舞台「はじまりのカーテンコール~yourNote~」
@六行会ホール
観劇日 2022年12月7日(金)17:00
公演 17:00~18:55
アフタートーク(植田×安西) 19:00~19:15
本編
あらすじ
田舎の高校に通うゆうき、つとむ、りょうは幼馴染。17歳という進路を迫られるその頃、つとむは県大進学、りょうは役者の夢を志していた。一方でゆうきは実家の酒屋を継げと父親に言われていたことから夢を持っておらず、2人にどこかうしろめたさを感じていた。父のまさしは「お前は一足先に社会人になって自分で稼いだ金で生きていくんだ。だから今のうちにだらけててもいいじゃないか」と言われて「そうか...そうだよな」と納得するもどこか表情が曇っている。
18歳の夏。いつの間にかクリスマスもお正月もバレンタインデーもホワイトデーも過ぎ去っていて、時間の早さに驚くゆうき(免許証は持っているはずなのに、教習所の記憶がないらしい←時間の都合上そこはカットされてるので当たり前)。つとむは塾通いの日々、りょうは東京にオーディションを受けに行くことになった。夜行バスのロータリーまでりょうを見送る一同。出発ギリギリまで「東京ってセミいるのかなぁ」「セミって耳あるの?」「Wi-Fiで制御されたセミが大量にいてスピーカーから泣き声が聞こえる!に200円!」などとふざけていたけど、それぞれ寂しさを胸に抱えていたんだろうな...。まさかこれがりょうとの最期になるとは誰が想像したことだろう......
その日の天気は土砂降りの雨だった。オーディション、ワークショップを終えて観光も予定していたたが、雨がひどいので諦めて遠回りして帰るだけにしたりょう。しかし、その道中でスリップした車にはねられ帰らぬ人となる。
ゆうきはその訃報を、頭では理解していても心では理解できなかった。
「いるのが当たり前だったからさ...なんか...実感が湧かないっていうか」
そんなゆうきとつとむに、りょうの兄・るいが1冊のノートを渡した。
「お前らが持ってるのがいいから。俺さ、あいつに期待してたんだよ。役者になるために色々考えててさ...あいつは成功するやつだったんだよ、近くで見てたからわかる。あいつが夢叶えたら俺も変わるきっかけになるかなって。でもさ、あいついなくなっちゃってさ......なんでかな...期待してたあいつが死んで落ちこぼれの俺が生き残っちゃってんじゃんって..」
結局そのノートはゆうきが引き取った。大学受験を控えているつとむにとって、荷が重すぎたからである。そこには彼が夢を叶えるためにしてきたこと、気付いたことが記してあった。しぐさを言語化したり、感情表現の仕方だったり、ゆうきの知らないところでりょうは役者になるための努力をしていた。感銘を受けたゆうきは、りょうの意志を受け継いで自分が役者になる決意をする。
「あいつの思いをなかったことにしないために。俺があいつにできることってこれくらいしかないから」
しかし、父親がなかなか許してくれない。東京行きは認めないと、地元の劇団のチラシを渡して、酒屋で働きながら役者をやることを勧める。それでもゆうきは諦めず、父親に向き合って「挑戦させてください」と言い続けた。
つとむ「本気で目指してるんだ...多分だけど目つきが違う。本気になったゆうきの目だよ」
その情熱を汲み取ったまさしは自分が過去に役者を目指していた時期があったこと、結局挫折して今の自分があることを話した。
最後は父親に背中を押してもらい、ゆうきは東京に出ていくことになった。人生を賭けた4年間が始まろうとするーー
「つらくなったらいつでも帰ってきなさい。俺が見れなかった夢の続きを、母さんにも目せてあげてください」
