ここなっつぴぃす

紡いだ夢の先へ

ミュージカル「October Sky-遠い空の向こうに-」観劇記録

 

10月16日・10月24日(東京千秋楽)『October Sky-遠い空の向こうに-』を観劇してきました。

 

 

ミュージカル『October Sky-遠い空の向こうに-』

シアターコクーン

 

予定公演時間 2時間45分

 

10月16日

17:30〜18:45 1幕

18:45~19:05 休憩(19:03開演前のチャイム)

19:05~20:15 2幕

 

10月24日

12:00 1幕

14:55 終演

 

出演者

・ホーマー・ヒッカム:甲斐翔真

・ロイ・リー:阿部顕嵐

・オデル:井澤巧麻

・クエンティン:福崎那由他

・ミス・ライリー:夢咲ねね

・ジョン・ヒッカム:栗原英雄

・エルシー・ヒッカム:朴璐美

・ジム・ヒッカム:青柳塁斗

・ドロシー:中村麗乃

・エミリー:磯部花凜

・ケン:畠中洋

・バイコフスキー:筒井俊作

・アール:大嶺巧

 

満足度       ★★★★★

ストーリー性 ★★★★★


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~あらすじ~

 

1幕

冒頭は炭鉱夫の歌から始まる。低くて太い歌声に今回の話の重さが反映されている。

♪『炭鉱へ』

固い~絆~仲間と共に進む~

命かけて家族のため働く~~誇り高く~~

(ケン、アールソロパートあり)

 

お弁当を忘れたジョンにホーマーが炭鉱へもってきて届けるのだが…

ホーマー「パパ、ランチ忘れてるよ!」

ジョン「あとにしろホーマー。みんな聞いてくれ。昨夜未明、ガス爆発が発生」

炭鉱夫ら「何!?」

仕事人の父に相手にしてもらえないホーマー。お弁当をそっと置きその場を去って行く(東京千秋楽ではジョンはホーマーの手から直接奪うようにしてお弁当を受け取っていた)。

 

ウェスト・ヴァージニア州の炭鉱の町・コールウッドに暮らす高校生ホーマー・ヒッカム。

彼の家は代々炭鉱を継いできた炭鉱一家で、この町の男はだいたい将来は炭鉱で働くことを約束されたようなものだった。こんな町から抜け出したい。だけど抜け出せない。その現実を当たり前に受け止める同年代の周囲とは対照的に、疑問を抱えながら暮らしていたホーマー。しかし抜け出す方法が見つからず彼は漠然と“抜け出したい”としか思うことができなかった。

 

ロイ「ホーマー!」

ホーマーに体当たりするロイ。彼はあっけなく倒れてしまう。

オデル「ジーザス!ホーマー!お前ボーリングのピンかよ!ハハハハハ!」

ロイ「おめぇの兄貴ならぁ、トラックがぶつかっても倒れねぇぞぉ!?」

ホーマー「降りろよロイ・リー」

ロイ「降りろ!?!?その言葉、昨夜のエミリー・スーには言われなかったなぁ!」

ロイ、馬乗りになりながら楽しそうに絡む。

ホーマー「その痣、どうせ彼女にやられたんだろ?」

微笑するロイ。

オデル「違うよ!犯人はヤツの義理の親父のアールさ!」

ロイ「うるせぇ!!」と今度はオデルにアタックしようとするロイ。

オデル「おっと。ハハハ!」

 

オデル「ねぇ数学の宿題見せてよ!」

ホーマー「ロイ・リーに写させてもらえよ」

オデル「冗談が過ぎるよホーマー!」

ロイ「なぁ、らんすうって何だ?炭鉱にも関係ないしエミリー・スーにも関係ないしぃ!!」

 

ホーマー「でも、この町で死ぬつもりはない」

ロイ「ホーマー、人はいずれ死んで土の中だ。だったら給料もらって土の中に潜ろうぜ」

ホーマー「俺は地下には潜らない」

オデル「じゃあどこ行くんだよ?」

ホーマー「♪新学期思う今年こそはと~飛び立つ方法を見つけられたら~ 新しい場所へ自由になるいつかは〜

ロイ・オデル「♪でも〜ここを出られない〜

 

ジムやその友人がクエンティンが持っていた本を取り上げ投げ、拾いに行こうとするクエンティンに足をかける。

 

♪『抜け出したい』

オデル「アメフト選手になれたらな~」

ロイ「お前はヒーローモテモテさ~」

オデル「トッチロン(?)決めて 這い上がりたい~」

3人「高く~~」

オデル「お笑い好き~」

ロイ「髪もバッチリ~車もある~」

ロイ・オデル「でも抜け出せない~」

3人「卒業まで2年もあるぞ~~」

 

オデル「エミリー・スー!ゆうべロイ・リーとタックルしあったんだってぇ!?」

焦るロイ。

エミリー「口を閉じろってロイ・リーに伝えてちょうだい!」

OKと手で応えるオデル。すぐ隣にいるロイに向かって、

オデル「ヘイ、ロイ・リー!エミリー・スーがぁ…」

ロイ「いや聞こえてるよ!!!」

終始ニヤニヤしているホーマーとオデル。

 

ドロシー「おはようって言ってくれないの、ホーマー?」

ホーマー「おはよう、ドロシー」

はにかむドロシー。

校長「諸君急ぎたまえ」

オデル「了解であります、ターナー校長」

ロイが不意打ちでエミリーにキスする。

エミリー「なーに今のキスっ!?ちゃんとしてよっ!」

ロイ「口を閉じろって言ったろ!」

こう言われ、エミリーはロイの頬を叩く。

 

♪『抜け出したい』

エミリー「ここの男子はろくなのいない~かっこいい彼を探している〜」

 

♪もっとあるは~ず~ デートより~何よりも~ も~っと~

 

彼らの周りはいつも賑やかだった。

 

そんなある日、学校にてミス・ライリー先生が人類初の人工衛星スプートニクが打ち上げたというニュースを教えてくれる。

 

東京千秋楽ではここでライリー先生が座りなさいって言ってるのにロイとふざけてまったく座ろうとしないオデルに(オデル以外はシラけてる)、

ライリー「座ってください」

オデル「はい」

先生に直接言われてようやく座るオデル。

 

ライリー「学校はミサイルの恐ろしさを教えなさいと言うけれど、私はそれよりも文明の偉大さを讃えるべきだと思っています。そこで今日はスプートニクが受信した音を聞いてみましょう」

この話を聞いて前のめりになるクエンティン。一方、お調子者のロイとオデルは、

ロイ「何???スプーンと肉???」

ライリー「スプートニクっ!!!」

などと嘲笑する。

先生はラジオからスプートニクが受信した音を流してくれた。

ロイ「なんだこれだけ!?ウィンウィン言ってるだけじゃねぇか!」

スプートニクの真似をするオデル。

ロイ「そうそうそれそれ!www」

すると化学オタクのいじめられっ子・クエンティンが反論する。彼はスプートニクを馬鹿にされたことに腹を立てていた。しかしいじめられっ子とあって周りに相手にしてもらえず、ロイは彼を抱えて元の席に戻す(抱っこされながら)。バタバタ必死に抵抗するクエンティン。すると、

ライリー「私の授業ではやめてちょうだい!クエンティン、ありがとうね。クエンティンの言う通りよ」

とその場をなだめる。

この偉大さを説明した後先生はホーマーに話を振るが…

ライリー「ホーマーはどう思う?ホーマー…?」

ホーマー「あ、はい…すみません」

彼は何かぼうっとしていた。その様子から何か感じ取った先生。

ライリー「期待してるわよ、ホーマー」

 

コールウッドからも肉眼でスプートニクは見ることができたのである。炭鉱からまたもや電話があったためジョンは見に来なかったが。

打ち上げを待っているとき、寒そうだからとロイがドロシーにジャケットをかけようとするとエミリーが慌てて止める。自分にかけるよう促され、彼女にかけてあげるロイ。その代わりオデルがドロシーに自分の上着をかけてあげる。ロイとエミリー空を見上げながら隣で囁き合っている。

 

エミリー「…!あれよ!!!」

ロイ「えー違うだろぉ」

オデル「いやぁ絶対そうだよ~!?」

それはとても小さくわかりにくいものだったが、その光景に胸を打たれたホーマーは自分もスプートニクのようなロケットを打ち上げることを決意する。

 

♪『星を見上げて Look to the stars』

星見上げれば〜昨日の迷いは消え〜憧れ続けた明日への扉

星の下で〜同じ夢を見てる〜この世界と僕は繋がってる〜

星の下で~同じ夢を見てる~あとは自分次第~歩き出そうよ~

 

だんだん周りははけていき、最後はホーマー一人に。

 

場面は変わってヒッカム家。

ジムが料理を大量に自分の皿に盛っていたら、

エルシー「こらっ!ジム!ホーマーの分も残しておきなさい!」

ジョン「いいじゃないか。明日は試合だもんな」

エルシー「去年2人骨折させたこと忘れないでちょうだいね」

ジョン・ジム「あれは向こうが始めてきたんだ!」

ハモる2人。顔を見合わせて爆笑する。

そこにホーマーもやって来る。

 

スプートニクなんぞはどうだったんだ?」

「あんなの共産主義者の脅しにすぎないさ」

エルシー「でも私には魅力的に見えたわ」

母に反論され少し黙るジョンとジム。

 

ロケット作りの意をホーマーはご飯中に家族に打ち明けようとするが、父ジョンと兄ジムはアメフトの話で盛り上がっておりなかなか切り出せない(この時すでに家内での兄の優越が伺える)。ロケットの材料が入った箱をこっそーりと自分のもとへ引き寄せタイミングを見計らうも最終的には諦めたのか、急に立ち上がって

 

ロケット作る!!!

