漂時代に手をパーにして上手にガンダしてく輝くん(王宮に仕えることが決まって「行ってくる!」ってなったところ)、無邪気で可愛かった。時々触角を耳にかけたりしてたけど…気になるのかな。いつもはスッキリしてるもんね。

 

川島海荷ちゃん

初見:ZIP

朝はZIPに育てられた幼少期だったので、ZIPの印象がめちゃくちゃ強い(むしろそれしか知らない)。明るく元気にぴょこぴょこと河了貂を演じてました。

 

梅澤美波ちゃん

初見:キングダム

生まれてこのかた女性芸能人にハマったことがないので今回初めて名前もお顔も知りました(さすがに乃木坂はわかるよ)。全役の中で一番ビジュ良かったと思う。美波ちゃんの茶髪編み込み最高でした。最初ボイスチェンジャーか何かでコンピューターの声出してた時は誰だかわからなかった。カテコで晴大くんのこと支えててすごい良い子なんだろうなって思ったけど、初日は乃木坂ファンの迷惑行為が問題になってたな……他にも色んな違反あって公式からアナウンスが流れるほど。界隈には界隈のルールがあるけど、こういうのは「郷に入れば郷に従え」だからね。

 

有澤樟太郎くん

初見:アクターズリーグ2021

まだ舞台界隈無知だった2021年、アクターズリーグでウチの阿部顕嵐様と共演していて(ベンチも隣)さらに後夜祭でめちゃくちゃ目立ってたのでそれでお顔覚えた。その3か月後にサクセス荘でお芝居に触れる。生のお芝居は今回が初。壁の最初のシーンは政と合流するところだったんだけど、周りの武将と恰好が似すぎてて台詞言うまで樟太郎くんだってわからなかった。

 

鈴木大河くん

初見:?

初見もどうも守備範囲のジャニーズなので(担当外だが)だいぶ前から存じ上げている。昨年のキスマイのライブぶり。一人浮かないかなぁとか心配してたけど、ジャニーズ感消して見事にヒールに振り切ってた。1幕は王座にふんぞり返って奥から登場してくるだけだったんだけど(この奥からスーってセットが押し出される演出が非常に豪華で好きだったり)、その数分の間にしっかり印象残せてた。ただ、今回は牧島嬴政をメインに追っていたので出番が被ったら大河ちゃんのこと全然見れなかった…申し訳ない

 

朴璐美さん

初見:ミュージカル『October Sky』

紫夏は璐美さんじゃなくちゃダメってくらい、貫禄あるあの声色声質大きさ全てがハマってた。やっぱり璐美さんのお芝居大好き。人を諭すシーンでの迫真の演技が素敵。安定感ハンパないので、璐美さんがキャストにいたらその作品絶対安泰。

 

早乙女友貴さん

初見:キングダム

「早乙女ってもしかして…」って思ったらあの太一さんの弟さんだった!やっぱり!!左慈が登場すると威圧感がすごい。

 

元木聖也くん

初見:タンブリング2021

やっぱり身体能力高かった。彼は絶対パルクール枠で呼ばれてる。タンブリングで存じ上げて以来なんだかんだゆるーく活動を追っていたんだけど、髙地くんをはじめとしてわりと好きな俳優さんと共演していたので、きっとそのうち会えるんだろうなって思ったら案外早く見れた。いつもより声低いし仮面もしていたので、カテコまでわからなかったことはここだけの話。仮面外したときに「そっちーーー!?」って思わず叫びそうになりました。ずっと成蟜の近くにいた将軍かと思ってた…。本人のツイートで使者をやっていることも知る。観劇後の帰り道、ふと「聖也くん、アキラと共演するのはもしかしてタンブリングぶりだったのでは…」って思うと急に懐かしくなった航南メンツ(今じゃすっかり売れっ子の綱くんもいたなぁ)。

 

小西遼生くん

初見:キングダム

小西成弥くんと小松準弥くんと小西遼生くんがいつもこんがらがる(つい数ヶ月前はそこに稲垣成弥くんもいた)。昌文君いたらなんとかなる気がする。

 

山口祐一郎さん

初見:キングダム

貫禄がすごかった。めちゃくちゃ声通る。

 

藤原詩音くん

初見:キングダム

演技がとても上手だった。この子は伸びる。


神谷晴大くん

初見:キングダム

めっちゃ聞き取りやすい声。最初のシーンで少し裏返ってしまっていたの可愛かった(気にせずそのまま進めたの偉い!)。