まさしは手紙にお金と母親の形見であるネックレスを同封して彼を送り出した。
辿り着いたの世界・東京では、バイト先で同じ役者の夢を目指すタケルと出会う。
ゆうき「これはあいつの夢でもあるから。だから俺は2人分頑張らないといけないんです」
タケル「だからって焦っても良いことねぇぞ」
ゆうき「あいつが正しかったって証明しないと前に進めない」
いくつものオーディションを受けては落とされを繰り返す日々。しかし、小さい芸能事務所の社長・ウエマツさんに情熱が買われて、2人芝居の作品にスカウトされ初舞台を踏めることになった。
ノート通りにやっても上手くいかず、共演者のなつきさんには腹を立てられ、タケルさんをはじめとするバイト仲間には無視され続け、自分を見失ってしまったゆうき。彼は誰にもこの思いを吐くことができず一人で抱え込んでいた。
「やればやるほどテンパって、一歩歩くだけで怖いんだよ」
そんな行き詰っていたゆうきのもとに、就活で東京に来ていたるいが現れる。「なんか悩んでるのか?」と聞かれても何も吐き出そうとしないゆうき。るいは「俺がノート見せたからだよな」と自分の行動に責任を感じていた。
ゆうき「やりたいって思ったのは俺だからさ」
るい「一人で抱え込むくらいなら帰ってこいよな。誰もお前を責めたりしないからさ」
ゆうきの実力不足のあまり公演中止の話が持ち上がるほかに、電気代未滞納の紙が届いて、彼は追い詰められていた。金銭的な貧困が人間を精神的にも挟撃する。まさしからもらったお金を取り出して「こんなんに使うもんじゃない…」と首を振る。
そんな中久しぶりにつとむから電話がかかってきた。
つとむ「用事なくちゃ電話しちゃだめ?」「この前るい兄ちゃんから聞いてさ...なんかあったら連絡くれって言ってんじゃん」
ゆうき「…なんか甘えちゃいそうでさ」
大学では成績不振で苦労していることを打ち明け、話せて気が楽になったと言うつとむ。彼がゆうきの厚い壁を崩したのかもしれない。
つとむ「親父さん見かけたときは元気そうだったけど、なんか小さくなったな。一人で暮らしてるし仕事も一人でやってるからな」
「あいつの目に俺は負けたの。一人の大人だった。もう子供じゃないんだよな。俺のもとには置いとけないなって」
「つらくなったらいつでも帰ってきなさい。それは逃げではなく次への挑戦なのだから」
父親の言葉が蘇る。
つとむ「泣いてる...?なんかつらいことあった?」
「なんでもない」と笑って誤魔化そうとするゆうき。しかし、幼馴染の目は破れない。
つとむ「うそ、泣いてんじゃん」
ゆうき「......よくわかんない......!」
つとむ「ゆうき、もう帰ってきなよ。そこまで追い込む必要ないって。もう抱え込まなくていいよ」
ゆうき「….…俺もうちょっとだけ頑張ってみる...」
つとむ「そっか…2人芝居どう?共演者の人とは?」
ゆうき「なんとか…」
つとむ「正直に!」
ゆうき「……上手くいってない……!」
つとむは物怖じしない行動力を使えと、なつきさんとしっかり話し合ってみることを勧めた。
この電話で前向きになれたゆうきは、なつきの行きつけの居酒屋へ足を運び、彼の生い立ちやなつきがこの舞台を上演させたい理由を聞く。彼らは互いに言葉足らずで、焦っていたがゆえに相手に目を向けることが出来ず、空回りしていただけだった。語り合って以来、心が通じ合った彼らは無事に稽古を重ねて本番に漕ぎつくことができた。
ゆうきはこの苦境を乗り越えたことで、ノートに書かれていることの意味を次第に理解していった。
「これは2人がかりの挑戦だ。夢の続きを見せてやるんだ」
「演技に厚みが増したのは2人分だったから」
まさしやるいのもとには「父さんが反対した理由がこの一年だけで痛いほどわかりました」という手紙とともに舞台と電車のチケットが届くいた。