燃料と懐中電灯〜雑誌に載ってるようなロケット〜〜

(母「そう。自分を吹き飛ばさないようにね」)

 

それを聞いて顔を見合わせ笑うジョンとジム。

 

ホーマー「(ロケット作りに)行ってもいい?」

エルシー「もちろん」

駆けだすホーマー。

エルシー「あ!ジャケット忘れないでーー!!」

ジョン「ジムの試合があることも忘れんなよー」

 

ロケット作りにロイとオデルも誘い、雑誌に書いてある通りの材料を準備する。ロイとオデルが成功しない方に賭けていた中カウントダウンするも...それはやはり失敗に終わった。

 

爆発音にびっくりして母がやって来る。何事かと来てみたら、会社が半年かけて作ってくれた柵が壊れていた。エルシーはロイ、オデルの方を向きながら、

エルシー「ホーマー…...…!!!」

慌てて逃げるロイたち。

エルシー「ホーマー…ホーマー…...」

一向にエルシーのもとへ行こうとしないホーマー。

エルシー「ホーマーっっっ!!!!」

ホーマー「はい…」

ついには怒鳴られしぶしぶ母親の元へ行くホーマー。

エルシー「どういうことか説明しなさい」

ホーマー「失敗はしてない。ただ…計画通りにはいかなかった笑」

 

しばらくすると、母だけではなく父までも音に反応してやって来た。

ジョン「何事だ!?」

ロケットの爆発音だと知って溜息をつくジョン。

ジョン「(音にびっくりした)炭鉱の奴らに電話してくるよ」

 

ホーマーは自分が父親に認めてもらえないと消極的。2人の中立の立場を保つ母に父を振り向かせなさいと言われるも、

ホーマー「パパはアメフト以外興味ないよ」

父はジムに「お前は誇りだ」と言っているのをホーマーは何回も聞いている。彼は兄に劣等感を抱いていた。

 

やり遂げるのなら~地に足つけて~ 

やるならしっかりやりなさい。覚悟しなさい。

と愉快に歌い出しホーマーの背中を押す。

 

ホーマーもつられて地に足つけてるところが可愛い。

ここでエルシーは相手にされない気持ちが痛いほどわかる、と共感しホーマーの夢を応援する意を示す。

 

 

ロケットについてもっと知るために、熱心に語っていたクエンティンも誘うことにするホーマー。

お昼の時間に彼と話そうとするが、昔から見下されている彼はその日もジムたちにいじめられていた。

 

ジム友人「お母さんは何を作ってくれたのかなー??」

そう言いながらクエンティンの昼食を盗む。

ジム友人「ホットドッグ!君のソーセージと同じくらい小さいホットドッグ〜〜〜www」

周りの連中は見て見ぬふり。

 

ホーマーは話しかけるか迷う。隣にいるロイやオデルからも反対され、躊躇するが彼はロケットのために勇気を持って話しかけることにした。

ホーマー「ねぇ」

すぐホーマーの反対を向くクエンティン。

クエンティン「見せないよ」

ホーマー「え?」

クエンティン「みんな僕に話かけるときは宿題を写すときだけだ」

ホーマー「そんなことしないよ」

クエンティン「え?」

ホーマー「ロケットについて教えてほしいんだ」

クエンティン「何について知りたい?」

ホーマー「全部だ」

ホーマーの熱意を感じ、席を空けるクエンティン。ロイがこっちおいでと呼び止めたりロイが机を叩いてこっちに座るよう促す。ホーマーが座るかどうかみんなが見守る中彼は座った。びっくりする学生たち。

 

ジム「なに??俺はこいつの唯一の親友だって自慢したいのか?」

と兄にまで馬鹿にされるホーマー。

ホーマー「僕は話したい人と話すっ...!」

ジム「ああっ!?」

兄に流されずクエンティンに話しかけに行くホーマー。

 

ここで揉め合いになり、殴られそうになったクエンティンをロイたちが庇ってジムらにアタックし返す。軽々とかつがれ、ジムにスーパーマンされるロイ。

 

ライリー「アメフト部の子たちが彼らの運動を手伝ってくれるのは嬉しいけど、今度からは体育の時間だけにしてちょうだい!」

 

オデル「どこでそんなタックル覚えたんだよ!?」

ロイ「アールのおかげかもな! 」

 

クエンティン「どうして?みんな僕に話しかけるのはノートを見せてもらうときだけなんだ」

ホーマー「俺たちの仲間になってよ」

クエンティン「…でも...僕と一緒にいたら嫌われる…だから僕はなしにしてくれ…」

 

ロイ「つまり空飛びたいんだろ〜

オデル「鳥のようにね〜

クエンティン「僕も!空見たい〜

ロイとオデルがクエンティンを前に連れ出す。

 

こうしてホーマー、ロイ、オデル、クエンティンはビッグクリーク・ミサイル・クラブを結成し、ロケット作りをすることになった。

 

見たいよ~仲間と~一緒に~

ロケット作るスキルはなく~わかってるだけまだマシさ~

みんな僕ら〜見直すここだよ~ 自由に~なれるさ~

僕らビッグクリーク・ミサイル・クラブ

 

最後は4人で手を重ね合い決意を固める。

 

 

校長にロケット作りをしてることがバレてしまい禁止されそうになるも、

ライリー先生「私が持ってこいと指示しました」

と彼らを庇う。

ライリー「あなた(校長)も有名になるチャンスですよ」

いいように校長がロケット作り陣営に持ってこさせる。

ライリー先生「♪批難~受けます~~

この曲に一番最初にのり始めたのはクエンティン。彼を他の3人は止めようとするが知恵深いクエンティンが何か説いたことでみんなライリーの助け舟に便乗。こうして校長先生を味方につけ彼らはまたロケット作りに励んだ。

この歌中で言っていた話をライリー先生は彼らに本気で成し遂げてもらいたいと思っていた。彼らにサイエンスフェアを勧める。

 

お詫びいたしますこの大騒ぎ~怒らせたのなら私が悪い

ロケット作れと持ち掛けたのは~~~私なんです彼らは被害者

言われた(言われた)通りに(通り)命令を守っただけ~

批難(批難)受けます(受け)だから許してください~

 

校長「しかしだなぁ!!!」

 

決して夢じゃないこのままいけば~

言われた(言われた)通りに(通りに)永遠を守るからね〜

批難〜受けます〜だから許してください〜

言われた(言われた)通りに(通りに)学校を有名にできる~

名声(名声)評判(評判)きっと高まることでしょう~

言われた通りにやりなさい!

最後慌ててライリー先生の周りに集まる4人

 

 

オデル「先生コメディアンになれますよ!」

ライリー「悪いけどこれは冗談じゃないわ」

と先生は彼らにサイエンス・フェアへの出場を提案したのであった。

 

ロケットの溶接を頼みに深夜、機械工場を訪れるホーマー。

そこにはバイコフスキーさんがいた(巻き舌がすごい)。

そっと入ってきたホーマーに対し、

バイコフスキー「なんだホーマー・ヒッカムか。ネズミみたいだな。どうしたんだ?」

ホーマー「なんか眠れなくて」

バイコフスキー「それで静けさを求めにここに来たってわけだ」

 

ホーマー「バイコフス『キー』」

2人「ハハハハハ!!!」

ダジャレで笑ったり、ホーマーは近くに置いてあった平べったい鉄の道具ではんにゃの物ボケをしたりなど2人の親しい関係性が伺える。ホーマーが一通りバイコフスキーさんを褒めたたえたところで、

バイコフスキー「で?頼みは何だ?」

ホーマー「溶接の仕方を教えてほしくて…!」

バイコフスキー「悪い、それはできねぇな。私がクビになるかもしれん!仕事に戻るよ」  

残念そうに帰ろうとするホーマー。しかし…

バイコフスキー「あ…それに…!わしゃの溶接は難しい。半田付けがおすすめだ」

とアドバイスする。パッと顔が明るくなるホーマー。

バイコフスキー「半田付けのやり方はわかるか?」

ホーマー「いいえ」

バイコフスキー「よし」

こうしてバイコフスキーさんはホーマーのロケット作りを手伝うことになった。

 

バイコフスキー「なんでまたロケット作りを?」

ホーマー「スプートニクを見ましたか?」

バイコフスキー「いや」

ホーマー「そっか…それだと説明が難しいな…」

バイコフスキー「トライしてみろよ」

 

♪『星を見上げて Look to the stars』

ホーマー

「空に現れた美しく光る流れ星~どこかで誰か同じものを見ている~

この世界はどこまでも繋がってるはずだと~気付かせてくれた奇跡のプレゼント~」

 

バイコフスキー「要するに、世界が繋がっていると感じたんだな」

ホーマー「そうなんです…!」

 

こうして彼らのロケット第一号が完成する。

溶接を終えみんなのもとにロケットを持って行ったのだが、そこには何か文字が書かれていた。

ロイ「オーキ...?なんだよそれ!」

ホーマー「オークだよ。オーク1号。ウミスズメのことさ」

ロイ「なんだよそれ!?」

ホーマー「飛べない鳥だよ。反語になってるんだ」

ロイ「はんご...?はんご...。はんごなっ!!!」←絶対わかってない

 

そこへドロシーが現れる。

オデル「ちょうど帰ろうと思ってたんだ!」

ロイ「そう!ホーマーは君のもの」

まだホーマーと話し足りないクエンティンはまだ話したがるが、ロイとオデルに引きづられ無理矢理後ろに追いやられる。

ドロシー「これ、あなたのロケット?」

ホーマー「うん…」

ホーマーの持っていたロケットを手に取るドロシー。

ドロシー「思ってたより大きいのね!横に書いてあるのは何?」

ホーマー「名前、オーク1号っていうんだ」

ドロシー「鳥の名前?」

ホーマー「…そう!」

ドロシー「飛べない鳥…皮肉になってるのね」

ホーマー「そう!!!」

ドロシー「どんな仕組み?」

ホーマー「まず、燃料はここ。この導火線に火をつけるとニュートンの第三法則要は作用・反作用の法則が働く。そして噴射されたガスと同じだけの力がロケットを持ち上げる。つまり…飛ぶんだ」

ホーマーが説明している間後ろで身振り手振りしながら見守るクエンティンとオデル。

 

1号打ち上げの前

ホーマー「上手くいけば教科書に載るーかも〜」

オデル「上手くいけば自信持てる〜」

ロイ「上手くいけばモテモテになるーかも〜」

3人「上手くいけば打ち上がるはずさ!」

 

しかし1号はカウントダウン前に真っ二つに折れてしまう。

ホーマーは隣にいるバイコフスキーさんのもとへロケットを持っていき改造、2号も打ち上げてみる。すると、2号は少しの距離だけ打ち上がったのだ。

 

4人「見ていろよ~俺たちも冒険者~ヒーローさ~空の開拓者~」

クエンティン「オーオーウォ イェーエエエ~」

4人「ロケットボーイズ 世界変えるんだ~」

 

2号に続けて3号4号と打ち上げていく。

 

ホーマー「ここを早く出たいんだ」

ドロシー「でもここは私達の故郷よ?私は好きだわ」

 

焼きたてのパイ~星眺めてたら~見ようとしてしまう~

あなた空を見上げ~何か探してる~

コール・ウェスト・ヴァージニア~それだけでいいわ~素敵なこと~

 

ドロシー

“コールウッドでも夢は見れる。ここで一緒に歳を重ねようよ”

 

学校にて。

ミス・ライリー先生「『人間は手の届く範囲の外にあるものを掴み取りにいくべきである。さもなくばなんのための天国か』この詩人ロバート・ブラウニングの言葉が科学的努力に対してどのような意味を持つのか、考えてきてちょうだい」

相変わらずクエンティンは真面目に授業を聞いているが、スプートニクの音声を聞いたときとは異なり隣のオデルは仲つむまじげに絡んでいた。

 

授業後、ドロシーが声をかける。

ドロシー「良かったら夜一緒にこの詩について考えてみない?ポテト持ってきて、○○作るわ」

ホーマー「ごめん、今日は作業があるんだ…」

ドロシー「あぁ…、あの作用反作用みたいなやつね?」

ホーマー「そう」

ドロシー「…わかった、じゃあ今日はエミリー・スーと考えてみる」

とエミリーの方を見ると彼女は手持ちの鏡で自分の角度をチェックしていた(2人とも引き気味)。

ドロシー「多分ね笑」

 

授業の後、ライリー先生はホーマーを呼び止める。

ライリー「ロケット作りは順調?」

ホーマー「少しずつですが進歩しています」

そこで彼女はホーマーが探してた専門書を彼に与える。

ホーマー「これ、ずっと探してたやつ…!探しても見つからなかったんです!」

ライリー「トイレに置いてあったの」

ホーマー「トイレ!?」

ホーマーしかめっ面。

ライリー「それは嘘。あなたのために取り寄せたのよ」

まだ匂いを嗅いでいるホーマー。

729ページもあるこの赤い本にはロケット作りの技術がたくさん載っていた。

 

時にホーマーが苦しんでいるときはしっかり背中を押してあげるライリー先生。

ホーマー「俺にできるかな…」

ライリー「でもあなたは挑戦をやめない」

ホーマー「おそらく」

ライリー先生「『人間は手の届く範囲の外にあるものを掴み取りにいくべきである。さもなくばなんのための天国か』」

ホーマー「そういうことか…!」

ライリー「あなたならこの言葉の意味がわかると思っていたわ」

ホーマー「僕は詩人なんかじゃないですよ?」

ライリー「私もよ」

 

ライリー「できるかじゃない。やるの。あなたならできるわ」

ホーマー「ベストを尽くします。…じゃなくて、」

2人「もっと頑張ります!」

 

その頃、炭鉱では人員削減での人手不足による閉鎖が囁かれいた。周囲の炭鉱は次々と閉鎖し、次は自分たちなのではないかと危惧する炭鉱夫ら家計を支えるのに身を危険にさらしながら、これまで地に潜り続けてきたのだ。

これ以上人員を減らせば数機構の確認が怠り事故が発生してしまうと、ケンは“友人”としてヒッカム家を訪れジョンに伝えるが、ジョンは西の方のまだ開拓されていない鉱脈に進出しようとしていることを話す。ケンはそれよりも先に人員削減を廃止すべきだと反対するがジョンは一向に聞こうとしない。

ジョン「このままじゃ人員削減か閉鎖かだ!」

ケン「いや、第3の選択肢がある」

ジョン「何だよ?」

ケン「ストライキだ」

ジョン「そんなバカな!」

 

ジョン「それは会社が何とかしてくれるさ」

ケン「会社は会社の面倒しか見ない!」

しかし彼はまくし立てているうちにむせてしまった(長年灰を吸い込んできたからだと思われる)。

ケン「そうだ、もっとしろ。もっとするんだ。俺たちは毎日大量の灰を吸っている。でも会社はこれを何とも思わない。これが現状だ」

 

ジョン「ジムをオーティスさんに会わせようと思うんだ」

その話を聞くエルシーの手には大学の推薦状があった。

エルシー「実はね…ジム宛てにウェスト・ヴァージニア大学から推薦状が来ているの…」

ジムはアメフト推薦での大学進学が決定した。父もかつて目指していたアメフトの選手への道がジムの前に開けている。しかし父は大学に進学するのに反対だった。表面上では「おめでとう。お前を誇りに思うよ」などと言っているがショックを受けている。ジョンがもう帰ってこないと悟ったジョンは炭鉱を継ぐのをホーマーに託すことにした。

 

どこまでも前向きな4人。

「ジョンにないものはー?」

「炭鉱!!!」

本気でロケットを打ち上げるのを目指す彼らにとってスポーツ推薦で大学への進学が決定し、おだてられるジムのことなど眼中になかったのである。

 

「俺はここを継いだ。俺の親父もだ。そしてお前もだ。」

ヒッカム家の宿命をホーマーに伝えるジョン。ロケット作りに夢中である高校生にとってそれはあまりにも現実性を帯びた話だった。

♪空にいようと炭鉱に潜ろうとお前はお前〜

アメフトはやり遂げる価値がある。ロケットは夢、炭鉱は現実。名誉はないが価値は同じだ、と。

憧れた~アメフトの選手になること~ 

でも俺は親父継ぎ炭坑に潜った~

どこにいようと〜お前はお前〜

 

試行錯誤を重ね、オーク16号までくるとそれは少しずつ真っ直ぐ打ち上がるようになってきた。

打ち上げを重ねるにつれ周りの賛同を得ていく4人。

お酒を飲みがてら馬鹿にし見物していたジムたちもロケットが飛んだことに驚き、彼らの本気さを認めるように。

ロイ「最高の1日だぜ!!!ついでに最高の夜もどう?」

16号打ち上げ成功の後エミリーをちゃっかり口説くロイ。またビンタされてる。

 

17号の際。

ホーマーがロケットに夢中になるほど相手にされなくなるドロシー。ホーマーはロケットを打つのに夢中になりすぎて無視されてると感じていた。

 