迎えた千秋楽。これまでずっと繰り返してきた台詞のはずなのに、頭が真っ白になってしまうというハプニングがゆうきに訪れる。もう自分はダメなのかもしれない…と頭を抱え始めた彼に重なったのはりょうの声だった。再び、自分は2人分背負っていることを思い出したゆうきは、カーテンコールに行き着くことができた。
父「俺は、カーテンコールは終わりじゃない次の始まりだと思ってます。今の景色を忘れずに、また新しい景色を進んでください」
「ようやく始まったよ……俺たちの物語!!!」
カーテンコール
翔太くん挨拶→(日替わり)河原田くん
河原田「振るなら言ってくださいよ~」
和泉「ごめん、俺たちは知ってた(笑)」
アドリブネタ
・りょう・るいの親父は長渕剛さん似。怒ると怖い。
・何かを見ていた(何かは忘れた)ゆうきのところに、父親が現る。
父「なーににやついてんだ??またエロ本か?」
と椅子の後ろに隠してあったコミックを拾う。
父「なんて言うんだよこれ?」
ゆうき雑誌名を挙げる(名前忘れた)。
ゆうき「ちょっとエッチなやつ入ってんだよ」
・「(父親とは)普段はエロ動画見せ合う仲なんでしょ?」とつとむだかタケルだかに言われるゆうき。
・酔っぱらってるいにかつがれながら歩くまさし。舞台セットの段差を見て、
まさし「どぶ…?」
るい「何言ってんだよ階段じゃん。いつも通ってるじゃねぇか」
・囚人と監獄の千秋楽が終わった後
つとむ「あの共演者さんも良かったなぁ」
るい「へぇ…(二ヤリ)どんなところが?」
つとむ「(苦笑しながら)芝居が上手い、爽やか…」
るい「内面はどうなんだよ、内面は!?」
つとむ「素直そう(照照照)」
アフタートーク(植田×安西)
ふざけまくるしんたくん。自己紹介を促されて「りょうでーす!あ、松田凌でーす!」ってボケたり(植田「違うやろ!」)、座ってと言われてイスあるのに地べたに座ったり、立ってと言われてイスの上に立ったり。
植田「絶対にやると思いましたよ!!!」
安西「色んな言葉が刺さるよね。俺もあそこまでではないけど色々あったな…って思いながら。電気代の未払いとか!」
つとむと電話しているときに吐いた「わかんない」っていうゆうきの言葉がめちゃくちゃ良いよねって話。あの一言に全部詰まってる。
安西「初めて舞台に立った劇場がここで、当時はとにかく情熱しかない状態なんですよ。具体的にどうこうよりも『俺はなるんだ』っていうそれだけ。それをこの劇場に来て思い出しました」
冒頭の翔太くんの長渕剛アドリブ。
いつもは自分が回収してるけど、いじわるしたくなって今日は翔太くん本人に「回収しろよ!」って言ったしんたくん。
(確かに翔太くんめっちゃ笑いながら少し困ってた笑)
しんたくん療養期間を経て。
安西「実はこのお話をいただいたとき、僕療養期間で、長期間療養生活していまして、そのときに…」
涙ぐむしんたくん。
植田「大丈夫だよ」
安西「そのときに声かけてくれて……あ、これ演技ですよ?」
笑いにつつまれる劇場。
安西「それが凄い励みになって」
植田「結構頻繁に連絡も取り合ってたしね」
安西「今でもすごいありがたいし励みになったなって」
植田「それ芝居だったら上手すぎだよ?」
安西「じゃあ俺上手いのかもしれない」
植ちゃんの演出家感
植田「まだストーリーももっともっと成長してくんじゃないかなって」
安西「楽屋とかで圭輔が」
植田「おい!!!呼ばんやろ普段!」
安西「笑。植ちゃんがモニターで、自分の子どもを我が子を見るような目ですごい優しい顔で見てくれて。それがなんかすごく感動して」
植田「嫌だなー話だけ聞いてたら吉田に鋼太郎みたいじゃん」
アドリブが行き過ぎてる話