ドロシー「ねぇ聞いて~多分そのせいよ~彼に無視されてる~」

エミリー「じゃあ行こう~可愛いドレスで~思い出させるのよ~何が大切か~」

 

5!4!3!2!1!(発射のカウントダウン) → 17号無事打ち上がる

打ち上げるたび高らく~失敗もなく~人々に希望与える~これはチャンス~

ホーマー「成し遂げよう〜」

ロイ・オデル「成し遂げよう〜」

クエンティン「成し遂げよう~」

※最後の成し遂げよう~は合奏

 

(16、17、18号を打ち上げるときは4人で「♪みんな僕ら見返すここだよ〜自由になれるさ〜」を歌唱)

 

17号後

ジョン「ホーマー……!」

彼はまだロケット作りに反対。

上手にジョン、下手にロケットボーイズや応援してきれてる人たちと心情がはっきり対比されている。

 

18号の際。

ねぇ聞いた?コールウッドはもうだめかもしれないと~

でも 彼ら決して諦めない~10月の空を照らす~

もしかして奇跡を手にすることになるかもしれな~~~~い

ロケットボーイズよ~飛べ~~~~飛べ~~飛べ~~

ここで彼らは初めてロケットボーイズと呼ばれる。

 

ホーマーがロケットにのめり込んでいく程自分から離れていくとドロシーは感じていた。

ドロシー「綺麗ねぇ」

ホーマー「でもまだまださ」

ドロシー「なんで?もうこれで十分じゃないの?」

ホーマー「見えただろ?まだ真っ直ぐ飛ばないんだ。揺れてる」

 

しかし、18号打ち上げの際に爆発音で炭鉱夫らは炭鉱で火事が発生したと勘違いし混乱が起きてしまう。4人もとへジョンが現れロイ、オデル、クエンティンはその場を去るのだが…ジョンは生憎大激怒していた。

炭鉱夫「共産主義者の仕業だ!」

父への抵抗心が見えるも逆らうことは出来ず、ロケット作りを続けるべきか迷い始めるホーマー。

ジョン「ホーマー何をやってる!?」

ホーマー「ごめんなさいパパ」

ジョン「誰とやった?」

ホーマー「誰ともやってないよ...。一人でやったんだ」

ジョン「嘘つけ!誰とやったんだ!?」

ホーマー「…」

ジョン「…バイコフスキーか」

バイコフスキーとの秘密がバレてしまった。

ジョン「こんなもの二度と打ち上げるな…!」

ホーマー「でも...っ!これは僕の全てなんだ…!」

ジョン「ママや先生がどう言おうが関係ない。これで終わりだ、わかったか!」

そう言ってロケットをゴミ箱に捨てる。

 

 

母や先生への感謝を告げロケット作りを絶つ決意をする。無理矢理諦めようとするも、やはりホーマーはロケットを諦めきれていない。

 

でも…飛びたかった〜…

そうさ〜本気さ〜

見たいよ~死ぬほど~

 

ホーマーはジョンに捨てられたロケットを取り出して悔しそうに見つめる。すると、ジョンが会社の幹部・オーティスをホーマーと会わせに戻ってきたので、ホーマーは慌ててそのロケットをゴミ箱に入れた。

ジョン「ホーマー、オーティスさんと握手しろ」

ジョン「あいにく今は爆竹作りに夢中な息子ですが、いずれは私のようにこの炭鉱を束ねるようになるでしょう」

と紹介する。オーティスはホーマーの胸をつつき、釘を刺す(東京千秋楽では肩をつついてた)。

 

星空輝いて~

夢を選ぶか〜諦めるか〜

見ていろ~必ず〜かがや~くさ〜(+炭鉱夫♪命かけて~仲間とともに~す~す~め~)

 

 

2幕

1幕は炭鉱夫のハミングからスタートだったのが、2幕ではエルシー、ライリー先生、ドロシーのハミングからスタート。

 

炭鉱に向かうジョンとしっかりハグし合うエルシー。

炭鉱の妻は辛い。毎日見送るときにこれが最後のキスかもしれないと覚悟を決めねばならない。

この町の学生はどうせみんな炭鉱に出ていく。でも何か彼たちに教養だけではない何かを残してあげたい。そんな思いで教師をしてる中でホーマーの目は“炭鉱に潜る男とは違う目”をしていると感じたライリー先生。その目の中には空が見える。

エルシー、ドロシー、ライリー先生がこの思いをセッション。

 

ドロシー「でも本気で好きになったわ~それなのに星を見つめ~遠くにいるのあなた~どうして気付いてくれなーいのだろう~」

3人「別れはどんなときもそばにあるもの~だからこれが最後のキスかも~グッバイ~」

エルシー「これが最後のキスかも~…」

3人「グッバイ〜…」

 

ジョンに共犯がバレてしまい、バイコフスキーは機械工場を辞め炭鉱に行くことになってしまう。

バイコフスキー「ここは穏やかで良いな。音は聞こえないが炭鉱は見える」

ホーマー「ごめんなさい、お父さんに言ってしまいました」

バイコフスキー「…やっぱりか。いいんだよ」

ホーマー「でも...!」

バイコフスキー「いいんだ。条件を付けてもらって給料を倍にしてもらえるんだ。ポーランドの親戚が困ってるから待遇を良くしてもらえるのはありがたい」

ここでバイコフスキーはロケットが大量に入った箱をホーマーに渡す。しかしホーマーはロケット作りを続けるか否か悩んでいた。

ホーマー「…僕は受け取れません。でも感謝しています。何と恩返ししたら...!」

バイコフスキー「恩返し?…ならそれを打ち上げてくれよ」

 

ロイたちはバイコフスキーさんが置いていった箱に気付く。

「どうしたんだよこれ!?」

ホーマー「バイコフスキーさんが置いていってくれたんだ」

「これ何週間分もあるぞ!」

と3人が興奮する中…

ホーマー「ロイ・リーは良い目をしてるな」

ロイ「は?どうしたんだよ急に?」

ホーマー「…俺がいなくてもやってけるな。それお前らにやるよ」

ロイ「なんでだよ!?」

オデル「親父さんの言うことなんて聞く必要ない」

ホーマー「でも僕のパパだ!」

ここのホーマーの切ない顔は忘れられない。本当は自分も打ち上げたいのに、炭鉱とロケットの狭間で揺れるのだった。

 

ロケット作りと炭鉱の狭間で揺れるホーマー。夢を諦めようと、ライリー先生からもらった専門書をクエンティンにあげる。

ホーマー「お前しか理解できないだろうからよ」

クエンティン「…いいの?」

 

クエンティン「では3人でやることとしよう!」

 

「じゃあ飛ばしに行こうぜ!」

ホーマー「ここ(炭鉱の隣)はだめだ。パパに怒られる」

ロイ「じゃあどこで飛ばすんだよ!?」

クエンティン「高くて平らな場所!」

あれやこれやと揉める3人。するとあおのやりとりを後ろから見ていたホーマーが、

ホーマー「廃棄物処理場…!!」

クエンティン「なるほど!あそこは丘だからちょうどいい!」

「でも名前がダサいな…廃棄物処理場だぜ?」

クエンティン「では、コールストンと名付けよう!」

意味を理解できないロイとオデル。

ホーマー「ヒューストンとかけてるんだよ」

ロイ「……?ああ!!!はんごなはんごっ!!!」←意味分かってないからとりあえず反語と言っておくロイ

 

今のロケットに足りない原因を考える。ペラペラ本をめくっていたクエンティンが、

クエンティン「燃料だ!」

「どうすればいいんだよ?」

ロイ「水?」

オデル「爆発しちゃうよ〜」

ロイ「ガソリン?」

オデル「知ってる?ロケットは水で飛ぶんだよ!」

ロイ「そういうお前は何だかわかるのかよ!」

オデル「灯油〜」

ロイ「お前もじゃねぇかよ!」

オデルを叩くロイ。

ああだこうだと3人で揉めあっていると…

ホーマー「アルコールだよ!100%のアルコール!その本に書いてあるんだ」

またもや本をめくってそのページを発見。

オデル「でもアルコール100%なんてどこにあるんだよ!?」

ロイ「とっておきの場所がある!今夜連れてってやるぜ」

 

辞める決意をするもなんだかんだずっと一緒にいるホーマーを見て、

ロイ「やるのかやらないかどっちなんだよ!」

ホーマー「…パパには内緒だぞ!」

 

その夜ロケットボーイズはロイに連れられて酒場に来た。大学生だと偽りムーンシャインを購入する4人。ことごとく酔っ払う酔っ払いボーイズ。

 

♪『ムーンシャイン』

ロイ「ムーンシャイン 親に逆らうためさ〜」

クエンティン「ムーンシャイン 科学のため試してみよう〜」

店員「いつ死ぬかわからないなら~~~愛を目指そう~~~~」

 

ここで手に入れたアルコールを燃料に入れてロケットを打ち上げる。酔っぱらっているため大きな声は頭に響くため小さな声でカウントダウン。見事にそれは飛んだ。少しずつ前進している。