植田「自分達で遊んでほしい箇所が何ポイントかあるんですけど、なんかオーダーしてないところまでそうなってて。お父さんの『何にやついてんだ』のところ、『エロ本読んでんな』とか、なんか究極に滑ってから本編戻ってるんですけど!?」
安西「人ってやっぱり人がいるから生きてけるし、でも人がいるから傷つくこともあるし。生きてくうえで何かを取って何かを捨ててくのって大事ですけど。なんかこの演劇っていうものは病気を直接直せるわけじゃないけど、でも人間の本質的な部分を演劇の力で直せるんじゃないかなって思ってます」
植田「物語自体はすごくベタ中のべタだと思いますけど、でも僕はベタを本物にするのが楽しいなって思いました。公式からもアナウンスあったように、DVD化する予定がございません。まぁでも本来そういうものだと思いますし終わるからこそ忘れたくない思いが生まれるのかなって思います」
劇場(六行会ホール)
・キャパはかなり狭い。でもその分後列でも見やすい。コンタクトつけて視力0.6の女がL列からでも肉眼で役者さんの表情を確認できるくらい。
・座席の高さ文句なし、座り心地も柔らかすぎず固すぎずでちょうど良い
・マイクの響き方は微妙(嫌に響くというか。これは演劇専門の劇場じゃないので仕方ない)。マイクは入ってたけど、ほぼ地声状態。でもキャパが狭い分聞き取りやすい。
・混みあっていると、男性用のトイレも解放してくれる
・写真撮るスポット少なめ。入口のところは検温消毒があるので、撮ってる時間がほとんどない。しいて言うなら劇場内のポスター。
観劇動機
・今の自分が最も摂取するべき演劇だと思った
・植ちゃんの初演出作品
・翔太くんの演技を拝見してみたい
実はこの作品を観劇することを決めたのが2日前。植ちゃんが演出家を務めるということで話題になってたから存じ上げてはいたけど、本来観劇する予定はなかった。しかし、現在私自身が置かれている進路選択の道において何か背中を押してもらえたり、新たな発見を得られたり、自分と向き合うことができるかもしれないと思って劇場に赴くことを決断。あとは『忘華』での翔太くんの演技がすごいという声をたくさん聞いていたので、どんなものか知りたかったという好奇心。これについては「出演者の印象」で後述します。
登場人物
ゆうき
まだ将来のことを考えていなかった時期、笑顔で誰かを応援してたゆうきだったけどその裏ではすごい葛藤してたんじゃないかなって思う。定められた未来だから目標に向けて努力するとかよくわからないし、「頑張れ」って声かけても「努力したことねぇやつが簡単に言うなよ」ってなじられたり。でも、それをわかったうえで「頑張れ。お前ならできるよ絶対」って言えるゆうきって本当に強くて、仲間思いで、こんな優しい人なかなかいないよ……
もうひとつ彼の強みといえば、自分から他者に向き合って話ができるということ。父親に夢を話したときも諦めず自分で解決策を考えて掛け合ったり、嫌われてるって知っていてもなつきさんに自分から私的な話をしたり。辛くても苦しくても逃げずに戦い続けるゆうきの姿は全人類の背中を押してあげられると思う。
彼の人生は「目」「眼圧」(正確に言うと眼圧とは言わないらしいけど、気に入った表現なのでここではこう記しておく)に表れていると思ってる。つとむやりょうにもよく指摘されるように眼圧が強くて、その強さにまさしも負けたくらい。その目には真っ直ぐな彼の思いが宿っていて、一見純粋さに溢れてるんだけど、その奥には彼が抱えるりょうをはじめとする地元の人たちの思いとか、葛藤とかが詰まっていて。東京に出て日に日にくすんでいく彼の目は夢を見ていた時の彼と違くて、夢を追いかけて東京に来たはずなのにどんどんやつれていく姿は見るに耐えなかった。それなのに「俺がまだノートに届いてないだけだ!」とか自分を追い詰めちゃうから、気付かないうちに一人じゃ抱えきれない範疇にまで達していて、るいと再開しなかったらつとむが電話かけてくれなかったらどうなってたんだろう…って考えると怖い。
一番胸を締め付けたのは、ゆうきがつとむに吐いた「……わかんない……!」って言葉。たった5文字だけど、その中にプレッシャーや自分へのやるせなさや絶望や一人で抱え込んできたもの全てが含まれていて、しゃくりながらゆっくりした口調で吐き出されて、伝えられる人がいて良かったって思った。言語化の練習たくさんしてきたけど、言語化できないことだってそりゃあるよね。当時の自分と向き合うことがゆうきにとっては過酷すぎて、色んな感情がごちゃ混ぜになって出た「わかんない」なんだろうな。
最後、頭が真っ白になるもりょうのおかげで乗り切ったシーン、2人の声が重なったところは号泣した。改めて2人分であったことを思い出して、色んな荷を背負いつつも千秋楽を終えられて本当に良かった。あなたのその頑張っている姿は、あなたが思っている以上にたくさんの人に刻まれているよ、影響を与えているよ、って伝えてあげたい。
りょう
りょうの言葉には学ぶべきことがいっぱいあった。
・今日は言語化って考え方を思いついた。条件を言語化して再び実践すれば奇跡は偶然ではなくいつでも引き出せる。
・首の傾け方だけで色んな演技の選択肢が生まれる。呼び止められて普通に振り向くと警戒心がない。でも顎を引いて顔だけ傾けると警戒心が引き出せる。同じ行動でも条件次第で表現が変わるんだ。
・対話と距離感を意識
・2人のがっかりしたが浮かなければやり切った証拠だ
・オーディションは実力だけが見られているわけじゃない。実力のある人が欲しければ実力のわかっている人を選べば良い。可能性が見たいんだ。だから正直に、前向きに挑め。
とりあえず私も、小さな出来事を言語化するところから始めてみようと思った。彼は自分の弱さにも向き合える強い子だったんだなって思う。
そんな彼の最期はなんとも彼らしくて、るいが言っていたように最後の最後でヒーローになる夢を叶えた。たしかに庇い方おかしいと思ったんだよな…なんでわざわざ自分から飛び込んだんだろうって。なるほど、りょうらしいね、って思える最期を迎えられてりょうは幸せだったのかな。
ただ、りょうはりょうで自分の思っていることは口にした方が良かったのにって思った。「明日が来ない今日もある。だから今日の思いは今日伝えないと」って言葉がぴったりすぎる。幼馴染2人のために夢叶えようとかどこまでも無垢で健気な姿を、もっと見せても良かったんじゃないかなって。
つとむ
ゆうきの心の支え。受験勉強中は自分のことで精一杯でゆうきのことを気遣ってやれなかったけども、本来は仲間の心中に敏感に反応できる良いやつ。
まさし(父親)
男手ひとつでゆうきを支えてきた。誰よりも近くで成長を見てきたからこそ、「今日は何か嬉しいことがあったな」「今日は浮かない顔してるな」とか悟って声を掛けてくれる。逞しくて頼れるパパだけど、途中お母さんに「俺一人でなんとかできるかな」って弱音吐いたり、まさしはまさしで陰でもがいてたりして、悩まない・苦しまない人間なんていないんだなって思えた。それを乗り越えるからこそ、その先に見える景色が綺麗なんだろうな。「一人の大人だった。もう子供じゃないんだよな。俺のもとには置いとけない」っていうセリフ、全親子に届けたい。
父「たしかに、ショックだろうけど、自分の人生を生きないとな。りょうの分も」
ゆうき「あいつの人生ってさ...無駄だったのかな...」
のシーンは切実すぎて、18歳の高校生が背負うには重すぎる現実だけど、その背中を押してくれるパパも辛いんだよきっと。