 

しかしムーンシャインの余韻で酔っ払っていた4人の前にロイの義理の父親・アールが現れる。

アール「お前、酔ってんな…」

ロイ「酔ってるのはお前の方だろ!」

と馬乗りになってビンタされるロイ。

いつも目元にあるロイの痣はエミリーに殴られているからだと思っていたロケットボーイズはその光景がショックすぎて言葉が出なかった。そのリアルな光景を見て傷ついている。

そこをジョンが見てロイの父親を叱る。

ジョン「父親として最低だよ!お前なんぞ父親の足元にも及ばねぇよ!」

ロイに何か声をかけようとするクエンティンだが…

オデル「…やめろ、クエンティン。俺らが突っ込むところじゃない…」

 

そしてジョンはホーマーが持っていた瓶を見て、

ジョン「…ママはなんて言うだろうな」

とホーマーに失望する。でも諦めないホーマー。

ホーマー「ママはこういうさ。ロケットを打ち上げなさい、って」

 

そんな中、人員不足が原因の火事が炭鉱で発生してしまう。

「数機構に問題があるって電話したんだ!そしたら…中に飛び込んで行って...!」

血塗れになった2人が担架で運ばれてくる。

ケン「うお…上がってくるぞ!」

エルシー「ジョンっ…!」

「かなりひどくやられてる…!!!」

ケン「早く…運ぶんだ!」

「ジョン!」「ジョン!」

エルシー「私を置いて…」

それに追い打ちをかけるようにジョンより真っ赤に染まった人も運ばれてきた。

何も言葉が出ないホーマーら。

クエンティン「誰...?」

オデル「バイコフスキーさん…だと思う…」

崩れ落ちるホーマー。彼を炭鉱にやってしまったことが原因だと自分を責める。

 

バイコフスキーさんの葬式。喪服で参列する人々。このシーンは物語の中でも特に暗かった。

牧師「彼は17年間ここで働き続けて…。誰もこの町の悪口を言わなかった。なぜなら彼がこの町に心血を注いできたことをみんな知っていたからです。」

と彼の炭鉱での経緯を語る。

牧師「彼が作ったこの曲を歌ったら彼はきっと喜ぶでしょう」

 

♪空に消える星〜 岸に戻る船〜 土に還るのは我ら〜我ら〜

 

バイコフスキーの妻・メアリーは、彼の親戚がいるポーランドに行く決意をする。その人たちに会ったことはないがそれでも女の彼女にとって残された道は限られていた。

エルシー「うちはポーランドに行くお金なんてないけど…ポーランドは素敵なところね」

 

ヒッカム家でも、誰かが働かないと家を貸してもらえないということでホーマーが炭鉱に行くことになる。ロケット作りも学校も辞めることになったホーマー。喪服を取ってみると彼は炭鉱の深緑の服を着ていた。

ロイ「ホーマー…どういうことだよ…!?」

ホーマー「誰かが働いていないと会社が家にいさせてくれないんだ」

オデル「学校はどうするの?」

ホーマー「行かない」

ロイ「ロケットは!?」

クエンティン「終わり!?これっきり!?」

ホーマー「僕がいなくてもやれるよ…」

ロイ「お前がいなくなったら俺らただの3バカトリオじゃねぇかよ!」

ホーマー「じゃぁな3バカ…」

鐘が鳴る。炭鉱が閉まる。彼は地下に潜ってしまった。

 

♪『抜け出せない』

ロイ「夢は届かない10月の空〜…」

この曲で残された3人の絶望感がよく表れている。

 

ヒッカム家。重症を負ったジョンはベッドで横になっていた。

ジョン「エルシー、電話をここに持ってきてくれ」

エルシー「それならもう移動させましたよ」

ジョン「?どこにだ??」

エルシー「裏庭にね」

エルシー「あの電話に出なきゃ良かったのよ」

ジョン「俺が行かなかったらもっと死人が出てた」

エルシー「私は一度に一人の男しか面倒見れないのよ」

枕をはたくエルシー。

エルシー「もうだいぶ経つのにまだ灰が出てくるわ」

ジョン「マートルビーチでも砂の問題で同じことを言ってるさ」

するとホーマーが炭鉱から帰宅してくる。

ホーマー「患者さんの様態はどう?」

ジョン「…ママに聞け」

エルシー「頑固で炭鉱のことばかりしか考えてない」

ホーマー「いつも通りなんだね」

安心はしているも、現実に打ちひしがれたホーマーは切なかった。

 

バイコフスキーさんが亡くなったことに対し、自分がロケット作りに巻き込んだせいだとずっと責任を感じていたホーマー。

ジョン「俺が炭鉱に行かせたからかもしれない。工場に雇われたからかもしれない。メアリーと結構したからかもしれない。ここに来たからかもしれない。俺たちはみんな繋がってるんだ。自分を責めるな」

 

ジョン「どうだ、炭鉱はお前が思っていた通りひどい場所だったか?」

ホーマー「いや、そうじゃなかったよ…」

ジョン「お前を誇りに思うよ」

ジョンがここで初めてホーマーを認めた。

ホーマー「洗ってくるよ…」

残念そうにそう呟いてホーマーはその場を去る。

エルシー「あなたが怪我してなかったらぶっ飛ばして首絞めてたしてたところよっ!!!なんで炭鉱のことじゃなきゃダメなの!?」

炭鉱に行くことで若かった頃よりもジョンのことを遠く感じていたエルシーはこの出来事でまだ昔の彼が今もいることを知り涙する。ジョンは「今も昔も変わらない」と否定していたが、エルシーの涙に感涙し自身が寝たきりであるベッドでエミリーに寄り添う。

 

息苦しくなったホーマーは、最近何日も学校を休んでいるというライリー先生のもとへ。

ホーマー「色んな人が僕の生き方を決めてくるんです…!何かないですか、アドバイスとか、格言とか…!

ライリー「ごめんね、今日はあまり力になれないかも」

ホーマー「インフルエンザなのは知っています。それは本当にお気の毒ですが…!」

ライリー「インフルエンザ…?」

ホーマー「でも力を貸してほしいんです…!」

ライリー「ちょっと待って、誰から聞いたの?」

ホーマー「仲間です」

ライリー「…ホーマー…。それは違うわ…。私はガンなの」

ホーマー「僕はどうすればいいんですか…!あなたがいなかったら…!」

ライリー「世界があなた中心で動いてるわけではないわ」

ライリー先生が彼にまたたくさんの言葉を伝える。それらは今のホーマーの心に大きく響いた。

ホーマー「…先生は嘘つきだ。詩人じゃないですか」

ここで歌に乗せて彼女が若き日に詩人を夢見ていたことが明かされる。いいところまではいったものの、「女性にしては上出来ね」などと言われるだけでそれ以上先には進めず彼女はこの夢を諦めることにしたのだった。この経験があったからこそ彼女はホーマーに夢を叶えてほしいと言い続けてきたのかもしれない。

 

ホーマー「悔いの残らない~人生のために~」

2人「大切な何か~何か~」

先生「掴もう~」

 

一方ストライキを起こす寸前の炭鉱。皆会社に不満を募らせていた。炭鉱夫からすればジョンは会社そのものなのだ。責任が問われるジョン。しかしそれでも会社は人員削減を行う。炭鉱夫らはストライキを起こすことにしたのだった。

命かけて家族のため働く~~誇り高く~~ストライキへと進む~~

 

 

約2ヶ月炭鉱に潜り続けていたホーマーと久しぶりに再会したロイ達たち。いつも通りロイがホーマーにタックルして馬乗りになったかと思いきや今日はホーマーも反撃して彼がロイに跨った。

ロイ「降りろよ!」

ホーマー「それはエミリー・スーに言われたのか?」

笑いながら降りるロイ。倒れたロイを右の二の腕で引き上げる。

「今日はパンダ目じゃないんだな」

ロイ「ホーマーに頼む日が来るかもな!でもタイミング見計らってるだけな気もする……」

 

そんなホーマーに自分の気持ちを伝えるために彼を呼び出すドロシー。いつも通りロイやオデルが「ホーマーは俺らのものじゃねぇからな!」と気遣いながら囃し立てるも、

クエンティン「…そうだね、今はもう僕らのじゃないよ…」

ホーマーがロケット作りに戻ってきてくれないことを引きずっている。

 

ホーマー「ハーイ」

ドロシー「ハーイ…」

最初はロケット作りに否定的だったドロシーだったが、ホーマーがロケットから離れることが考えが変わる。

ドロシー「最初、作用反作用とか言い始めたときはついていけないかと思った」

ホーマー「でも今はそうじゃないだろ?」

ドロシー「違うの...。あなたは普通ではいられないの」

 

ドロシー「でも本当はロケットが恋しいんでしょ?」

ホーマー「……ああ、とても…!」

ドロシー「行きなよ」

ホーマー「でもっ…!」

ドロシー「仲間は追いかけるべきよ」

ホーマーには夢を追いかけていてほしいと願うドロシー。彼女は彼の夢を応援するようになった。ドロシーは彼の頬についていた灰をそっとはらって、

ドロシー「ほら、隠れているものは美しい…」

 