「つらくなったらいつでも帰ってきなさい。それは逃げではなく次への挑戦なのだから」
「いつの間にか諦めることが正しいって思ってたのかもしれないな。あいつがさ、そうじゃないって教えてくれた気がしてさ」
ってパパはずっとゆうきの夢を応援してくれているんだよ。
るい
りょうの兄。りょうやゆうきを東京に送る時、幼馴染と一緒にずっと傍で見守ってくれて、頼れるお兄ちゃん感。アー写の儚さが苦しい。
なつき
「大事なのは“ルール通り”じゃなくて、“応用”なんじゃね?」
「ゆうきは技術もなにもない。だから必死に向き合うしかない。俺はお前の目の強さに気付いた。絶対諦めないってその意志が伝わってきたんだよ」
とか素直な人ではないけど、ゆうきに大切なことを教えてくれる2人芝居の共演者。
感想
将来への不安を抱えている人、中高生、生きる意味を探っている人に是非観てほしい作品。
ストーリーは笑い 2(アドリブ箇所):涙 8 のテイスト。一気にバーって泣くよりは、何回も山があってその度にツーって涙が出てくる。でも、この作品において泣く箇所は観客ひとりひとりが経験してきたことによって異なるのかなって思った。年齢を重ねているからこそ意味が分かる言葉もあるだろうし、未熟だからこそ共感して感極まる場面もあるだろうし。
現役JKが前に進めた話
約2時間、終始ゆうきに自分を重ねて見ていた。夢を追う姿、そこに立ちはだかる大人という名の厚い壁、理想とはかけ離れた現実への絶望、一人で抱え込む辛さーーゆうきの苦悩をタイムリーに全て理解できてしまうから切なくて苦しい。でも、その抽象的な感情をゆうきが言語化して届けてくれるから、自分がどうして今辛いのか改めて向き合うことができた。
自分の夢を追いかけるか、自分を犠牲にして周囲の意志を汲み取るか。どちらが正しくてどちらが間違っているかなんてわからないし、各々の価値観で判断するものだからその選択肢を否定することはできないけど、どうか若き世代にはガムシャラに夢を追いかけてほしいって俯瞰的に思った。「若いならまだ失敗できる」「若いうちに失敗しておけ」「若いうちにたくさん経験を積んでおけ」よく聞く言葉だけど、若いってとても大きな武器で、りょうが言うように失敗さえも自分の幅を広げるうえで大切な材料だから、私もまだ諦めないでみようって思えた。ストーリーにインスパイアされまくりだけど、演劇って人の心になにか残せる媒体だと思うから。私も今はとりあえず影響を受けるがままに頑張ってみようって決意できた。
演劇ってその時期その瞬間にしか成立しなくて、円盤化したところで作品や演出は残るけど劇場でしか感じられない熱や思いを受け取ることはできない。だから、演劇作品に出会うことは運と縁とタイミングであり、素晴らしいことだと思っている。このタイミングで上演されている作品が何十、何百とある中ではじカテを観ることができたのも一期一会。儚いけど、その儚さがより演劇を好きにさせてくれる。植ちゃんをはじめとしてキャストさんスタッフさん一同に本当に感謝したい。
ベタ中のベタって植ちゃん自身も言ってたけど、ぶっちゃけ話の内容は本当にベタ(冒頭でりょうがあっけなく亡くなるのは想定外だったけど)。でも、ベタがベタって言われるのって上演され続けているからであり、ずっと上演されてるっていうことは常に誰かの心に届いていているということでもあり。今回は私自身の心に刺さる言葉が散りばめられていた。ベタだからこそ欲しい言葉を言ってくれて欲しい結末を用意してくれて、それで前向きになれる人がいるなら、ベタを上演し続けることって大事だと思う。劇場には制服を着た自分と同い年くらいの高校生も数人いて。彼女たちの心にも何か刺さる思いが届いたのかなって考えてた。
親としっかり向き合い続けること、友達の声に耳を傾けることを忘れないでいようと思った。子どもは常に親に嫌われることを恐れていて、突き放されるのが怖いから迎合して自分の夢を自分の手で潰してしまっている部分が少なからず誰にでもあると思う。でもそれは結局自分のためにならないし、夢を追いかけるのを諦めたことはそのうち後悔する。だったら早いうちに親にやりたいことを話して、身内を味方につける方が良いなって、ゆうきとまさし親子を見て感じた。ぶつかることを、否定されることを恐れてはいけない。まさしも頭ごなしにゆうきを否定しているわけじゃなくて、息子に幸せになってほしいから反対してるんだよね。ただ、その心配が子どもを追い詰めたり、親に否定されたと思って自信を無くすことにも繋がるから、反対する理由があるならあらかじめ話しておいてほしい。
それと、持つべきものは友達。人生友達の数で決まるわけじゃないし、狭く深い付き合いの何が悪いの?って人類に訴えたい。もちろん、色んな人を知っていることはその人の経験値を豊かにしてくれると思う。でも、いざ自分が辛くなったときに親身になって考えてくれるのは深い友達だから。極限まで追い詰められていたゆうきを救ってくれたのがつとむであるように、大切な人は自分のことをちゃんと理解してくれているから。だから、くだらないことでも用がない時でも普段から大切な人とは連絡を取り合っていたい。
18歳のうちに出会えて良かった。
作品名の話。『はじまりのカーテンコール』って正直観劇する前はよく意味がわからなかった(というよりは深く考えていなかっただけだけど)。最後のまさしの台詞で全部紐解かれる意味ーー「カーテンコールは終わりじゃなくてはじまりの合図」だということ、ひとつの作品が終わったからといってそこで足を止めてはいけないし、ひとつの作品を通して得た学びを次の場で活かすってことなのかな。
演出面に関しては、植ちゃんがこれまで出会ってきた照明や音響を取り入れたんだろうなって思った。例えば、囚人と監獄のシーン内の、囚人としてではなくゆうきとして心情を語るシーンでは、一瞬ストーリーを止めてゆうきにだけスポットライトが当てられる。そこはエーステに近い演出。経験値が高いからこそ、役者の視点で良いなと思った演出を入れたのかな。
あと、個人的には時間の流れを服で表現するのが面白かった。前半の方で季節が冬から夏に変わるシーンがあるんだけど、ゆうきの羽織る一枚のパーカーによって強引さを感じさせることなく、スムーズに話が進められてる。
はじカテ語録
「たまに迷う。でも飛び込んでみないとわからない。そこで証明するしかない」
「止まっちゃダメだ。止まる暇があったら進め。できるかできないかじゃない。やるかやらないかだ」
「あいつの人生は無駄なんかじゃない。誰かの心に何かを残したんだ。それってすごく豊かな人生じゃないか」
「結果のために努力するわけじゃない。努力が結果をもたらすんだ」
「人生なんて誰かと比べるもんじゃない。お前はお前の人生を生きろ」
「悪口を言ってるやつは成長しない」
「この夢は俺だけの夢じゃない。みんなの思いでできている」
「自分の人生は自分だけのものじゃない。これは、みんなでできている」
「諦めない。諦めるのは積み重ねを全て壊すこと」
「大事なのは変わろうと思うことだ。大事なのはこれまでじゃない、これからだ」
「知らなかったことを初めて知って、これから知ることを喜べばいいんだ。人との出会いがお前を強くする」
「これからの人生をもう少し愛してやってほしい」
出演者の印象
高崎翔太くん
初見:松ステ