そして当のロケットボーイズ3人はサイエンスフェアの地方大会、州大会、全国大会を勝ち進み、最終選考に来ていた。解除の規模にびっくりしながら持ち物を確認している一行。

クエンティン「設計図は?」

オデル「おいロイ・リーどこだよ?」

ロイ「俺じゃねぇよ」

クエンティン「オデル、お尻のポケットに入ってるのは何?」

オデル「あ!あった!」

ここでも馬鹿炸裂。

 

しかしここで問題が発生。なんと、段ボールに入ってあったはずのロケットが消なくなっていたのだ。

ロイ「…...ない!!!」

クエンティン「なんだって!?」

ロイ「ロケットがないんだよ..!!!」

オデル「ダメだよ!ダメだダメだダメだダメだ…!どうしたんだ!?」

ロイ「箱の中にあったのに!」

クエンティン「何か心当たりは!?」

ロイ「アールだ!あいつに中身見せろって言われたからダンボール渡したんだよ…!」

クエンティン「ホーマーならどうする!?」

ロイ「ホーマーに電話する!」

オデル「ホーマーはホーマーに電話できないよ!」

ロイ「バカ!!俺らがホーマーに電話するんだよ!!!」

それだ!と指さすオデル。

どう誤魔化すか考える3人。しかし審査員が来てしまった。

 

その話を聞いたホーマー。

ホーマー「工場を使わせてほしい。1時間だけでいいんだ」

ジョン「スト中だ。ピケラインは越えられん…」

ホーマー「ロケットがなかったらあいつらおしまいなんだ。ロイ・リーとオデルとクエンティンがこの町から出て行けるチャンスなのに…!」

ジョン「この町がお前たちに不釣り合いで父親たちのように炭鉱夫になりたくないっていうんらさっさと出てけ!!!俺もせいせいする!」

言い返そうとするも詰まってしまったホーマー。家を出ていく。

 

ホーマー「なんでパパは僕を認めてくれないの?炭鉱のことじゃなきゃダメなの?僕は独学でロケットの作り方を学んだのに…!みんなは期待してくれてるのに!パパは一回も来てくれない…!」

 

会話を聞いていたエミリーがやってくる。

エルシー「ねぇあなた...貸してあげてちょうだい...。私達の息子のことよ…!!!」

炭鉱夫のトップである責任と父親の親心の狭間で揺れるジョン。

 

エルシー「♪変わってしまった~~

ジョン「♪俺は~

エルシー「♪私の愛した~

ジョン「♪逃げてない~

エルシー「♪男は消えた~

ジョン「♪考えてる~

エルシー「♪時が来たの~この先私~一人で生きるわ~夜が空けたら…!

 

ずっと憧れていたマートルビーチに移住することを考えたエルシー。

ジョン「家を買うってうちにはそんな余裕ないだろ!」

エルシー「私達のじゃない!私の家よ!」

エルシー「これを見て」

エプロンから貯金通帳を渡すエミリー。そこには彼女がやりくりして少しずつ貯めてきた額が記されていた。余裕があるときには株にも投資。なんとしてでもホーマーを大学に行かせたいという強い思いを伝える。

エルシー「ホーマーが大学に進学したらここを出ていきます!」

ジョン「そうやって俺を捨てるのか!」

 

エルシー「ジョン、人の意見なんて……くそくらえよっ!!!」

 

このやりとりを見ていたホーマー。

ジョン「お前見てたのか…」

ホーマー「見てたよ」

ひるまずにそう答えるホーマー。彼はロケット作りを通じてたくましくなった。

 

ホーマー「僕は僕だ、それは譲れない。勝つことだけが目的じゃない。負けることも大事」

 

知りたい~世界を~自分で道切り拓きたい~準備された答えならもう~

気づいた~未来は〜思ってたより近くにあると〜

僕を呼ぶ声が強くなる〜行かなきゃ〜今すぐ〜

可能性無限にあるから~何があっても前を向くさ~だからもう~行かせて~

 

ジョンはこの歌を聞いている時に後ろを向いて涙ぐんでいた。

 

クエンティン「実は僕たち大事なものがないんですよ...」

審査員「???なんですか?」

オデル「ロケットでぇすっ」←ふざけた調子で

クエンティン「でもっ!!設計図はちゃんとここにありますっ…!」

審査員「出場条件を満たしていないため失格ですね」

バサッと切り捨てられてしまう。

予想もしなかった失格になる危機に陥ったロケットボーイズ。今から戻って作るのも間に合わないと難航していた彼らだったが、そこへホーマーが現れた。彼の手にはロケットが握られていたのだ。

ロイ「お前どうやって!!」

ホーマーに飛びつく3人。

ホーマー「パパがストライキやめさせて工場を開けてくれたんだ!」

 

応募用紙にホーマーの名前が書いてないことを指摘されるが、校長が再入学届けの受け入れなどをスムーズに行ってくれたためホーマーをリーダーとして無事サイエンスフェアに参加することができた。

 

そして見事彼らは優勝した。こうしてかつて届かなかった夢が、10月の空に届いた。

 

そして優勝したこのロケット・オーク31号を打ち上げる。

ホーマー「今日ここに観に来れなかった人のためにこのロケットを打ち上げます。バイコフスキー。あなたがいないとロケットは完成しなかった。ミス・ライリー先生。たくさんのことを教えてくれた.。そしてママとパパ...」

しかしこの場にジョンは来ていたのだ。いつもはー絶対に来ない彼が。

エルシー「ヒッカム家の男がロケットを飛ばすなんていつぶりのことかしらね」

ヒッカム家の革命に感動している母。

 

ホーマー「誰かがボタンを押さないとこのロケットは飛ばないんだ。パパ押してよ」

ジョン「いや私は見に来ただけだ...」

最初は却下するも彼はこのボタンを押した。

 

♪『星を見上げて Look to the stars』

見上げれば〜未来はすぐそこに〜

さあ諦めないで〜明日を目指そう〜

星掴むんだ~~~~

 

 

この最後のロケット(31号)が効果音と共に打ちあがったところで舞台は暗転し挨拶に入る。

 

 

〜カーテンコール〜

 

10月16日ソワレ

1回目(挨拶)そのままはける

2回目 手をいつも通りパーにしてはける

3回目 手を振ってはける

 

10月24日マチネ(東京千秋楽)

1回目 (挨拶)そのままはける

2回目 甲斐挨拶

3回目 「誠にありがとうございました!」

4回目 「誠に誠にありがとうございました!!」

 

甲斐翔真 挨拶

「緊急事態宣言が出て、一人でも出たら続けられませんでした。千秋楽みたいになってますけども!大阪もあるので!大阪も!今日は本当にありがとうございました」

 

バックにはオーケストラ。

顕嵐は毎回下手から出てきて下手に帰っていく。

翔真くんが毎度数秒残ってバイバイして終わる。

 

〜開演前〜

・開演音は炭鉱の鐘

・開演時は幕は降りていなかったが、2幕は下がってからのスタート

 

〜終演後〜

・劇場内から拍手が聞こえる

・観客が劇場を出た後もオーケストラ演奏→終わったあとコクーン外から拍手

・札を掛けたお偉いさんが案内されていた

 

〜舞台セット〜

・後ろにはコールウッドと炭鉱の境目である壁があり、時々その後ろにオーケストラ隊がいたりもする

・オーケストラ隊壁の向こうにいないときは下手で演奏?

・背景はスクリーンで、炭鉱だったり夜空だったりと変えられる

・天井には斜め掛けになった十字架のようなものが設置されていて、シーンごとにその棒が1本になったり2本になったりする

(イメージ↓)→サイエンスフェアのときは赤や青、黄色に文字が入った照明を照らしたり

 

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1回目の席は前列の下手一番端で見えるかなぁと少々心配だったが、顕嵐が下手多かったのと特にエミリーと絡みシーンは下手の端っこが多かったので良かった。キスしてたときがまさかのゼロズレ。オペラグラスで見てたので口元までしっかり見えた。次回はもっと全体観を見ることにしよう。

 

酔っ払うシーンで手拍子するのは一体感が生まれて面白かった。この作品は基本的に重めで、ホーマー達の明るさと炭鉱の暗さが対比されているのだがここは数少ない愉快なシーンで楽しかった。みんなノリノリ。顕嵐ここで他の人よりソロ多くもらっていてアクロバティックな動きも結構してた。

 

ストーリーからは当時の社会情勢が伺える。エネルギー革命後で炭鉱が意味をなさなくなり、機会が人間の仕事を担うようになった。スプートニク打ち上げ当時の人の衝撃や児童虐待、他にも高校生特有の無垢さや家族愛などが含まれている。

ー炭鉱の閉鎖。第二次エネルギー革命が19世紀に起こり、世界は燃料の主役を石炭から石油に変換することになる。もちろんアメリカも例外ではない。その流れで炭鉱は以前ほど重要視されなくなり、また常に危険と隣り合わせであることからも閉鎖が相次ぐようになる。中には何十年と火災が続いている場所もあったりするそうで、そこで働く炭鉱夫の姿もやその妻の苦労がこの作品にはよく描写されている。

ー家族愛。ホーマーはジョンのことを恐れてはいるが愛してもいる。父親に嫌われないように自分の気持ちを素直にぶつけることができない内気な一面もあったが、仲間が窮地に立たされることで自分の意思をはっきり伝えるようになる。それがよく表れていたのが♪気付いた〜未来は〜 の曲。最初は『行かなきゃ』だったのが最後には『行かせて』になっている。人は何か大切なものや守りたいものがあれば変われるのだ。

ー高校生。それは子どもよりも大人に近い年齢で、将来が現実味を帯び始めている。昔はなりたい夢や目標があったのに現実という壁に当たり諦めざるを得なかったり自分の将来に向き合わなくてはいけない、そんな年頃。言い換えれば学生としてまだ無垢でいられる最後の時間。差し迫る未来。ホーマーはずっとこの町を抜け出せる方法を探していたところにロケットと出会い人生が変わる。父親に空は理想、炭鉱は現実だと突きつけられるも、そうやっていっぱい悩んで選択するのもこの年齢だからこそである。

 

また、ホーマーは社会への自立も求められている。彼はライリー先生に自分の生き方について相談しようとするが先生はその時「世界があなた中心で動いてるわけではない」と彼に自立を暗喩している。高校生という年齢だからこその対応である。人に教えてもらってばかりではいけない、自分で考え行動することも人生なのだ。息詰まったホーマーに対し一見それは冷たいようにも感じるが。それはライリー先生の愛であり教え。彼女はホーマーの目に宿った光を見出し最後の最後まで彼に大切なことを説いていた。ラストのシーンでホーマーが言っていた通り、彼女がいなければまずロケットに夢見ることもなかったのだ。漠然とコールウッドを出たいという彼の思いはロケットと出会うことで明確になる。

 

しかしライリー先生は切なさをも抱えていた。学力よりも力が求められる社会、このコールウッドで学歴は重視されていなかった。どうせみんな炭鉱に出ていくから。将来的に戦争に行って命を落とす子がいるであろう子ども達の前で戦争の素晴らしさを教え疑問を抱いていた戦争渦の日本教師と近いのかな。しかしそういう情勢の中でも何か勉強以外のことを彼らに残してあげられないだろうかと思いスプートニクや格言のはなしをするなど彼女は愛に溢れた女性だった。

 

ドロシーは大切なものは近くにあるとホーマーに言った。その通り彼を支えてくれる素敵なガールフレンドがこんなすぐそばにいるのにと思いながら観劇していたが、それはホーマーの熱意を感じたドロシーの柔軟さでもあると思う。

 

愛情の裏返しでいつもエミリーにビンタされるもそれさえ嬉しそうなロイ。しょっちゅう痴話喧嘩してるけど誰よりも彼女のことを大切に思っている。でも彼の中には父親に暴力を振るわれているという暗さも持ち合わせていて、2幕で虐待されているシーンを実際に見ると急に目周りの痣が痛々しく見えるようになる(ちなみにその痣は1幕では左目元だったのが2幕では右目元になっていた)。友達とは調子こいて馬乗りになるロイが、図体の大きい父親に馬乗りされているのは胸が締め付けられた。高校生同士が馬乗りになっているのとはわけが違うのだ。家庭内ではそういう複雑な事情を抱えているにも関わらず、それを隠すために外で明るく振る舞う彼はずっと苦しかったんだろうな(ロイの複雑な事情が私の性癖に刺さる)。

 

オデルはなんだかんだ良い奴。お調子者で盛り上げ役いつもマイペースだけど、人一倍穏やかで(声も優しい)ロイが暴力を振るわれているのを見た後もクエンティンにそっとしておくよう言ったりロイと一緒にドロシーの恋をサポートしていたり。ロイとオデルはレディーファーストというか、女性のことをガールフレンドに限らずとても大切にしている。

 

いじめられっ子で友達がいないこともあって最初はかなりKYめ、素直すぎて時には「ん?」となる場面もあるクエンティンだったが、すごい真っ直ぐで仲間思い。父親が出てきた後本気で心配してロイに何か声をかけてあげようとする優しさや、物事に一生懸命取り組む姿勢はロケットボーイズに必要不可欠だったと思う。

 

「10月の空に夢は届かなかった」

この言葉はたくさんの人に沁みたのではないだろうか。この一言に彼らの過程が詰め込まれている。夢を見ることは素敵なことだがみんながみんなそれを叶えられるわけではない。その現実をホーマー達も突きつけられるが、それでも諦めずにロケット作りに打ち込んだ彼らは本当にすごい。少なくともホーマーはロケットが空を通じて世界の繋がりを認識し、そこに夢見て試行錯誤を重ねてきた。物語内では4人で手を重ねる場面がよくがあるのだが、ここからも彼らの決意を伺える。

 

そういえば公式さんのツイートで失敗も含めて計何本のロケットが打ち上げられたかという質問が投げかけられていたが、私が覚えている限り実際に打ち上げられたのは1、2,3,4、16、17、18の計7本、一番最後は実際に打ち上げられず観劇者の想像に任せられておりそれも含めたら計8本かな。ロケットにホーマーが着火するとき毎回一瞬だけ火花が散っていたのだがあれは本物のマッチ…?

 

ゲネの動画より「♪ロケット作る〜」の“く”の発音がしっかりしていたり、エルシーの「くそくらえよ!」が流れ的にも迫力があってびっくり。炭鉱夫の歌がドスがきいてるかと思いきやムーンシャインのセンターがおじさんの高音が高かったり忙しない。

 

物語の内容はとても感動的だった。YouTubeのダイジェストを見た時点で既に危うかったが、優勝するまでの過程を生で見ることでそこに辿り着くまでの葛藤を知り涙せずにはいられなかった。

 

・ホーマーが学校やロケット作りを辞めて炭鉱に行くシーン

・バイコフスキーさんの死に対しジョンが「自分を責めるな」とホーマーに言うシーン

・ホーマーが♪気付いた〜未来は〜 と歌うシーン(ジョンも涙ぐむ)

・最後優勝したロケットを打ち上げるシーン

 

特に感動した箇所。

最後は無事に打ち上げることができて良かったという安堵で自然と泣いていた。優勝が発表された後打ち上げるロケットは実際には打ち上げられてないが、ここは私たちの想像に任せられているのだろう。私には高く真っ直ぐ上がったロケットが見えた。

 

なんとなく予想がつく結末だけれど、あれは絶対生で見るべき。言葉だけでは伝えきれない。

2回観に行くことにしといて良かったなと改めて思う。またロケットボーイズに、コールウッドに会えるんだ!と思ったらワクワクする。こんな衝動に駆られたのなんて久しぶり。

 

 

YouTubeのゲネの動画で予習してから観劇したので作品をより楽しめた。劇中歌がどれも素敵。日を重ねるごとに歌が体に染みているのだ。同じ曲が使い回されていたり。個人的に好きなのは、

 

♪『抜け出したい』

炭鉱夫の次に歌われる明るいOP曲。最初はホーマーロイオデルの3人が歌っているのが、日常の会話を通していろんな人たちに歌い継がれていく演出が面白い。基本的には明るいシーンで使用されることが多いが、ホーマーがいなくなった際にも使われていた。

 

♪『星を見上げれば Look to the stars』

この作品のテーマ曲。翔真くんの真っ直ぐな歌声がとても生かされる曲だなぁと思った。最後ロケットを打ち上げる際にみんなで1オクターブ上げて歌っているのがより涙を誘う。

 

♪気付いた〜未来は〜思ってたより近くにある〜

先述した通り1番は“行かなきゃ”だったのが“行かせて”になることでホーマーの気持ちの変化が表れている。

この歌詞を初めて聞いたとき、未来が思ってたより近くにあるという現実を見なければいけなかった。私達は10年もしないうちに大人になって社会に出ていく。今まで目を逸らしてきたこの現実からそろそろ本気で自分と向き合わなければいけない。これに気付いてしまったことは残酷でもあるけれどいつかは見なくちゃいけない現実でもある。

 

特にカテコの演奏ではこの作品の全てが凝縮されてる。ダイジェストのように色んな曲が流れそれとともに出演者さんが登場してくるのだが、それを観ただけでも色々思い出すことができる。

 

1回目の観劇は先入観を入れたくなかったので今回の日本版のゲネの映像のみしか見なかったのだが、2回目の前には原作の映画も海外公演も見ることにした。映画は演出やカット割りなど映像作品ならではの良さで感動を呼び起こし、海外版のミュージカルは楽曲も同じだけあって見やすく(英語勉強してるのも大きかったかも)、今回の日本公演のものと照らし合わせてみるのも良い。