ギリギリまで観劇するか迷って結局できなかった『忘華』のレポを検索してると、みんな口を揃えて「翔太くんの演技が良かった」って言っているのを聞いて気になっていたのですが……本当にすごかった。これまで出会って来た役者さんの中で一番心が動かされる演技をする方かもしれない。特に泣きの演技では、語尾のしゃくりがリアルで切なくて繊細で。リアルを板の上で表現するってすごい勇気がいるし、でもそのリアルさが伝わってくるから観客にはとても刺さる。文字にするのが難しくて表現が合ってるのかわからないけど、「まだ聞いてないよぉー」「直接言えば良かったじゃんかぁ」とか語尾の小さい字に魂こもってる。初見のおそ松ではふざけまくってるので印象が違くて、良い意味でびっくりした。もっと彼の作品を見てみたい。
田村心くん
初見:刀ステミュANN(2021年11月13日)
2.5次元界の良心。雰囲気から滲み出てる良い人感。すごい謙虚だし仲間思いなんだろうなって演技を通して伝わってきた。アクターズリーグのバスケめちゃくちゃかっこよかったです。
安西慎太郎くん
初見:まーしーのブログ(2021年10月)
まーしーのブログを遡っていた去年、初期の方の記事でしょっちゅうしんたくんのお名前を拝見していたけど、ご縁がなかったのかここまで彼の作品を見たことがなかった…のですが、初めてプラハピの配信でお顔をご拝見させていただいて、結構好きなタイプだということが判明。アフトで黒スキニー履いた脚を広げてどーんと座ってる姿が超男前だった。今回初めてお芝居を見た感想は、“温かい演技をする人”。しんたくんが紡ぐ言葉は優しくてほっこりする。そしてアフトの「演劇には意味がある」って言葉にすごい救われた。誰かの心の支えになるってすごいよねほんと。
古谷大和くん
初見:エーステ
なんせ初見がシトロンなものだから、彼の演技の幅に驚かされた。今回の真面目な役からすっとんきょうな役までこなすことができるの?んでもってプラハピの配信見てみたら本人めちゃくちゃボケ倒すし沼でしかない怖い(ここまで一息)。就活のシーンのスーツ姿は脚長すぎてたまげた。本物のスタイル良い人類を初めて見たかもしれない。お芝居の話でいうと、最後に大和くんのアドリブ(心くんに「共演者のどこが良かったんだ」って聞くところ)があったことで、しんみりした気持ちだけではなく明るい余韻も残って良かった。
和泉宗兵さん
初見:ツイッター
初見がツイッターっていうのは、アイコンが印象的すぎて(黒縁に「宗兵」)強く覚えてるってことです。包容力ハンパない。確かに他の共演者さんより一回り大きいなとは思っていたけど、家に帰って調べてみたら186もあった(そりゃ包容力も滲み出てるわけだわ)。
根本正勝さん
初見:まほろばかなた
まさか2作品連続で根本さんにお会いするとは。先月のまほろばの時は衣装マジックだったのかめちゃくちゃ大きく見えたんだけど、シュッとした今回の衣装に身を包まれていると結構小柄で華奢だった。とりあえず大人の色気溢れるお顔と雰囲気が好き。
河原田巧也くん
初見:はじカテ
遠くから見たら輪郭とか鼻とか髪型が遼太郎くん似。嫉妬してゆうきを排除しようとする役がハマってた。本当に初見なのでもっと知ろう。
植田圭輔さん
初見:リアフェ
実はここにきてようやく初生植ちゃん。しんたくんと並ぶとまぁちょこんとしててちっちゃいこと。稲妻のようにツッコミいれるザ関西人。そのスピード早すぎるから見てて気持ちいもんね。上はジャケット着てたからあんまり感じなかったけど、下のスキニーの足首が超細い。折れてしまいそう。これは他の方のツイート見つけてなるほどって思ったのでおすそわけ……『START LINE~時の轍~』って植ちゃんの曲がはじカテにとてもリンクするので是非聞いて欲しい。この曲聞いたらいつでもこの作品のこと思い出せるよきっと。