 

開幕前からインライやスペースが頻繁に行われておりこの作品の期待値をとても感じていたのだが、足を運んでその理由がよくわかった。この作品は世界に希望を与えることができる。著作権の問題上円盤化は難しいが配信も決まったのでぜひ観てほしい。海外作品だからこその曲や構成が新鮮だった。かなり俳優女優さんも見学に来ていたしね。スペース内でおっしゃっていたように終演後の空が高いというのは本当で、雲こそはかかっていたもののその空は果てしなくどこまでも高かった。空がこの世界を繋げている。時にそこは戦地にもなるが時にそれは平和の象徴にもなる。空が永遠に消えることはない。

 

総括

同じ高校生、17歳として(話の中でホーマーは卒業まで1年半しかないと言っていたためこの年齢が推測される)、ライリー先生やジョンが言っていることはとても染みた。大学受験が日に日に近付き自分の将来を考えねばならなかったり、絶対的な存在と認知している親に逆らうことができなかったりするのが今の自分に重なった。自分の信念や大事なものを否定されればもちろん怒りが込み上げてくるが、それに言い返せないのは私自身の弱さである。しかしそんな中でもホーマーは最終的に自分の精神に従う。彼はしっかり自分と向き合ったのだ。途中様々な出来事が起きるが、それでも諦めずに夢を追いかける姿は眩しかった。諦めず夢を追いかけることも今のうちにしかできない。

私もホーマーのように変わりたい。強くなりたい。今日はホーマー含むロケットボーイズ、コールウッドの人達に背中を押してもらえたような気がした。そして自分の未来が白くあることにも感謝せねばならない。ホーマーらのように将来が定められているわけでもなく、自分の手で変えることができることに。この与えられた奇跡を無視して生きるのは勿体無いと思った。自分のやりたいことをしよう。心からそう思えた。いつでも私はこの記憶を呼び起こすことができる。円盤化がなくともこの10月に見た奇跡の物語をこの作品を忘れることはない。

 

 

出演者さんの印象を。

 

甲斐翔真くん。174の顕嵐でさえも小柄に見える程の驚異の身長185cm。がっしりした男性らしい体型だからこその存在感。1幕のどこかの歌の最後に(確かロケット打ち上げ成功した後の明るいナンバーだった)ホーマーが一人残ってこぶし高く挙げてキメるところがあったんだけど、そこがめちゃくちゃかっこよかった。初っ端から汗かいてたのも可愛い。サッカーで得た周りを見る力が関係者各所に評価されている。でもお顔は可愛らしく、実際に見てみると大昇(ジャニーズJr.)に似てるなぁと思った(横顔や色の白さや掘りの感じが)。テラ(寺西拓人)味もある。スペースでスタッフさんが言っていた通りとても綺麗な目をしているね。地声が特別綺麗ということではないと思うが、ピッチがよく当たり、マインドで訴えかける歌は観劇者の心を揺さぶる。彼の人間性そのものが表れている。ホーマーに似て実際の翔真くんも温厚な方なんだろうな。ネットを通して見るよりも温もりを感じた。パパママ呼びが可愛い。

 

顕嵐。まず、この作品への出演が発表された時点で4年ぶりの彼のミュージカルということにワクワクした。愉快なトンボから急に重い役になったけれども魔女宅のときよりずっと上手くなってる。また、彼の2.5以外の舞台出演が前世の何者以来だそうで。言われてみればここ数年はヒプステにFFBEだったもんなぁ。もちろん2.5を演じる顕嵐も好きだけど、仮面を被りすぎていない顕嵐も好き。ずっと表情が微細で、自分の幕でないときもロイ・リーを演じきっていた。なゆちゃんをお姫様抱っこしていたりエミリーを抱っこしながらぐるぐるしてたり(ここ性癖に刺さりまくり)、反対にケンカのシーンでは塁斗さんにスーパーマンされてたり(前世の記憶よりこう呼ぶことにするが、要するに胴体抱えられてぐるぐるされてた)楽しそうだった。調子乗ってふざけているのも新たな面を見れたような気がする。ムーンシャイン時の酔っ払ったときの転び方もちゃんと腰から落ちてて良かったよ!顕嵐も少し汗かいてたな。また次の作品が楽しみだな。

 

伊澤巧麻くん。最初はあまりこれと言った印象がなかったが、観劇してみると私が好きな顔してる(中毒性を感じた)。オデルの役柄もあって穏やかなイメージ。高めの明るい声が好き。舞台上ではかなりひょうきんな声を出しているので、どうか喉を痛めませんように。

 

福崎那由他くん。眼鏡のいじめられっ子役を見事に演じていましたね!演技が繊細。なゆちゃんの上ハモがめちゃくちゃ好き。歳がそこまで変わらないことに驚き(もっと年上かと思ってた)。多分地元も近い。Wikiを見てみたら翔ちゃんのドラマや死役所にも出ていたようで過去にも彼を見たことがあったそうです私。ドラドン桜の細田佳央太くんとも仲がよろしいようで本当に色々繋がってるんだなぁ。他にも私が好きな原作物の作品に結構出演されてらっしゃるようなので今度見てみようかな。

 

中村麗乃ちゃん。失礼ながら女性アイドルが得意ではないのですが、綺麗な方だった。全然受け止められる。東京千秋楽の方では結構声震えてたけどそれほどこの作品に対する気持ちが強いんだなぁって思った。同行者に乃木坂のオタクを連れて行ったのですが、彼曰く「最近すごい垢抜けた」と。うんうんよくわかる。西洋風の衣装がよく似合ってた。身長高い(安井くんより:彼は166)。単純にホーマードロシーカップル大きいですな…。翔真くんとの身長差が18cm。周りにこんなカップルなかなかいないよ。というかこのカンパニーみんな大きいですよね。巧麻くんも181あるし炭鉱夫の皆さんもがっしりしてるし圧がある。

 

畠中さんの印象がとても良かった。ハマっているというか、ケンがこの作品に深みを出している。

 

 

ref.東京千秋楽での感想・新たに思ったこと


東京千秋楽とあってムーンシャインのときはすぐ手を叩いたり、笑う場面が早かったりと、観客さんの方にも慣れが見えた。

 

アドリブだったり少し変更されていた箇所もあって全く飽きなかった。エルシーがホーマーに本気でデコピンしてたりその痛みで翔真くん苦笑してたり。『言われた通りにやりなさい』で翔真くん途中校長先生にツノはやしてニヤニヤしてたり。

 

サイエンス最終選考でロケットが紛失した際のオデルの誤魔化し方に対し男性の審査員の返し↓

 

16日夜 

オデル「ロケットぉぉぉ」

審査員君「君、誤魔化すとこ間違ってるぞ」

 

24日昼 

オデル「ロケットでぇっすっ!!」←膝を軽く曲げ人差し・中指をくっつけぶりっ子してる

審査員「そのウザさ私は好きだぞ」←オデルのぶりっ子真似してる

 

アドリブに限らず家の柵を壊して母に怒られた際に必死に抵抗してるところのホーマー超可愛い。男の子のリアルだよね。

 

2回目で新たに気付いたこと。

①ジョンがホーマーに「誇りに思う」と言っていた意味を理解

 

ホーマーが「そうじゃなかったよ…」と答えたからその解答に満足したというのは理解できたが、話の流れでホーマーは自分の気持ちを殺してそう答え、その偽った解答に満足した父親。ホーマーの気持ちを考えると辛いし寂しい。でも今の自分と重なるのでよくわかる。なんだかんだ両親には“良い子”の自分を演じようと一生懸命なのだ。

 

②ジョンにロケットへの思いを伝える

 

炭鉱夫にも妻にも裏切られ仕事・家庭共に孤立してしまったジョン。自分のこれまでの言動・行動に絶望を覚えた彼に、ホーマーは父に教わったことを今度は返すようにして伝える。父に似て不器用なところ、炭鉱で採れた材料がロケット作りに“繋がって”いること…。似ているからこそ彼らにしかわからない思い、親子の見えないけれども強い絆など色々な出来事が交差し合い、ジョンはホーマーのその心遣い、そして自分の意思を言葉にするなどの息子の成長に感化される。

 

そして2回目の観劇後は幸福感というか満足感というか心地良い余韻が残っていた。劇中歌も以前より予習してきたため、より楽しめたし明るい曲のメロディーがずっと身を包んでいる。未だ興奮が冷めない。

 

 

〜休憩〜

1幕前からオーケストラの演奏のもとBGMが流れてる。

休憩中オーケストラ隊少々音出し。

 

ツイッターを見てると日本国内だけではなく海外作品に携わっていた方からもコメントが来ていてこの作品がいかに愛されているかを感じた。ずっと受け継いでほしい作品だな。

 

 

 

 

ref.1 劇中歌

 

『炭鉱へ』

 

『抜け出したい』

 

ビッグクリーク・ミサイル・クラブ結成時

 

ref2. 海外作品に関与してきた関係者さんからのコメント